Audible初体験。
AmazonのAudibleで、湊かなえ先生の作品が4作品一気に公開された。
小説は読んでこそ。なんなら書籍で文字を追ってこそと思っているたちなので、これまでずっとスルーしてきたサービスだったのだが。
最愛の推しが朗読されるとなると話は違う。
それもかつて連ドラで主人公を演じられ、いまなお心の奥底にそっとある宝箱のように、大切に鑑賞している作品である。
最愛の推し、俳優 藤原竜也さん朗読
『リバース』
平凡なサラリーマン。むしろ「地味系」と自虐してしまうくらい、自分に自信の持てない主人公──
深瀬和久を2017年の4月ドラマで藤原さんは演じられていた。
なんといってもドラマ版と小説では、深瀬和久という人物のディテールがかなり異なり、作品の印象どころか結末が違っている。
ドラマの制作発表の際、湊かなえ先生が
「普段は当て書きのようなことは決してしないが、藤原さんの深瀬を見て、もう藤原さんにしか当てはまらないと思った」と仰ってくださったように、
ドラマのラストはオリジナルで書き換えてくださったのだ。
錚々たるスタッフ、キャストによって作られた傑作ともいえるドラマの原作小説を、お一人で朗読される作業はとても大変だったと振り返られていた。
防音ブースに閉じ籠り、一字一句間違えないように気を配りながら、汗を滲ませ、心を込めて。
その思いが伝わってくるように、藤原さんの句読点は聞く人にとても優しい。
何ページもある独白を間違えることなく観客に届かせる演劇、芝居を活動の主軸とされてきた彼だからこそ、朗読という文章を読んで聞かせる作業においても言葉が意味をまとい伝わってくる。
深瀬自身も、深瀬以外の人物も、せりふを読むときの緩急などはドラマを観て感じるイメージとはまた異なっており、耳からの情報をより楽しませる。
ドラマも小説も、何度も繰り返していても飽きさせない作品の魅力をより深めてくださった。
やさしく、味わい深い甘さの、低い声。
決して結末から読んではいけない
過去を巡る人間本質の物語。
ミステリーなので何だかふわっとした感想しか残せないけれど……
推しの声で推しの作品は、最高の一言に尽きる。
寒くなってきたこの時期にぜひ、
読んで、観て、聴いてみていただきたい。