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「書きたいもの」は沼かもしれない
こんにちは、亀山真一です。
僕自身悪魔にとり憑かれたように書いていた『人生の切り売り』スピンオフの連載が終わりました。
宣伝用にしてはネタバレ上等でどうしてもビューやスキが伸びない作品でしたが、そんなことは最初から折り込み済みです。この短編集に関しては、特定の読んでほしかった何人かに届けば十分です。
……とはいえ、気になって本編に飛んでくれる方がいたら更に嬉しいです。ちょうど公式連載も第8回が更新されました。とっても切りのいいところで終わってますが、第8回であって最終回ではないのだからまだ続くと思います。
そしてこのスピンオフ、僕が好きすぎてまだまだ言及します。もういいわという方はぜひ作品の方へ進んでください。
この先はたぶん入院中でなければ身内とやったに違いない作品解説です。
神野みらい編『お姉ちゃんの彼氏』
本編を書いている頃は具体的な会話は何も考えていなかったのですが、みらい編を書くなら「悪魔を疲れさせる惚気」しかないでしょう。
ちょうど裏で美鶴さんが噛ませ犬や敵役などに「話が通じない人」を起用しようと頑張っていたところでもありますし「話が早すぎる人」の多い亀山の小説にも取り入れてみました。当人の視点は初めてです。
ちなみに今回、悪魔はみらいの篭絡に失敗していますが「たまたま目に付いた女の子をナンパしてみたけど彼氏持ちで引っ掛からなかった」のと同じことです。本気で落とすつもりがなかったため、悪魔であることすら明かしておりません。
そもそも悪魔は人間の強い願いに引き寄せられる存在であり、みらいの魂は悪魔好みではありません。タイミングや容姿やシチュエーションを改めて落とそうと思えば落とすこともできますが、割に合わないので今後悪魔が彼女に関わることはないでしょう。
藤島希枝編『私が私であるために』
逆に悪魔好みでロックオンされたのが藤島希枝です。本編との整合性を鑑み、願いを決めるまでに何度か悪魔との逢瀬を重ねるだろうと漠然と考えていましたが……具体的に彼女が何を求めているのか分からなかった結果こうなりました。
僕の友人が「藤島さんの強かさが結構好きなんですが、彼女ではナツメくんに勝てないんだろうなという諦念もあります」と感想をくれました。その通りです。
契約自体が成立しないため叶えることはできないけれど、悪魔が人間を不死身にすることも不可能ではない……というのは『最後のお願い』の方で匂わせておりました。この先彼女が辿るであろう結末は――僕の読者ならむしろ読みたかったりしません? リクエストされたら書くんですけどね……と、入院中の戯れに書き溜めていたらとんでもない文量になりました。
ちなみに天使や悪魔と交わると――という話は既に『天使と悪魔の育成日記』に書いております。僕がnoteに投稿した中で唯一自動振り分けシステムによってR指定されている作品だったりします。
掛橋護編『心に秘めた欲望』
プロット書いてた頃はもっといい奴だったんですけどね、本編書き上げたら悪魔と契約していることが判明したんですよ。なんて奴!
出会いが職場の社員と派遣なので、いつも通りに「いい人」対応をしたら「そういうの要らない」とばっさり切られたんだろうな、それが彼には新鮮だったんだろうな……と本編執筆時から妄想していました。おそらく掛橋の初めてはあすみに奪われているので、忘れられたことで初めてを奪い返せた彼は再会当初「都合が良すぎて怖い」と本気で思っていた気がします。段々とそんなことは言っていられなくなりましたが。
中短編くらいのスピンオフでたっぷり描くなら悪魔があすみの顔や声を使って誘惑する演出もあったんですが、そんな小細工は要らないかなと逆に男同士の絵面で遊びました。
ちなみに本編ラスト、悪魔の台詞は戯れではあるもののその気になれば彼女を殺せます。掛橋があすみから小説を取り上げたこと、あすみが悪魔に死ぬまで書き続けると宣言していたことで、小説家でなくなった彼女は生きているとは言えない状態でしたから。
高塚和彦編『俺にできること』
本格的にスピンオフ集を書き始める前に考えていた高塚視点は滝川透子編の内容に近い後日談だったんですよね。ただ、彼が悪魔と絡まないため3000字×5人分の連載に決めたところで方針転換しました。悪魔に「君の願いは?」と聞いてもらいたい。
しかし、本編との整合性を考えるとここでも悪魔は悪魔と名乗れません。それは困るな……と記憶を消すことにしました。本編で「力を使った」と話しているのでギリギリセーフでしょう。
高塚は悪魔にとって天敵みたいな存在ですが、決して特別な人間ではありません。本編で悪魔が千広に彼の思考回路を説明しておりますが、もっと端的に説明できないかな……と考えました。
高塚は自分が一番大事なのです。それも自己中心性や自己愛ではなく、自分の中で一番確かなものが自分自身だと思っているのです。だから魂を奪おうとしてくる悪魔には拒絶反応を示しますし、一見受け身で誰とでも寝るように見えて自分を安売りすることはない、独自の基準で客を選ぶ高級花魁のような男です。違うか。
滝川透子編『死してなお』
本来もっと長編で丁寧に描くはずだったものをギュッとさせた感があります。
相原悠李が将棋を指すこと、高塚が平然と悪魔に勝つこと、悪魔が姿形を変えられることなど、本編と他のスピンオフを読んだ後なら大丈夫だろうといろいろと流してしまいました。男性が苦手なことも本来もっと説明が必要でしたよね。
そんな中で一番重視したのは「相原悠李をどのように甦らせるか」です。もともと考えていたのはあの内容で契約し、ずるずる依存して千広の部屋に入り浸っているところを訝しんだ高塚に救出される流れでした。が、ギュッとしたら契約にも間に合ってしまったという……。
おかげでこのスピンオフ、5人分もあるのに契約のシーンが描かれたのは1人だけになってしまいました。藤島は後で落ちるとしても、滝川はホント想定外です。
……という感じで5人分です。いやあ、悪魔がいると色っぽい描写が増えますし、登場人物たちが自然と素直になるので楽しいですね。ホント大好きなんですが、しばらくは――何か良い契約内容を思いつくまでは――悪魔もお休みとなるでしょう。
前回『ツイテイナイ透の憂鬱』で透くんスピンオフを書いた時にも思いましたが、自分の好きなキャラクターってとことん語りたいのでキリがありません。ご存知の通り(?)黒い羊たちの話もまたいつか書くつもりです。
次は入院中のテンションを支えるため弱小野球部を……と思っていたのですが、たまたま友人が結婚するので「結婚祝いで何でも書くよ」とリクエストを募ったら「悪役令嬢!」と返ってきました。西洋ヒストリカルにひいひい言って「次は絶対現代日本!」とうそぶいていたはずなのに……。
というわけで、もの書き学校の先生が友人好みの設定を認めてくれたら美鶴さんの次回作は悪役令嬢ものになります。
そう! リクエストって一番テンションが上がるので、もし皆様も何かありましたらお気軽にコメントをお寄せください。