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年末年始の話

年末年始に結婚して初めて旦那実家へ帰省した。
旦那実家は山間部で冬になると冷え込む。ただ、今年は例年よりも暖かかった様だ。私にとっては寒かったが。

年末には杵と臼で餅をつく。ぺったんぺったん。手返しを初めてやった。タイミングが難しかった。
ついた餅を伸ばした。クッキー生地を伸ばすようで楽しかった。
つきたてのお餅はとても美味しかった。

年始には地域のお寺や神社へお参りをした。おみくじを引いた。大吉だった。

過ごし方は少し昔ながらの年末年始だった。しかし、違うのは家族の温かさだった。

私の実家では家族が全員揃うのは夜ご飯の時間ぐらいだった。家庭がちょっと複雑なのもある。

餅を手返しする私に優しくアドバイスをしてくれる義両親、餅を伸ばす時に「いい感じ」と声をかけてくれた旦那と義弟くん。
バタバタしてる中でやれることが料理ぐらいしかなくて、ご飯を作れば「美味しい!」「これぐらいがすごい好き」と喜んでくれる義家族。

ただただ当たり前のことを当たり前にしただけでこんなにも褒められるのは初めてかもしれない。嬉しかった。

小さな頃、母親の手伝いをしたい時期が私にもあった。けれど母はしっしと手で私を追い払い、台所に私を入れようとしなかった。そのせいか、私は台所に複数人で立つのに慣れなかった。

そんな環境とは違う、優しい世界。
優しさで温かくて、自分の椅子がある家庭。除け者にされることなく、対等に扱われ、話を聞いてもらえる。
小さい頃に味わいたかったと思った。

旦那と義弟くんが仲良いのも私には眩しく見えた。私には5つほど年の離れた妹がいる。ただ、母親は違う。私の産みの母親は私が幼い頃に亡くなってしまった。

私が幼い妹に話しかけようものなら「話さなくていい」と母親が妹に言っていたのを覚えている。故に、私と妹が話をすることができるようになったのは妹が高校生になった頃だった。
私には父方の祖父母が付いていてくれたから良かった。けれど、周りの子達の話す家族については憧れを持っていた。「お母さんと服を見に行ったんだー」と話す同級生が羨ましかった。

そんな環境が私の根元にあるからか、義家族が眩しく見えた。そして、その中に入れて貰えたことが何より嬉しかった。

年末に義母と買い物に行く機会があった。少し遠いスーパーに行った帰りにスターバックスがあった。モバイルオーダーで注文し、ドライブスルーで飲み物を受け取った義母はとても嬉しそうな顔をしていた。
行き帰りの車の中、義母が義家族の話を沢山聞かせてくれた。とても愉快な出来事が多かった。
こんな母親に私もなりたいと思った。

家族で揃って紅白を見ることも、ゆく年くる年で年越しをすることも、何もかもが新鮮だった。

極めつけは旦那の祖母が残していた日記に私が初めて旦那実家を訪問した時のことが書いてあった。「初めて彼女を連れてきた。気さくなお嬢さんで沢山お話をした」と。

泣いた。義家族の前で声を上げて泣いた。嬉しかった。ここまでの嬉しかったことが込み上げて泣いた。
「こんなにも温かくて優しくてさ、結婚してよかったーーー」と泣く私を旦那は「でしょ?」と自慢げな顔をしながら慰めてくれた。

そんな優しい世界に、温かい場所に私を置いてくれた旦那も旦那実家の皆様にも感謝しかない。
また義実家に行く日を楽しみにして今日もまた生きていく。

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