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純喫茶リリー

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純喫茶リリーへようこそ。 ハートフルとは程遠い、ちょっぴりビターでダークなひねくれ律子のエッセイ。 懐かしいけどひとクセある日常を、毎話読み切りスタイルでお届けします。
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#小学校

クリスマス大作戦、空回りの大荷物 /純喫茶リリー#37

保育園でのクリスマス会は、先生たちがすべて準備してくれる楽しいイベントだった。 しかし、小学校のクリスマス会は自分たちで企画し、準備を進めることになった。 学級会の話し合いの中で 「家にあるものを持ち寄ってプレゼント交換をしよう!」 という案が出た。 律子はワクワクした。 「みんながびっくりするものを用意して、“すごい!”って言わせたい!」 そこで、自分の得意な工作で勝負しようと決めた。 日曜日、リリーの近くの貸本屋で工作の本を借り、そこにあった、牛乳パックで作る船と飛行

前のめり空回り/純喫茶リリー#27

ゆりこちゃんと出会う前の律子は、楽しそうなクラスメイトの輪から外れて、でも羨ましくて。どこか疎外感を抱いていた。 いつの間にか、そんなクラスメイトに敵対心を抱き、負けん気が強くなっていた。 周りに「すごい!」って言われたくて、授業も張り切って、 目立つことに一生懸命。 やたらと手をあげて、大きな声で先生に話しかけ、ついでに余計な一言まで加える。お調子者の目立ちたがり屋だ。 それもこれも、喫茶リリーで、いつも大人の話に首を突っ込んでいたからだろうか? 授業中でも私語が多く

初めての友達と放課後の自由の味 /純喫茶リリー#26

「清楚」という言葉をほしいままにしているゆりこちゃんが ある日の休み時間に、穏やかな笑顔で律子に話しかけてくれた。 とても可愛くて、長い髪が綺麗で優しい女の子。 律子には天使に見えた。 妬み嫉みでいっぱいの律子。 ふりふりしたスカートを履いている子は「ぶりっこ」だと思って心の中で毛嫌いしていたのに、ゆりこちゃんにはそんな感情は少しも湧かず、好感しか得られなかった。 ぶりっこではなく、生まれながらにしての清楚。 非の打ち所がない清楚な女の子。 ガサツでいつも男の子みたいな格好

だれも知らない、みんなは知ってる/純喫茶リリー#25

後から思えば、ママは引っ越しの挨拶周りをしたのだろうか。 律子の通う小学校には、登校班という仕組みがあった。 朝、近所の子どもたちが集まって一緒に学校へ向かうのだ。 しかし、律子は当然、近所の子どもたちと顔を合わせたことがない。 それに対して、彼らは幼い頃からずっと一緒で、年齢が違ってもみんな仲が良く、まるで兄弟のように育っている。その輪に突然放り込まれる律子。 入学式の翌日、初めて登校班に参加する朝、律子はママに連れられてその集まりへ行った。 「今日から一緒に行ってね、

突然の新しい家と新しい名前/純喫茶リリー#24

律子は小学校に上がるタイミングで、れいすけにいちゃんのいるアパートから引っ越すことになった。 新しい家はリリーから車で30分くらいのところにあるオンボロ一軒家だ。 玄関のドアはガタガタ音がするし、風が吹くと家全体がミシミシ揺れる。 でも居間にはお父さんの立派なオーディオセットが鎮座していた。 そして、律子にとって初めての「自分の部屋」ができた。 部屋には、ピンクの絨毯に学習机が用意されていた。 学習机にはミミララの可愛い椅子がついていた。 それが律子が一番気に入ったものだ。