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純喫茶リリー

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「純喫茶リリーへようこそ。 懐かしくてちょっとビターな日常を綴ります
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#万引き

23. 咄嗟のウソ/純喫茶リリー

あのミミララの小物入れは手に入らなかったが、代わりにかわいい消しゴムを手にした律子。 リリーに戻ってからも、盗られたことに気づいたスーパーの人が 律子を追いかけてくるんじゃないかという不安に駆られて冷や冷やしていた。 でも、その日は誰もリリーに来なかったし、ママも何も気づいていない。 律子はほっとした。 「この消しゴム、どこに隠そう?」と考えながら、ママに見つかるのを恐れつつ、家のおもちゃ箱の中にそっとしまった。 あのおもちゃ箱なら、ママに探られることはない。 でも、本当

22. どうしても手に入れたいあのプレゼント /純喫茶リリー

こずえちゃんのお誕生日会に行った日から、律子は毎日のようにスーパーのファンシーショップに通った。 あの「ミミララ」の小物入れを見に行くためだ。 あれは600円もする。 律子にはとても手が出せない金額だった。 「なんで、こずえちゃんには600円もする可愛いものをあげたのに、私には買ってくれないの?」そう思うたびに、ママに対してムカムカしてきた。 ママに欲しいものをねだるたびに、 「こんなしょうもないもの、コーヒーを何杯売らなかんと思ってるの!」それがコーヒー何杯分の値段かをよ