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響子と咲奈とおじさんと(22)

  子供のまま

 響子達のお正月リモートクラス会は無事に終わった。
その数日後の成人式。式典後のおしゃべりや飲み会は、感染症対策の為、自粛との要請で取り止めとなった。
幹事4名での食事会をした。各席の間にはアクリル板の仕切りがある居酒屋。
クラス会参加者からは、「お正月のリモートクラス会みたいなのを、またやろう。自粛解除になったらリアルでやろう」との声が多数有ったと醍醐から報告。
「みんな、お疲れ様。ホントに良かった。うん、みんなのおかげだ。」醍醐が他の3名に礼を言う。
「響子、みんな嬉しがってたぞ。お前がマメに各小部屋に行ってくれて。来てくれたとか、話が出来たとか、あの頃は話せなかったのに、とか。」
「まあ、幹事としてのお努めでしょうかねぇ、、、それにみんな、どれだけ変わってるか、変わってないか興味あったし。」と響子。
「茜が一番変わったかな?ほとんどの人が分からなかったようだし、、声聞いても分からないとかいう奴もいたし。」と村西。
「えへへ。インパクト有ったよねぇ~。あれからライブに来てくれる人増えたの。みんな職場とか学校の友達連れて来てくれて、嬉しかったぁ~。」と茜。
「次は自粛解除になったら本当にリアルでやろう。茜のステージもやってみたいし、そん時も手伝ってくれ、みんな。」
「いいよ。」「良いわよ。」「……」
「お、響子。お前は手伝ってくれないのか?」
「だって、また醍醐と一緒なんて暑苦しいし、、、」
「お、俺か、、、俺が暑苦しいからなのか、、、そこは直す。気を付ける。だから、、、手伝ってくれ。頼む。」
「……まあ~しょうがないか、手伝ってあげるわよ。」
「よし、やった。うん、頼む。」

食事会の帰り。方向が一緒の響子と醍醐、歩いて帰る。
「醍醐、クリスマスゴメンね。お父さん帰ってきたからさ、、、そっち優先しちゃった。」
「良いよ。お父さん、半年に一度くらいは帰ってくるのか?」
「うん。でもね、クリスマスとかお正月は、大抵居なかったのよね。3月と9月にいつも帰ってた。なんか、役員の前で報告が有るんだって、その時期に。」
「ふ~ん、、、じゃ、今回のはちょっとしたクリスマスプレゼントになったのか?」
「え~、お父さんがプレゼントになるのは5歳までよ。いや、3歳かな?。今はお小遣いの方がよっぽど良いわよ。」
「ハハハハハっ、でも楽しかったんだろ。」
「うん、楽しかった。醍醐は?他の子とデートとかしたの?」
「……してない。俺も家族と過ごした、、、約束あったんじゃないのか?って からかわれながらな。」
「ゴメン。いつか埋め合わせするから、、、。」
「うん、、頼んだ。」
「でも、醍醐は女の子にモテルもんね。私の順番が回ってくるのはかなり先かな?ウフ。」
「え~、、、俺、そんなにモテないぞ。話しかけられても話題に乏しいし、相手の誉めて欲しいとこなんか気が付かないし、、、」
「それって誰かに言われたの?女の子と居る時はそうしなさいとか、、、」
「あ、、ああ、言われた事あるし。」
「ふ~ん、、そ~う、、、言った人ってさ、醍醐の事、手懐てなずけようと思って言ったかもね。」
「手懐ける?、、、そうなのか?」
「分かんないけどね、、、フフ。」
「はぁ~、俺、ず~っと野球しかしてこなかったし、それ以外は大学行きたくて勉強してたし。そう言う事もっと知っとけば良かったよなぁ~って思ってたんだ。」
「いいよ。遊び人の醍醐なんて、嫌いになるよ私。きっと、、、、、今の小学生みたいな醍醐だから、一緒に居られるのに。」
「しょ、小学生かよ、、、そうなんだよなあ、、、大人になれてないんだよなあ、俺って。」
「そのままで良いよ。今の醍醐で。」
「うん、でも大人になりたい。響子に似合う大人になりたい。」
「え、何それ。もしかして口説こうとしてる?へへへ。」
「イ、イヤ、そうゆうんじゃない。野球しか知らない子供じゃ無くて、、、色んな面白い事、話せる大人になりたい。そうしたら響子に、、、」
「それはどうも。でも私、話が面白いとかで男の人、評価しないよ。」
「うん、お前はそう言う奴だと思うから、振り向いて貰えるように大人になろうと思ってさ。」
「……酔っ払ったね、醍醐。恥ずかしくなる様な事、いっぱい言っってるね。……ま、あてにしないでおくわ。じゃあね、私はここで。」
「うん。じゃ、また。……あ、響子、また連絡しても良いか?」
「うん、、、、いいよ。おやすみ。」
「おやすみ。」

