全国に先駆けて活動する御殿場市消防団女性部の歩み -御殿場市消防団女性部長 木村理絵-
今回、取材させていただいた木村理絵さんは、2022年5月に、静岡県が高根ふれあい広場中郷館(御殿場市)で開催した知事広聴「平太さんと語ろう」に登壇してくださりました。木村さんは、介護事業に従事する傍ら、御殿場市消防団女性部長として、市の女性消防団を牽引し、地域防災のための訓練や活動に取り組まれています。消防団女性部が立ち上がった当初は、業務内容が漠然としている状態でした。ゼロからスタートした御殿場市消防団女性部が、全国に先駆けて様々な活動を行うようになった経緯に迫ります。
木村さんの消防団活動
きっかけは3.11
木村さんが消防団に入ったきっかけは、2011年の東日本大震災です。震災直後に宮城県石巻市でのボランティアに参加し、その後も福島県へ行くなど計8回東北地方へ足を運びました。「ボランティアが来てくれることに泣いて喜んでくれる方がいました。」その出来事が印象的だったと語ります。その一方で、なかなか進まない復興など被災地の現実を感じたそうです。「自分も何かできないだろうか。」そう思っている矢先、御殿場市で消防団女性部を立ち上げる話があり、入団を決意しました。
ゼロからのスタート
木村さんは女性部立ち上げ当初から女性部長に就任し、活躍されてきました。「災害時における女性部の役割は後方支援となっていますが、当初は業務内容が漠然としており、仕事を考えて作るところからスタートでした。」と当時を振り返ります。
災害が起きたときに私たちに何ができるだろうか、女性だからできることはないだろうかと考えを巡らせて積極的に行動した結果、今の御殿場市消防団女性部があります。
全国に先駆けて行っている御殿場市消防団女性部の活動
御殿場市消防団女性部が全国に先駆けて行っている様々な活動から二つを紹介させていただきます。
①災害ボランティア本部の立ち上げ訓練への参加
御殿場市消防団女性部は、御殿場市の災害ボランティア本部が設置される御殿場市社会福祉協議会との連携構築を目的とし、毎年立ち上げ訓練に参加しています。
この訓練に参加するようになったきっかけは2019年の台風19号によって発生した小山町の土砂災害です。この災害で立ち上げられた災害ボランティア本部に、消防団が有志として参加しました。ボランティアの受付業務やボランティアが使う道具の準備・整備という活動に従事しました。このときボランティアセンターの人手不足問題を感じたとともに、この活動に女性部の活躍できる可能性を見いだしたそうです。
この経験を踏まえて、御殿場市社会福祉協議会と御殿場市で災害ボランティア本部設置時の連携について話し合い、調整を進めた結果、発災時は消防団女性部が災害ボランティア本部の組織編成に加わり、本部運営の活動をしていくことになりました。以後、消防団女性部は災害ボランティア本部の設置訓練に毎年参加することとなりました。
木村さんは、この活動を通じて得たものについて次のように教えてくれました。「災害ボランティア本部で活動するという女性部の役割が明確になり、女性消防団員の意識が高まったと感じます。団員の中には、災害ボランティアコーディネータの資格をとった人もいるんですよ!みんなやりがいを感じて消防団活動に取り組んでいます。」
②陸上自衛隊第34普通科連隊(板妻駐屯地)との定期訓練
御殿場市には陸上自衛隊駐屯地が複数あります。この特性を活かし、御殿場市消防団女性部では、そのうちの一つである第34普通科連隊(板妻駐屯地)と定期訓練を行っています。
第34普通科連隊との定期訓練を行うようになったきっかけは、小山町の土砂災害や熱海市伊豆山の土石流などの現場で自衛隊員と顔を合わせる機会があったことです。お互いに助け合う中でつながりができ、なにか一緒にできないかという話になり、定期訓練を行うことになりました。
定期訓練は、ロープの結び方や応急処置など内容を毎回変えて実施しています。災害時に動けるような人材になることが目標の一つです。しかし、団員のスキル向上だけでなく、この訓練にはほかの目的があります。
「災害時に現場で働く人たちの連携がとれていれば、やれることがもっとあるはず!そのためにも顔の見える関係が必要だ。」と木村さんは実際に伊豆山土石流の現場に訪れたときに感じたそうです。この定期訓練は第34普通科連隊と御殿場市消防団の顔が見える関係づくりに貢献しています。また、この両者にとどまらず、御殿場消防署や御殿場市危機管理課にも声をかけて訓練に取り組んでおり、御殿場市内の結束を高めています。
最後に
2011年に発足した御殿場市消防団女性部。わずか十年余りで全国に先駆けた様々な活動を行えるようになったのは、”木村さんを初めとする団員の積極的な行動”と”人とのつながり”があったからだと感じます。
「消防団女性部が起点となって、人と人をつなぎ、御殿場市の安全を守る」
木村さんと話をしているうちに、そのような彼女たちの姿が目に浮かんできました。今後も御殿場市消防団女性部の活躍に注目です。
関連する静岡県の取組紹介
昭和60年には県内に約26,000人いた消防団員が、現在は約17,000人まで減少しています。静岡県では、一定の要件を満たした消防団員を雇用する事業所の事業税を軽減する消防団の活動に協力する事業所等を応援する県税の特例に関する条例を定めています。
詳しくは、こちらを御覧ください。