見出し画像

最高裁判所裁判官 国民審査2024

最高裁判所裁判官の国民審査に向けて、裁判官の情報を確認した。


きっかけ

国民審査があることを早い段階で気づいていなかったところ、以下の情報で知ることとなった。2名に×をつけるという意見である。

当該団体は女性スペースなので件の2人が対象となるのは当然であろう。それを含めて全6人が関わった裁判を確認し、審査判断を行うこととした。

これは、自身の考えをまとめるつもりで書いた記事となっている。他の方に特定裁判官への審査を特定の方向に誘導する意図はないことを前置きしておく。

評価対象と評価方法

対象となる裁判官を、以下から入手した。

評価方法は、先の「女性スペースを守る会」で示される裁判を見たのち、後は、上記NHKサイト内の「主な裁判での判断は?」を参考とした。

まず、今回の国民審査対象の裁判官は大きく3種に分かれる。

① 性別関連裁判に関わる人
   → 尾島氏、今崎氏
② 性別関連裁判に関わらないが、判断材料のある人
   → 宮川氏、石兼氏
③ 判断材料のない人
   → 平木氏、中村氏

①は、性別関連裁判「令和2(ク)993」で判断する。
②は、性別関連以外の裁判「令和5(受)287」「令和5(受)1319」で判断する。
③は、裁判官個別の説明サイトを確認し、そこで気になった裁判があればそれで判断する。

評価中に登場する裁判

NHKサイト内で主な裁判と紹介されているもののうち、前節で判断に用いると紹介した裁判を中心に、当方の判断をまとめておく。

令和3(行ヒ)285(最三小判令5.7.11)

「行政措置要求判定取消、国家賠償請求事件」、いわゆる「トランスジェンダーのトイレ使用制限」の違法性を問う裁判。

この判決結果には、フラットな視点で見ている。この判断時点の情報に限定して考えれば、あり得る判決内容。この裁判を受けて、解禁と煽る人に与するつもりも、危機到来と煽る人に与するつもりもない

令和2(ク)993(最大判令5.10.25)

「性別の取扱いの変更申立て却下審判に対する抗告棄却決定に対する特別抗告事件」、性同一性障害の人が性別変更するための手術要件の合憲性を問う裁判。

この判決結果には、否定的視点で見ている。

令和5(受)287(最二小判令6.6.21)

「認知請求事件」、性別変更後に凍結精子で生まれた子の親子関係を認めるかを問う裁判。

この判決結果には、否定的視点で見ている。

令和5(受)1319(最大判令6.7.3)

「国家賠償請求事件」、旧優生保護法の合憲性を問う裁判。

この判決結果には、肯定的視点で見ている。

裁判官とその評価

尾島 明 → ×

令和2(ク)993」に対する補足意見はなし。単に賛成ということのみのようである。ここでかなりマイナス評価である。

宮川 美津子 → ×

令和5(受)287」に対する補足意見はなし。単に賛成ということのみのようである。ここでマイナス評価である。

今崎 幸彦 → ×

尾島氏同様、「令和2(ク)993」に対する補足意見はなし。単に賛成ということのみのようである。

令和5(受)287」を理由に特段評価の上げ下げをするつもりはないところ、「令和2(ク)993」だけでかなりマイナス評価である。

平木 正洋 → ○

NHKが主な裁判と取り上げているものは見つからない。今年の7月11日時点でも就任していない様子である。そのため、裁判官の名前で裁判例検索したものが判断材料とできる程度である。

裁判官の名前で裁判例検索し、出てきた中で気になった「令和2(う)1708」(東京高判令3.9.28)を見る限り、まっとうな判断と感じる。

令和2(う)1708」は、大麻栽培罪の既遂時期を問う裁判である。当方はこれに同意見である。

(裁判要旨)
 大麻草の種子が発芽生育できる環境下で,大麻草の種子を地中に埋めた(すなわち播種した)場合(判文参照),その時点で大麻栽培罪が既遂となる。

令和2(う)1708 裁判要旨

判決文を見ると、以下のように要約できそうだ。

(理解を深める目的で当方が要約)
 大麻栽培罪の既遂時期には、大麻草の種子を播種した時点で既遂になるとする「播種説」、播種しただけでは既遂とならず大麻草の種子が発芽した時点で既遂になるとする「発芽説」がある。
 種々判断すると抽象的危険犯と解されること、「栽培」=「播種から収穫に至るまでのすべての育成行為」であり、大麻が自生することを考えれば、播種するだけで国民の保健衛生上の抽象的危険が生ずるといえるため、播種した時点で既遂、「播種説」と解する。
 大麻輸入罪の既遂時期との対比では、大麻が未だ航空機内や船舶内にある限りは本邦に流通するおそれはなく、大麻を取りおろしあるいは陸揚げした時点で、本邦内に流通することによる国民の保健衛生上の抽象的危険が生じ たといえる。この性質の差が、大麻栽培罪との既遂時期の違いとなる。
 覚醒剤製造罪は、覚醒剤の原料等を基に化学反応を生じさせる一連の工程を加えて有害な覚醒剤が製出され、精製時点で国民の保健衛生上の抽象的危険が生じたといえる。この性質の差が、大麻栽培罪との既遂時期の違いとなる。

令和2(う)1708 当方による既遂時期の要約

石兼 公博 → ○

判断材料に使える裁判は「令和5(受)1319」のみである。反対意見を表明しているわけでもなく、この裁判では問題を感じなかった。

NHKが主な裁判と取り上げているもの以外では、裁判官の名前で裁判例検索して出てきた中で「令和4(あ)1059」が気になったので見てみた。この判決文を見る限り、まっとうな判断と感じる。「刑法13条1項の規定による没収と刑法16条1項の規定による追徴の等価値性」に関する裁判である。ただし補足意見などはなしである。

中村 愼 → ○

NHKが主な裁判と取り上げているものは見つからない。今年の7月11日時点でも就任していない様子である。この点、平木氏と同じ状況といえる。そのため、裁判官の名前で検索したもので判断するくらいである。

しかし、裁判例検索には名前が出てこなかった。判断付かない以上は、×をつける理由はなさそうだ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?