『愛なんていらねえよ、夏』の記憶
当時まだ小学校入りたてのチビの頃、夢中になって観ていた、2002年7月放送のTBSドラマ
『愛なんていらねえよ、夏』
金曜日の夜だから、母とふたりで観ることを特別に許された22時の枠……。
昼ドラっぽい内容なのに、しっかりラブロマンスとして成立し、人間模様が複雑に絡み合い、今観ても最高に面白いと思う。
最愛の藤原竜也さんもまだ20歳になりたてで、人生初の茶髪姿でホスト役に挑戦された。
幼心に「歌舞伎町」「借金」なんて、少しダークな要素と「ホスト」と「令嬢」が絡んでくるのは絶対に面白い!と感じ取っていたのをよく覚えている。
その2年後2004年公開の『ムーンライト・ジェリーフィッシュ』でもやっぱり影の濃さが耽美で強烈に好きだった。
“聖地巡礼”という言葉がオタクにとって当たり前になって久しいと思うけれど、わたし自身、“それ”が好きなタイプである。
しかし生活面にも文化的にも自粛を余儀なくされた昨今、「いつか行こう」はできる限り早く実行しておかなければ後悔することを学んだ。
「いつか」と思っていたロケ地は行けなくなってしまうかもしれないし、姿形を変えて、意味合い的には巡礼できたとしても、聖地としての景観を失ってしまう。
前置きが長くなったのは、今回叶ったロケ地巡礼の場所が、2年間公開を中止していたからだ。
学生時代に行こうとした時たまたま閉まっていて、中を見ることができないまま、大人になってからも「いつか」と先延ばしていたら中止になっていた。
大切な機会は失ってから気がつく。
2年待って、やっと叶った。
鎌倉市|旧華頂宮邸 秋の施設公開
※ドラマの内容は知ってる前提の文章になります。
もちろんドラマを全部観返し、胸を弾ませて行ったけれど、夢中になっていた『いら夏』の景色は秋の木漏れ日にひっそりと、その記憶を閉じ込めるように佇んでいた。
あ、この玄関……!
スリッパをお借りして、ロビーへ。
この階段、2階、
奥の部屋は亜子ちゃん(広末涼子さん)の…!!
まるで今にも、鷹園家に流れていた静かな時間へと飛び込んでいけそうなほど、ドラマで観ていた空間が広がっていて感嘆するばかり……。
入ってみると本当にしっかりした構造で建てられていると分かるけれど、ほとんどが木製だと言うから驚かされる。
細部まで木組みの美しい模様が見られるのは景観のためだけでなく、大人数で上を歩いても問題がないように造られたからなのだそう。
今年は、11/5と11/6の二日間限定で、5日のお天気があまり良くなかったことも含め6日の方が盛況だったとのこと。
「昨日ならもう少しゆっくり撮れたんだけど…」と、シャッターチャンスを1人で待ちぼうけするわたしに優しく声をかけてくださった館内のボランティアの方からお話を聞きながら、地元の方々にも愛される文化遺産の偉大さを噛み締める。
ドラマの中でお屋敷はほとんど
リビングダイニング、玄関ホール、レイジさん(渡部篤郎さん)と奈留(藤原竜也さん)のお部屋、
そして亜子ちゃんのお部屋と階段、お庭のシーンが中心だったが、奥に続くお部屋には和室もあったり
昭和4年に建てられた侯爵邸の趣を濃く感じられる。
この日来訪していたお客さんの中には、聖地巡礼が目的の方が多く、アニメのグッズを持っている方もいらっしゃった。
それぞれテンションの上がる場所が違うのも、作品によって異なる魅力を映すこのお屋敷の奥深さだなとしみじみ……カメラを持った男性たちがぬいぐるみとか推しのグッズで楽しそうに写真撮ってらしてる様子には親近感を覚え、とても微笑ましかった。
推し活を満喫するお兄さんたちが羨ましくなったので、ついわたしもこんな写真を…。茶髪も大好き…。
亜子ちゃんに実の兄だと偽って亡きお父さんの財産を分けてもらうため鷹園家へ来たレイジさん。
奈留はそのレイジさんに憧れていた。
歌舞伎町のホストらしい“ズルい”やり方で人を騙し大金を得る。そんな夜のカリスマたる生き様を尊敬していたからこそ、レイジさんの経営する店でNo. 1ホストの地位を捨ててまで、借金まみれになった彼について鎌倉まで来た。
しかし奈留が目にするのは
7億円の借金を返済するために盲目の少女を騙して大金を得るというゲームに勝つ、
憧れたホストのレイジさんではなく、
本物の愛を見つけ、少女のために生きようとする
“かっこ悪い”レイジさんだった。
部屋に篭りきりな亜子ちゃんのためにと、仲良しのお花屋さん経営者、季理ちゃん(西山繭子さん)に依頼して、お庭ではたくさんの花を育てるシーンも。
実際の旧華頂宮邸でも、バラの花壇がひっそりと山の中に彩りを添えていた。春の公開が開催されるとたくさんのお花が見られるらしい…!
