
響子と咲奈とおじさんと(17)
おじさんの事
「わたしね、母子家庭だったの。2歳の時にお母さんとお父さん、離婚して、、、」
「2歳の時か、、、じゃ、お父さんとの思い出とか無かったのかな?」
「ううん。半年に一度くらい会えてたから。そん時はファミレスでご飯食べたり、福岡まで行っておもちゃ買って貰ったり、お小遣い貰ったりした。」
「そうか、、、お父さんと親子喧嘩とかは無かったのか、、、」
「うん、無かった、、、。おじさんは咲奈さんと喧嘩とかしてたの?」
「……する前に、居なくなったからな、、、小言とかは言ったかな、、、」
「小言?どんな事?」
「パンツ、穿きなさいとか、、、、目覚まし掛けて自分で起きなさいとか、、、」
「パンツ?お風呂上り?」
「うん、、、、出かける前とかね。」
「え、着替えもおじさんの目の前でしてたの?、、、そういうものなの?」
「よく知らない、世間的にはどうなんだろうね?」
「おとうさん、嫌いとか言われたの?」
「……どうだったかな?、、、、、、それより晩御飯、何が良い?」
「……何でも良いよ、、、わたし、作るよ。」
「じゃ、もう少ししたら買い物行こうか。」
「……ハイ。」
【また、話が逸れちゃった、、、】
咲奈は色んなことを晋平に聞いた。キッチンで、ソファーで、ベランダで、お風呂で
ただ、奥さんや娘さんの事を聞こうとすると、急に喋らなくなったり、会話を変えたりする。
【聞いちゃいけない事なのかな、、、】
「おじさん、司法書士って難しいんでしょ、資格試験。大学で専攻してたの?」
「いや。大学は行ってない。専門学校だ。しかも電気の。」
「電気?、発電所とかの?」
「いやいや、電子だな。通信と言うか。」
「電子?。…よけい判んない、、、。」
「そうだよなぁ~。知らないよなぁ、普通の人は。…テレビやラジオの事とか、携帯電話とか無線通信だろ。知ってる?」
「…うん、でもテレビはコンセントやアンテナ、繋がってるよ。」
「放送局や携帯電話の基地局からは空中を電波が飛んでくるんだ。それをアンテナや本体で受信してる。」
「…ふ~ん。良く分かんないけど、分かった。…で、何で司法書士なの?」
「…うん、奥さんと一緒になる為だったかな。学校出て、就職したけど収入がね。結婚できても苦しいだろうなって思って。」
【あ、奥さんの事、自分から話し出した。】「でっ。」
「就職した所が事務用品や事務機器の会社で、あいつのいる会社へ行ってたんだ。」「うん、うん。」
「ある日、昼休み中にパソコンの修理してたらあいつが事務所に戻ってきて、休憩してたんだ。」「うん、うん。」
「そしたらあいつ、両胸のオッパイを机にのっけて居眠りし始めたんだ。」
「お腹いっぱいになったから、、、。」
「多分な。…で、修理が終わったから”すいません”って声掛けて。何回か声掛けたらあいつ、慌てて起きて。
自分の寝てた事と、机にオッパイ乗せてるのに気付いて、顔、真っ赤にしてた。」
「…机の上にオッパイ乗っけて?。楽なの?」
「後で聞いた話、すっごい肩凝るんだって。」
「…あ~ぁ、…私には分かんない話だ、、、。」
「…うん、そうだね。」晋平がニヤリとして言う。
「フン!、失礼な、、、。どうせっ、貧乳ですよぉ~。」咲奈、軽くふくれっ面、そして薄笑い。
「でっ、恵比寿でたまたま出会って、相手も二人、こっちも二人、、、、で、飲もうかと。居酒屋で。」「うん、うん。」
「そいで、連絡先交換して、その頃はまだ携帯なくて、両方固定電話。…で、付き合おうかなって。」「早っ!。即?。」
「いやいや、半年くらいは何も無かったよ。メシとか酒とか一緒にして、ようやくOK貰った。」「ふ~ん。」
「それから2年くらいして、一緒に住もうって。俺があいつの部屋に行った。結婚したいと思ったけど、俺の収入がね…。一物勃起、じゃない。一念発起。」
「やだぁ~。下ネタ、要らなぁ~い。」と言いながら咲奈、笑う。
「資格を取ろう、って。学歴や職歴関係無い司法書士目指したんだ。」
「すぐ、取れたの?」
「丸3年掛かった。その間、あいつが面倒見てくれた。俺もアルバイト、少ししたけど。日雇いのガードマンとか、週2,3回。」
「そう言えば司法書士って合格率、4、5%じゃなかったっけ。」
「うん。成績良くても上位に入んないと合格しないらしい。」
「へぇ~。おじさんって頭、良いんだ。」
「いや。運が良かったんだろうな。巡り合わせだろうな。…3年の間、家事全般は俺の役目だった。」
「…だからかぁ~。」
「資格とって、今の事務所に入れてもらって、2年して結婚した。」
「…で、このマンションに引っ越したの?」
「いや、…それから7年くらいアイツの部屋に居て、子供、欲しいねってなって。30代後半だったからね。」
「…で、咲奈さん?」
「…いや、また2年間、不妊治療。毎月、病院通い。でっ、妊娠したって判ったからここに決めた。」
「…お金貯めてたの?ローン?」
「ローンと、あいつの両親に出して貰った。一度に貰ったら贈与税掛かるから、小出しで。アイツんち、結構資産家なんだ。」
「前にも聞いた事ある、、、へぇ~、、、いい奥さん貰ったんだね。」
「うん。…で、引っ越しは俺と引っ越し業者で。家の中の物、殆ど俺が把握してたから。あいつは自分の洋服とかくらいだった。準備は。」
「ふーん、…いい旦那さん貰ったのかな?奥さんが。」
「そういう事だっ!。」
「ハハハハハ」二人で大笑い。
【…良かった。奥さんと娘さんの事、少し話してくれた。ちょっとうれしい。】