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役立つユーザー調査のための考え方

お客様からアンケートについての相談が増えていて「アンケートで本当に欲しい情報が得られるのか?」と悩んでいたところに、同僚からタイムリーな記事があるとWACULさんの記事を共有してもらいました。

顧客調査について調べたこと・考えたこととのメモです。
結論から言うと、必ずしもインタビューが最適というわけでは無い。そもそも調査の目的とターゲットを明確にすることと、調査手法の特性を知ることが重要。という考えに至りました。

WACULさんの記事はこちら

役立つ調査結果が得られる条件
・形式は1対1インタビュー
・対象は自社の既存顧客
・モデレータが恣意的な回答を誘導していない
・他部署のメンバーや事業責任者にインタビューに同席してもらう
2023.02.01 WACUL「「とりあえずアンケート」ではなく「1対1インタビュー」を。ユーザ調査のベストプラクティス研究

誰のニーズを聞くのか?

WACULさんの記事では「対象は自社の既存顧客」とあります。
調査の「対象者」というのは重要だと感じています。

「対象は自社の既存客」の調査結果の中に、以下の文章がありました。

調査対象者の選定ミスの多くは「競合他社の既存顧客」
「そもそも調査対象が間違っていたことにより、調査結果が役に立たなかった」と回答した5人のうち、4人は「競合他社の既存顧客」に調査をおこなっていた。一方、役立つ調査結果を得られたケースの多くは「自社の既存顧客」を対象にしていた。
2023.02.01 WACUL「「とりあえずアンケート」ではなく「1対1インタビュー」を。ユーザ調査のベストプラクティス研究」

よく「競合他社の既存顧客」を調査をする動機で語られるのは、
「なぜ選ばれなかったのかを知りたい」ということ。
つまり、どうしたら選ばれたのかを知りたい、という動機ですね。
しかし、選んでくれなかったユーザーから「どうしたら選んでくれるのか」を集めても、そもそも自社のサービスや風土にマッチしていない情報の可能性が高いのです。

多くの人の「ほしい商品」「ほしい情報」を集めても、サービスや製品の質は漫然としてしてしまいます。
全ての人の正解を目指すと、可もなく不可もない、悪くはないけれどどこにも特化していない(誰の正解でもない)情報・商材になりがち。
自分達の強み・風土・キャラクターにマッチする人を集めて、マッチしない人は他のサービス・商品を選んでもらう方がお互いに幸せになれるはず。

調査の目的が「自社を選ばない顧客の特性の理解」であれば「競合他社の既存顧客

既存顧客にも層がある

さらに、既存顧客の中でもいくつかの層があるはずです。既存顧客の中でも、誰に調査をするのかを見極めることも大切だと感じています。

こんな例を聞いたことがあります。
スーパーのお惣菜についてアンケートをとったところ「健康志向のお弁当が欲しい」という声が最も高かった。実際に健康志向の野菜の多いお弁当をつくったところ、あまり購入はされずに「揚げ物」「カツ丼」の売上の方が高い。
実際、お惣菜を購入する層は健康志向というよりは「楽をしたい」「面倒な揚げ物を省略したい」などの理由だったのではないかと想像できます。
アンケートはスーパーの来店者全員にとっていたのかもしれないですね。

同じ「既存客」の中でも、商品ごとに顧客の傾向は変わることは大いにあります。

また、多くの場合、アンケートを取れる対象者(顧客や手持ちのリード)の中には層があると思います。

  • とても理想的な、良い関係が結べている既存客(ロイヤルカスタマー)

  • 一般的な受注内容だけれど、繰り返し使ってくれている既存客(リピーター)

  • 購入はしてくれているが、自社とはマッチしていないと感じる顧客

  • 頻度はそんなに高くないor一回しか利用したことのない顧客(新規顧客)

  • 検討はしてくれたけれど、他の企業(サービス・製品)を選んだ人(失注客)

  • まだ利用はしていないけれど、連絡が取れる間柄(見込客)

この全体を分類しないまま、調査をしようとしても評価軸がばらけてしまい、有効な情報が得られないのだと感じています。

分類したうえで、本来企業が目指したいのは「ロイヤルカスタマー」や「リピーター」を増やすこと。
たとえ顧客だったとしても、自社とマッチしない層(本当は品質で売りたいのに、買い叩かれてしまったり、安い時にしか買ってくれないなど)が増えていっても、お互いに幸せにはなれない。
そうなると、本来は「顧客ニーズを知る」=「ロイヤルカスタマー」「リピーター」になってくれる人のニーズを知る、ということになるはず。

どうやって聞くのか?定量調査と定性調査の違いを知っておく

「誰に聞くのか」が定まっていて、何に活かそうとしているのか、調査の目的が明確であり、定量調査が適していると判断できるのであればアンケートも有効に働きそうです。

「とりあえずアンケート」というように、目的が明確で無い状況であるならば、インタビューも手段として検討する必要がある、のだと思います。

インタビューで得られるものは非常に大きいですが、WACULさんの記事を読んで「アンケートよりもインタビューがいい!」と盲信してしまうのも危険ではないかなと、個人的には感じています。

「とりあえずアンケート」と、目的を明確にせずにアンケート調査を行った場合は、確かに有効な調査にならないことが多いでしょう。
アンケート調査は気軽にできるため、多くの企業が目的・対象者を上手に選定できないまま実施してしまい、「有効な調査にならなかった」という結果になったとも考えられます。

定量調査と定性調査を上手に使い分ける

少し古い記事ですが、こちらの2つの記事が、アンケートとインタビューそれぞれの考え方の参考になりました。

おそらくこのようなニーズがあるだろうと仮説が立てられ、それを検証する必要があるような「顕在レベルのユーザー理解」には、検証型のアプローチが適しています。つまり、数値的に明確に検証すべきものの場合には、定量調査を用いた検索型アプローチで調査を設計するとよいでしょう。
Web担当者Forum「定性調査と定量調査の違いとは? アンケートやインタビューの成果を最大化
調査したいことが、ユーザー自身もそのニーズを認識しておらず、発見する必要があるような「潜在レベルのユーザー理解」には、発見型のアプローチが適しています。つまり、豊かで深い質的データを集めて、調査チームが文脈的かつ意味解釈を行うことで、新たな発見やインサイトを得るべきものの場合には、定性調査を用いた発見型アプローチで調査を設計すると良いでしょう。
Web担当者Forum「定性調査と定量調査の違いとは? アンケートやインタビューの成果を最大化

調査を行う上で、そもそも調査をすることの目的を理解することが、調査手法を選ぶ上で重要になります。

私個人の憶測ですが、WACULさんの調査で「顧客を知るにはインタビュー」という結果が出たのは下記が理由だったのでは無いかと思いました。
"多くの企業が実施するユーザー調査の目的が「仮説を立ててそれが実際に正しかったかどうかを検証する」よりも「顧客がよくわからないので知りたい」が多い。"

つまり、そもそもですが
・自分達の調査の目的
・調査手法の特性
をしっかり理解しておくことが、有効な調査につながるのだと思います。

アンケート・インタビューどちらの特性もよく知って上手に使い分ける

多くの企業が「仮説に対する検証」よりも、「顧客ニーズの理解」を調査の目的としていることが多いので、そういう意味ではWACULさんの記事のように、1対1のインタビューが有効になると思います。
しかし、やみくもに1対1インタビューを実施するのではなく、目的・対象者を明確にして手法を選ぶことが重要になりそう、ということは覚えておきたいなと思いました。

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