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ガザの戦争で思い出す2本の映画

「実存は本質に先立つ」とは、かのサルトルの言葉です。

私の理解では、本質とは哲学用語で、人が変えられないもの、例えば生まれた時代や出自、国、人種、など。その人の根本を作っているもの、と言ったらよいのでしょうか?

私は昭和という時代の日本に生まれたので、その枠にどうしても囚われ、影響を受けてきました。しかし人は、そんな変えられないものを乗り越えることができるとサルトルは考えました。

戦後、日本はアメリカの指導のもと、民主主義国家を作ろうとしてきました。その中でアメリカは模範であり憧れでした。少なくとも昭和の高度成長期あたりまでは。時代が進んでアメリカという国のメッキが剥がれ、良くも悪くもその本当の姿があらわになってきています。

子供の頃、私はハリウッド映画が好きでした。とくにチャールトン・ヘストン主演の「十戒」や「ベン・ハー」などの、いわゆるスペクタクル映画のファンで、今ならCGでやるところを全て実物のセットや何百、何千というエキストラを使って作られた迫力ある映像とストーリーは今観ても感動しますし、眼を見張るものがあると思います。まさにその時代のエンターテイメントであり、こんな凄い映画を作るアメリカという国に憧れていました。

預言者モーセを主人公にした「十戒」は、ユダヤ人たちの出エジプトを題材にした映画です。紅海が割れて海の中にできた道をユダヤ人たちが渡っていく場面はあまりにも有名です。海が本当に割れたかどうかは別として、ユダヤ人の出エジプトは史実として世界史で習いました。

「ベン・ハー」は、ユダヤの貴公子ベン・ハーが数奇な運命によって復讐を成し遂げ、最後に神の奇跡によって回心するという物語ですが、馬を使った迫力の戦車シーンはあまりにも有名で、確かアカデミー賞11?部門に輝いた作品です。

この2つの作品は、ユダヤ人に対するアメリカの人たちの強い愛着を示していたのだと最近気がつきました。

注ぎ込まれたものすごいエネルギーとお金。どちらもユダヤ人が主人公です。

ガザで続いている戦争の惨状を毎日ニュースで眼にするたびに、この2つの映画と、それを観て素直に感動していた無知な子供の頃の自分、そしてこの戦争を招いてしまった世界(当事国だけでなく、日本を含んだ他の国々のこと)について考えます。

アメリカの政治に大きな影響を与えていると言われるキリスト教福音派の人々。彼らは聖書中心主義をとり、パレスチナは神がもともとユダヤ人に与えた地であるとして現在のイスラエルを支持する立場をとっています。

人はみなそれぞれの本質である人種や国、時代を乗り越えることはできないのでしょうか?

「ベン・ハー」の中では憎しみを越えて、敵である相手を許すということがテーマのひとつでした。ガザの戦争が一刻も早く終わり、平和が来ることを心から願うばかりです。

*画像はhanasoraenさんの作品を使わせていただきました。




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