【私に似合う大人って何?、、、私って、ただの子供だよ。醍醐とおんなじ、、、、子供だよ。】
それから響子は醍醐から時々、食事とか酒とか誘う様になった。
ネットの話題や、友人からの面白そうな話を仕入れて来ては、響子に話す。
響子が面白がれば、醍醐が喜ぶ。「イマいち。」と言えば、少し落ち込む。
【やっぱり、醍醐は子供だよね、、、一生懸命に話してさ。それを喜ぶ私も、子供だけどね。】

「響子は、やっぱ、他の子とは違うな。」地元、日野駅前の居酒屋で醍醐と飲んでいると、急に言われた。
「うん、変わりもんだもんね。……ってか、失礼な奴だなぁ~醍醐は。」半ば笑い気味に返す。
「いや、良い意味での”違う。”だと思うんだ。」
「違うって、良い意味と悪い意味ってあるの?」
「ああ、、、なんて言うか、、、他の子は俺に話す時って、ちょっと鼻にかかった声で、首を傾げて、甘えるような事言ったりするんだ、、、
 それに、、、どっか行こう、とか、連れてってとか、、、。よく分かんないから、放っておくとなんか不機嫌になったり。」
「誘われてんじゃん。乗っちゃえば良いのに。直ぐ彼女になってくれるんじゃない?」
「うん、多分そうなんだろうけど、、、、そう簡単に、自分って預けられるもんなのか?」
「人に依るわよ。彼氏が欲しい子や、そういう事したい子はそういう演技もするだろうし、今要らないとか、そういうの自信が無い子は、出来るだけ疑われない様にするだろうし、、、」
「うん、なんとなくは分かるんだけどな、、、やっぱ、俺、好きになった奴と付き合いたいからさ、、、好きになって貰って、好きになってからって言うか。」
「じゃ、どうしてんの?男ってさ、我慢できない時ってあるんでしょ?」
「そりゃ、、、自分でとか、、、風俗とか行くし、、、」
「ふ~ん、いまどきの男の子にしちゃ堅物なのね、醍醐って」
「柔らかいか堅いかは知んないけど、そうありたいって思ってる、、、、、、だからさ、、、」
「醍醐、、、、、、何気に口説いてるのは、分かるけどさ、、、今は、ちょっと、、、」
「うん、待つ、、、待てる。俺、響子の事、好きなのは好きなんだけど、むしろ尊敬に近いかもなって思うんだ。」
「何よ、尊敬って、、、そんな事言われるほど、立派じゃないもん、私。」
「ゴメン、俺が勝手に思ってるだけだから、、、響子は普通のってゆうか、本当はお淑やかな女だと思うよ。見た目は派手そうに見えるけど。」
「……ヤダなぁ~、勝手に響子のイメージ作っちゃってさ、みんなさ、、、昔っからさ、、、だから、、、、あの頃もさ、、、」


 

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