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【感想】白亜紀往事

超絶怒涛の!おっきいちっさい地球文明!栄枯盛衰おとぎばなし!!

「三体」で近代SFの寵児となった劉慈欣の、ブレイク前に刊行された中編SF小説。
SFと言ってもタイトル通り、時代は白亜紀。恐竜の闊歩する時代。
恐竜世界と蟻世界が相互依存する、あり得たかもしれない奇妙な文明のお話。

恐竜たちの体に入り込み、組織的な動きで優秀な医師集団となる蟻文明と、粗野だが自由な発想で繁栄の時代を謳歌する恐竜文明。不器用な手しか持たない恐竜が本来できない精緻な作業を蟻が受け持ち、また個では創造的な発想ができない蟻の知性を巨大な脳を持つ恐竜が補い、相互に依存しながら高度な文明を築いていく。しかし些細なすれ違いで蟻と恐竜の関係は激しい争いへと発展してしまう。

やはり劉先生は徹底して文明と戦争と、個のあり方について描こうとしているんだな。
舞台が太古の昔ながら、SFとしてのスケールは十分にある。
何しろ蟻と恐竜の話だ。蟻にとっての恐竜世界の広大さを思えば、
それだけでも相当なスケールを感じられるし、想像を超えたロマンを描く舞台として申し分ない。

彼らが獲得したそれぞれ独特の知性と、生存戦略、その始まりと終わりについて。
人間は一切出てこないけど、でもこれは我々の話だ。
文明に突きつけられたひとつの命題だ。
我々はどこに向かい、どのような結末を迎えるのか。

殺伐とした世界で示される文明の光と影を
ロマンチックに描き出す筆致は劉慈欣の真骨頂かもしれない。
やっぱ強いわ。

とっても楽しく読みました。
しかしどうしても蟻側に感情移入しちゃうよね。


あと劉慈欣の「三体」三部作は僕が言うまでもなく超絶面白いので、SF読み慣れてない人も読んでみるといいと思いますよ。オーディブルならすいすいいけるしね。

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