両親に勘当され家を飛び出してから、夜の街で生きてきた奈留にとって、美しい鎌倉で太陽の下、
自然と触れ合うのは「プチバカンス」気分だった。
緑に囲まれながらこの青い空に包まれていたらもう夜の都会での仕事になんて戻りたくなくなると思うけれど……奈留にとっては、レイジさんと同じ景色を見ていた頃こそ求めていた生活だったのだ。
うーーん……ホースでお庭に水撒きしてたり、
ミミズに驚きながらも楽しく土いじりしていたのも楽しそうに見えたけれど…。
どんどん変わってしまう憧れの人に、戸惑いを隠せなくなっていく。
彼にとって、すべてレイジさんがいるからこそ
楽しく、鮮やかに映る世界だった。
「嫌なんだよ、あいつばっかり見てるレイジさん」
と、涙声を上擦らせながら訴える姿は幼く見える。
そのレイジさんと奈留が二人で借りていたお部屋は公開されておらず、見られなかったけれど…(本当に使用人向けのお部屋なので、観覧公開はされないのだそう)
客間なのかなと思っていたら「本当に使用人向け」だなんて…むしろ気になって中を見れないかな〜と、お外からウロウロ撮ってみた。
本当にせっかくの機会なので、
10:00〜15:00の開館時間で午前中と午後、
2回も訪問させていただいた。
お庭に入る途中で、施設の維持・修繕のために募金箱が設置されていた。
どうか美しい四季の彩りに映える文化遺産として、
そしてこれからも愛するドラマの撮影地としても、守られていきますようにと願いを込めて……。
来年以降の公開はまだ未定だけれど、
記載したホームページに情報が更新されるので
もし『いら夏』ファンで気になってる方はぜひ…!
『愛なんていらねえよ、夏』
懐かしさも感じながら、いつも新鮮な愛しさを覚えさせてくださる藤原竜也さんの表情が大好き。
役柄的にも所謂“イケメン枠”なのかと思いきや
「愛と憎しみってさ、並んじゃうんだよね」と、
張り裂けそうなほどに大きな敬愛を抱くまなざしは観るたび胸が締め付けられる。
感情が交差する二人に振り回される姿が涙ぐましい奈留の視線で観てしまうので
主役二人についてまったく書けていないのだけれど…
演出の堤幸彦さんと馴染みの深い渡部篤郎さんとも念入りに相談しながら撮影されていたそうで、
男女の恋愛だけでなく、家族愛、そして同性に抱く愛情も描かれる複雑な物語に
等身大で純粋すぎる『芥川奈留』は
竜也さんにしか生きられないと、いまなお愛しさが尽きることはない。
季理ちゃんと奈留の2人でレイジさんの愚痴を溢していたり、人間らしさ溢れるファミレスのシーンも
とっても好き…。
ロケ中心の撮影をする本物の映像へのこだわりは、来年1月スタートの日曜劇場『Get Ready!』でも
観られるかなと期待が高まる。
堤幸彦さんとの映像作り、
妻夫木聡さんと20年ぶりの共演!
松下奈緒さんとは『遺恨あり』以来、
愛しの『太陽は動かない』からの日向亘さんも、
年明けがほんとうに楽しみ!
新しいお姿への感動は常にキャッチしながら、
いただいてきた愛しさへの感謝もギュッと抱き締めて、高く跳び続ける竜也さんを応援して参ります。
正解なんてないよなぁと思いつつ、その高さに焦ることもありながら……マイペースを心がけて。
12月は『太陽は動かない』ロケ地に行くので、またたくさん記憶を撮ってくるつもりです!
リンクは Amazonを貼りましたが、
paraviでも観られます。
ここまで読んでくださりありがとうございました!