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森林環境税 法案成立時の取りまとめ

少し前のこと、森林環境税が与党の批判のネタに使われている場面を見る機会があった。法案成立時の会議録を確認して、とりまとめておくこととした。

よく、自民が悪い、岸田が悪い、あるいは、野党議員の一声で潰せるというコメントを見たこともある。そういったコメントに対して、何を言っているのだろうという思いでまとめた。

下記のつぶやきを掘り下げたものでもある。


政権

法案成立は平成31年(2019年)3月。
当時は安倍政権下であり、第4次安倍内閣にあたる。

衆議院

衆議院の法案通過は、平成31年(2019年)3月1日。

国会会議録から、政党(会派)と賛否と発言リンクが分かる形で情報を記しておく。

第198回国会 衆議院 総務委員会 第6号 平成31年3月1日
本日の会議に付した案件
 ……
 森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律案(内閣提出第六号)
 ……

第198回国会 衆議院 総務委員会 第6号 平成31年3月1日

立憲民主党・無所属フォーラム

○高井委員 立憲民主党・無所属フォーラムを代表して討論をいたします。
……
 森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律案は、譲与基準の人口案分などは今後見直す必要がありますが、放置人工林の天然林化を始め森林整備等に資する観点から、賛成いたします。

073 高井崇志

国民民主党・無所属クラブ

○日吉委員 国民民主党・無所属クラブの日吉雄太です。
 私は、会派を代表し、ただいま議題となりました地方税法等改正案、特別法人事業税及び特別法人事業譲与税に関する法律案、地方交付税法等改正案に対し、反対の立場から、森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律案に対し、賛成の立場から討論を行います。
……

075 日吉雄太

日本共産党

○本村委員 私は、日本共産党を代表して、地方税法改定案ほか三法案に対する反対の討論を一括して行います。
……
 また、森林環境税は、二〇二三年度で終了とされていた個人住民税均等割への上乗せ千円を、看板をかえて継続するものです。個人住民税の均等割は、所得割が非課税の人にも課税となる逆進性の高い税です。国民生活を圧迫するやり方はやめるべきです。森林整備の財源は、国の一般会計での森林予算や地方交付税で保障するべきです。

077 本村伸子

日本維新の会

○足立委員 日本維新の会の足立康史です。
 ただいま議題となりました地方税法等の一部を改正する法律案及び特別法人事業税及び特別法人事業譲与税に関する法律案については反対、その他二案については賛成の立場から討論します。

079 足立康史

社会民主党

○吉川(元)委員 社会民主党の吉川元です。
 地方税法改正案、交付税法改正案及び特別法人事業税、特別法人事業譲与税に関する法律案に反対、森林環境税、森林環境譲与税に関する法律案には賛成する立場で討論を行います。
……
 森林環境税、森林環境譲与税は、税制のスキームとしては手放しで賛同できるものではありませんが、公共財としての森林整備を促進する観点から、賛成するものとします。

081 吉川元

採決

085 江田康幸

○江田委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 次に、森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕

085 江田康幸

086 江田康幸

○江田委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

086 江田康幸

参議院

参議院での法案可決は、平成31年(2019年)3月27日。

国会会議録から、政党(会派)と賛否と発言リンクが分かる形で情報を記しておく。

第198回国会 参議院 本会議 第10号 平成31年3月27日
本日の会議に付した案件
 ……
 一、森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)
 ……

第198回国会 参議院 本会議 第10号 平成31年3月27日

総務委員会における審査の経過と結果

○秋野公造君 ただいま議題となりました四法律案につきまして、総務委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
……
 次に、森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律案は、森林の有する公益的機能の維持増進の重要性に鑑み、市町村及び都道府県が実施する森林の整備及びその促進に関する施策の財源に充てるため、森林環境税を創設し、その収入額に相当する額を森林環境譲与税として市町村及び都道府県に対して譲与しようとするものであります。
……
 質疑を終局し、討論に入りましたところ、国民民主党・新緑風会を代表して森本真治委員より、森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律案に賛成、他の三法律案に反対、日本共産党を代表して山下芳生委員より四法律案に反対する旨の意見がそれぞれ述べられました。

