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泥中に咲く一輪の白い花(39)

  流れ

神田明神を後にして、正月に行けなかった上野の博物館や動物園へ行こうと話す桜子と幸太郎。
桜子の携帯の通知が鳴る。亜里沙からメッセージが届いた。
”あの件、考えてくれた?”
”桜子なら、安心できそうな気がする。”
”その気になったら、連絡ちょうだい”
携帯の画面を見る桜子の横で、覗く幸太郎。
「あの件、って何ですか?、、、昔の仕事に戻るとか?、、、」
「戻れないわよ。もう歳だし、身体、緩んじゃったし、、、息上がるし、、、そうじゃなくてね、、、」
「……里親の件、、、ですか?」
桜子、幸太郎の顔を暫くじっと見る。目を落とす。
「そうなんですね、、、お姉さんって方からそんな話もあったんですね。」
「……うん。黙ってた。幸太郎君に話すと、そうしようって言いそうだったから、、、」
「そうですね。当ってます。今から行きませんか?そのお姉さんの所。」
「えっ、、今から?、、、動物園は?、、、博物館は?」
「今度行きましょう。またデートできる口実になります。」
「デートって、、、」
「住所、教えてください。タクシーで行きましょう。」
いつになく幸太郎が行動的だ。いつもの幸太郎では無い。桜子、亜里沙から貰った名刺を出す。

幸太郎がタクシーを手を上げて、拾う。乗り込む。タクシーは走り出した。
桜子と幸太郎も、未来に向かって走り出した。

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