ANAがQRコード決済に参入というニュースを受けて
朝起きたらNewsPicksにこんなニュースが。
コメントはしたのだけど、1000文字制限にかかったので、noteに文字数を減らす前のコメントを転載しておく。
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コロナ禍で使いみちが狭まったマイルの出口としてのQRコード決済。施策としては良いようにも思えます。私もANAのマイルが貯まっていて使いみちに困っていたので、1ユーザとしては嬉しい取り組みです。
既存ユーザに対して選択肢を広げるという意味ではとても良い施策だと思いますが、これが新たな収益ビジネスになり得るのか?というと数点気になる部分があります。
1つめは、なぜわざわざQR決済なのか?という点です。
QR決済を使っている層は、既にANAカードをApplePayやGooglePayに登録して非接触決済をされている方も多いと思います。にもかかわらず、新たに開発するとなるとANAの会員アプリの拡大を軸におきたいが故にアプリから決済の導線を作りたいという事でしょう(そもそもスーパーアプリ化を名言されていますし)
既に別の便利な手段があるにも関わらずQRコード決済を使わせるというのは、U/X的には難しく、敢えて使っていただく必要があります。
敢えて使っていただく為に後述する設計をどれだけ魅力的にできるか?が重要だと思います。
2つめは、マイルを使い終わった後の再利用率です。
QR決済においては、マイルを残高として充当できる(PayPayボーナスのような立ち位置で)仕様にするということは多いに考えられます。
使いみちが狭まったマイルの出口を用意するというのは、ストーリとしてもとても綺麗です。
ただし、詳細は後述しますが1マイルを1円として充当できるというのは実はあまりお得感はありませんので、既に貯まったマイルの出口としては良いのですが、再利用していただく為には、マイルを貯める理由を作る事が必要です。
3つめは、インセンティブ設計です。
ANAカードは還元率が0.5%-2%(ブランドやランクによって異なります)で、クレジットカードとしては一般的な水準です。
ただマイルを貯める事で、特典航空券に交換する事ができ結果として、数万マイルで普通に買うと倍以上するチケットを受け取れたり座席をアップグレードできたりした為、皆さんマイルにお得感を感じられてきたわけですね。
インセンティブ設計の妙味は、実際にかかるコストよりも魅力的に見えるものをどれだけ用意できるかが重要ですが、今までその優れた例の一つが特典航空券やアップグレードサービス等であったわけです。これが、1マイル1円だとお得感はかなり減退し、他社のクレジットカードと変わりません。
このままだと貯まったマイルが吐き出されるだけになるリスクがあるので、チャージして利用してもらう為には、コストを抑えた魅力的なインセンティブ設計を如何にできるかが重要です。
4つめは、インフラコストです。
提携先に独自QRをおいてMPM方式でネットワークコストを抑えるというのは考えられなくはないですが、流石に加盟店開拓をいまからするとは考えづらいので、直接加盟店方式は無しか、あっても限定的でしょう。やはりメインは、スマートコードやJPQR等の既にあるネットワークにのるか、セブンのようにPayPay等既存のサービスを活用するか(ANAカードのようにANAはユーザ獲得と企画を担当する)だと思われます。その場合、コスト的に決済部分単体での収益化は難しくなる為、インセンティブ設計が苦しくなり結果的に魅力を作る事ができなくなってしまうのではないか?という点です。
追記 : インフラは日経がJCBのスマートコードと記事にしていました。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66534920S0A121C2TJC000/
とはいえ、ANAは残高サービスの運営(SKYコイン)、モール事業やタイアップの企画商品開発、旅行会社との連携等、色々な取り組みをされた経験をお持ちなので、提携も含め新しい企画をどんどん出されるのだと思います。
1ユーザとしてはマイルの利用方法が広がることは楽しみにしております!
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一巡したかなーと思っていたQRコード決済ですが、まだまだ増えそうですね。