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女神 (14) 恥ずかしい思い出

  恥ずかしい思い出

雄大、2年生の時。
校舎の外階段の下をずぶ濡れで下を向いて立っている女子生徒を見かけた。5時間目と6時間目の間の小休憩の時だった。
「おい!。どうしたっ?。……誰かにやられたのか?……ちょっと待ってろ!」と言って、雄大だけ保健室に向かった。
保健教師にバスタオルを借りて戻り、その子に渡すと、
「おい、お前、名前は?。何年何組だ?」と尋ねた。
「……白川 琴音ことね。…2年1組です。」そう言えばこの娘、朝の登校時に、校門での風紀委員のチェックで見かけたことがあるし、男子同士の会話にも良く出てくる。
割と奔放な女子で、しょっちゅう告ったり告られたりして、男子には人気者で、女子からは嫉妬の対象だと聞いた事がある。
髪は黒いままだが、スカートを短くして履いている。可愛い子だと思う。
「誰にやられたか、心当たりがあるか?」
「……判りません、、、。」
「そう言えば、お前を見かける前に同じクラスのやつらがトイレから慌てて出てきたみたいだったが、、、そいつらか?」
「……判りません、、、。」
「ちょっと聞いてくる!」
「ダメですっ!。放っておいてくださいっ!」
「しかし、これはさすがにやりすぎだろっ!。また、やられるぞっ!」
「良いんです、、、お願いですから、、、構わないでください。」
「判った。……でも、またやられたら言って来い。2組の榊だ。榊雄大だ。とっちめてやる!」
「ありがとう、、、榊君、、、」
何人かの生徒がずぶ濡れの琴音を見かけており、雄大が保健室からタオルを持ってきた事も見られていた為、その話は放課後の時点で、みんなに知れ渡っていた。
良太と珠美が「何があったの?どうしたの?」って聞いてきた。
「2組の白川琴音がトイレで水をかけられた。犯人をとっちめてやろうと思ったが、止めてくれと言われた。クソっ!」と答えた。
「さすが風紀委員!。わが高校の警察みたいねっ!」と珠美が笑いながら 揶揄からか う。
「でも、他の生徒の短いスカートや茶髪、赤いルージュは注意しなよっ!」続けて珠美。
「良いんだっ。誰にも迷惑かけてない!それで本人が明るくなるんだったら、その方が良いに決まってる!」
「そう言うとこ、雄大らしいねっ」良太が微笑みながら言ってくれた。【……その笑顔、良い!】

次の日の放課後、白川琴音がクラスにやって来た。
「榊君。好きになりました。私と付き合ってください!」クラスみんなが居る前で告られた。
「……はあっ?。……いや、何?……ちょっとわかんないんですけど、、、」雄大、困った。
「返事は待ちます。じゃっ。」そう言い残し、琴音が去って行く。
『おお~。榊にも春が来た!』『天変地異が来るぞ!』『ひゅう~ひゅう~』『あの、白川が、、、榊のどこが良いんだ?』
『榊はダメだろ。もう決まってるし、、、どうすんの、関口、、、。』気になる発言が少し。
クラスが勝手に盛り上がっている。良太を探した。クラスから出て行ってる。
【良太~、誤解だぁ~、見捨てないでくれ~】
翌日から放課後になった途端、白川琴音が雄大を迎えに来始めた。
「ちょっとクラブが、、、」ほとんど顔を出していない、アマチュア無線クラブに行くと言ったり、「今日はちょっと用事が、、、」何も用事が無いのに急いで帰ってみたり、
三日後、琴音が迎えに来る前にと、脱兎の如く学校を飛び出したが、校門の陰にそいつは隠れる様に居た。とうとう捕まった。

「うわっ!。白川さん、、、早いんですね、、、」
「待ってました。今日は返事を聞かせてください。……一緒に帰りましょう。」
「……はい。」
白川は電車通学だと言う。歩いて15分ほどのJRの駅で自宅のある町まで帰る。雄大は駅の手前を曲がり、暫く歩いた先に自宅がある。
「……あの~、、、やっぱり俺、、、」付き合えないと断ろうとした矢先、琴音が雄大の左手を握って来た。しかも、指と指を交互に絡ませながら繋ぐ”恋人繋ぎ”だった。
【……やばっ!】雄大の”もの”が敏感に反応し始めた。腰が引ける。まだ学生服の上着は着ていない暑い季節。ズボンの前が膨らみ始めた。
【あ、ダメっ!……大きくなるな!】分身に言い聞かせるが、効果は無い。さらに腰が引ける。
「どうしたんですか?顔、真っ赤ですよ。……腰、どうかしたんですか?」何も知らない琴音が悪魔の様な甘ったるい声で聞いてくる。
「……ちょっと腰が痛くて、、、」汗も出てきた。
「大丈夫ですか、、、」琴音はそう言いながら手は繋いだまま、上半身を雄大の左手に押し付けてきた。
琴音の胸の膨らみが左腕に感じる。かなり大きな胸だ。【……我慢、我慢だ。もう少しだ、、、あの交差点まで、、、】
歩くたびに雄大の”もの”が下着と擦れる。皮が被っている為、先端が直接下着に当る訳では無いが、それでも刺激される。
その上に、腕に伝わる乳房の柔らかさ、琴音の髪の良い香り。【だ、ダメだ、、、イっちゃいそうだ、、、】
かなり我慢したものの、、、駅の手前、雄大の自宅方面の交差点で、遂に、、、、、、、、”フィニッシュ”。
「ごめんなさいっ!。俺っ、やっぱ、無理ですっ!」雄大はそう言って、家の方角へ走りだした。
走っても擦れる”もの”と下着。その下着も発射された液体で濡れて肌に纏わりつく。
ようやくの思いで辿り着いた自宅で、ズボンと下着を洗濯機に放り込み、洗剤を入れスタート。
自分の部屋で下半身が裸のまま、体育座りをして自己嫌悪に陥る雄大。
【…早漏で、、、、皮被りで、しかも真性で、、、、過敏で、、、どうしようもないな、、、】落ち込む雄大だった。

次の日、教師用駐車場の横に琴音を呼び出した。
「昨日はすみませんでした。急に腹具合が、、、」
「……」琴音は何も言わず、雄大の顔を睨む。
「……あの、返事ですけど、、、付き合えません、、、。ごめんなさい。」
「誰か好きな人、いるんですか?」不機嫌そうな声で聞いてきた。
「いや、、、そんなんじゃ無く、、、」
「……もしかして、、、関口君?関口良太君?……噂では聞いてたけど、ホントだったの?」
琴音の顔が明るくなり、興味津々といった感じで聞いてきた。
「いや、良太は親友だから、、、好きって言うのじゃなく、、、」
「ふふふ、判ってる、判ってる。大丈夫、誰にも言わないから、、、応援するから、、、じゃあね、榊君!」”ルンルン”と琴音は去って行った。
【……違うけど、違わない、、、そうだけど、そうじゃない、、、】雄大、ホッとすると同時に胸が熱くなった。
どうも白川琴音は”誰にも言わないから”と言っておきながら、1組では話題にしたらしい。
しかし、1組にも俺たちと同じ中学からの生徒が多数いる為、「知ってた」とか「不思議ではない」とかで盛り上がらなかったらしい。
それはそれで恥ずかしい。でも構わない。雄大、ホッとしている。

琴音との一件が去年の事。雄大の、良太への思いを確かめた日。それが恋だと確信した日。
でも、近づかず、遠ざからずの距離を保とうとする、一途な雄大の心。

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