023 秋野公造

立憲民主党・民友会・希望の会

○杉尾秀哉君 立憲民主党・民友会・希望の会の杉尾秀哉です。
 私は、会派を代表して、ただいま議題となりました地方税法等の一部を改正する法律案等四法案に対して、森林環境税・譲与税に関する法律案に賛成、その他の法案については反対の立場から討論します。
……
 なお、新設される森林環境税・譲与税について、趣旨には基本的に賛同しますが、配分や使い道に厳しく目を光らせるとともに、既に多くの都道府県等で実施されている森林税との事実上の二重課税となる問題についても、将来的にはクリアすべきと考えます。

025 杉尾秀哉

国民民主党・新緑風会

○森本真治君 国民民主党・新緑風会の森本真治です。
 私は、会派を代表して、地方税法等の一部を改正する法律案、特別法人事業税及び特別法人事業譲与税に関する法律案及び地方交付税法等の一部を改正する法律案の三法案に反対、森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律案に賛成の立場から討論を行います。
……
 最後に、森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律案については、譲与基準や使途の在り方などについて多くの課題が残されていますが、地球温暖化の防止、災害防止と国土保全、水源涵養等の重要な役割を担う森林を支えるという大きな意義を有するものであり、賛成することを申し述べます。

027 森本真治

日本維新の会・希望の党

○行田邦子君 日本維新の会・希望の党の行田邦子です。
 私は、会派を代表して、地方税法等の一部を改正する法律案、そして特別法人事業税及び特別法人事業譲与税に関する法律案については反対の立場から、森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律案、そして地方交付税法等の一部を改正する法律案については賛成の立場から討論を行います。
……
 森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律は、これから進めるべき環境政策の大きな柱として位置付けられます。環境問題が厳しくなってきていることに加えて、戦後に植えられた杉やヒノキが今ちょうど伐採期を迎えている現状を踏まえて、資源の活用と環境の保全という二つの意味で重要です。森林の保護を実際に行うのは市町村であるという実態を踏まえて、森林譲与税の譲与基準が市町村に九割向けられていることも適切であると考えます

029 行田邦子

日本共産党

○山下芳生君 私は、日本共産党を代表し、地方税法、地方交付税法の改定案等四法案に対し、いずれも反対の討論を行います。
……
 さらに、森林環境税は、東日本大震災を口実に導入し二〇二三年度で終了とされていた個人住民税均等割への上乗せ千円を、看板を替えて継続するものです。個人住民税の均等割は、所得税が非課税の人にも課税となる逆進性の高い税であり、国民生活を圧迫するやり方はやめるべきです

031 山下芳生

採決

038 伊達忠一

○議長(伊達忠一君)
 次に、森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律案の採決をいたします。
 本案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。
   〔投票開始〕

038 伊達忠一

039 伊達忠一

○議長(伊達忠一君)
 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。
   〔投票終了〕

039 伊達忠一

040 伊達忠一

○議長(伊達忠一君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数         二百三十七
  賛成           二百二十三
  反対              十四

よって、本案は可決されました。(拍手)
    ─────────────
   〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
    ─────────────

040 伊達忠一

最後に

上記のように、共産党以外はすべて、賛成の立場で討論している。

投票結果も再確認しておく。

投票総数237票のうち、反対票は14票。平成31年(2019年)当時、第198回参議院時点の共産党議員数は13人と思われる。これと、当該会議録PDFのp.18~19の出席者一覧と突き合わせると、共産党は12人出席と思われる。伊藤岳氏以外は出席していることを確認した。何度か見直したが、伊藤岳氏の名前を見つけられなかった。

共産党議員が造反するとは考えられないので、共産党は全員反対票、見落としであってもなくても大勢に影響なく、共産党以外の1人~2人が反対票を投じたとみるのが自然だと思う。そして、それ以外の全員が賛成票ということだろう。この規模感で、共産党以外の与野党の大多数が賛成している。

共産党が森林税の法案成立時に反対だったからといって、個別案件への賛否はともかく、共産党を支持することはないと明言しておく。その点、別記事に記したとおり。

成立後の各党の動きまで把握されている方が、成立後のおかしい点を批判をすることに対してまで、否定するつもりはないことを記しておく。たとえば、森林税との二重課税を指摘すること自体は何も疑問はない。しかしそれに託けて、成立の責任を与党や自民や岸田政権に求めるのはお門違いだと思う。

誤った情報のもとに誤った判断をすることを避けたい。だから、森林税の成立時の賛否状況も知らずに、与党だけに責任があるかのように扱う、与党批判に使う、そういったことに反発の気持ちを持つという話である。

情報を知ったうえでなお、評価が当方と異なる他者に対して、その考えを否定するつもりはないことを記しておく。


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