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安政東海地震170年 ~南海トラフ地震に備えよう~
嘉永7年(安政元年)11月4日(1854年12月23日)に安政東海地震が発生し、今年で170年となります。地域で起きた災害を知り、南海トラフ地震から命を守るために備えるきっかけとしてもらいたいと思います。
安政東海地震とは?
嘉永7年(安政元年)11月4日(1854年12月23日)遠州灘の御前崎沖、南海トラフに沿うプレート境界を震源とするM8.4の巨大地震が発生し、伊勢・志摩から伊豆に至る東海地方沿岸沿いの広い範囲に大きな被害を与えました。特に、震害が最も大きかったのは沼津から天竜川河口にかけての静岡県沿岸一帯でした。津波は土佐湾から房総半島沿岸にかけて広い範囲を襲い、特に被害が大きかったのは、熊野灘沿岸、伊勢・志摩、遠州灘沿岸と伊豆下田でした。
当日は午前9時頃地震が発生し、数日間は強い余震が続いたといわれています。
愛鷹山南東麓の小林では山麓斜面が広い範囲で陥没し、富士川流域の白鳥山、稲子川の池ノ谷などで大規模な土石流が発生して、川を一時せき止め、やがてそれが崩壊して下流に水害をもたらしました。また、興津川上流をはじめ、全県下でおびただしい山崩れが発生しました。この地震に伴う火災も多く、三島・吉原では大火となりました。これについては地震発生の時刻と乾燥した冬季という地震発生の季節が大きく関係しています。
文書参考:静岡県「静岡県史 別編2 自然災害誌」(1996年)
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ディアナ号
嘉永7年(1854年)10月15日、ロシアから来港したディアナ号が下田に入港しました。前年、長崎にて条約交渉を行いましたが、まとまらなかったので、再び日本に来ました。
条約交渉を始めた翌日に安政東海地震が起こりました。下田の町は、地震と津波で大きな被害を受けました。下田湾に停泊していたディアナ号も、津波のために船体が壊れ、舵も失ってしまいました。修理のために戸田(現沼津市)に向けて出航しましたが、強風や大波のために、戸田の港へ入ることができませんでした。海上をさまよい、田子の浦の方へ流されてしまいました。安政元年11月27日(1855年1月15日)未明に宮島沖で錨を下ろしましたが、船内に海水が入り込み、沈没寸前になってしまいました。
ディアナ号の乗組員を助けようと宮島村をはじめ田子の浦地区の地元民が集まり、決死の救助活動を行いました。約500人の乗組員を助けました。自分達も地震で大きな被害を受けたのにもかかわらず、食料や衣服の提供など、上陸した乗組員を温かくもてなしました。この人間愛に基づく行為は、高く称賛されています。
文章参考:ディアナ号物語り
監 修:元富士市博物館長 加藤昭夫氏
発 行:田子の浦港管理事務所
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安政見聞録
安政期の一連の地震は多くの書籍や文書に記録されています。そのひとつである「安政見聞録」は安政江戸地震の際のエピソードが集められています。
中心的な話題は地震発生後の庶民のさまざまな行動の話などが載っています。
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服部保徳著 「安政見聞録」 三島市郷土資料館所蔵
文章参考:「歴史の小箱第291号」三島市郷土資料館ホームページ
富士川河口断層帯
安政東海地震により「蒲原地震山」「岩本地震山」など土地が隆起した伝承があります。富士川河口断層帯は富士宮市から富士市岩本をへて静岡市清水区由比町及び蒲原町に及ぶ活断層帯です。断層の西側「静岡市方面」が東側「富士市市街地側」に対して相対的に隆起する(逆)断層で、さらに断層帯は、駿河湾の中まで、また北方も山梨県方面に延長している可能性があります。地震の後富士川の洪水は西側に流れ出して富士市側加島村など河口部の村々で大きな被害が出るようになりました。
文章参考:静岡県地理情報システム「地震災害史 No.65富士川河口断層」
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東部地域の主な被害
三島市
三島宿は、安政東海地震による強い震動と火災のため、ほとんどの建物が被災し、宿場全体が壊滅的な被害に遭っています。宿内の被害状況は、問屋世古六太夫から幕府の道中奉行へ提出した「地震二付道中御奉行所江御注進之写」から宿内総家数1,078軒に対し、潰れた家は986軒で家屋の91%が全壊していることが分かります。
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文章参考:「歴史の小箱第323号」三島市郷土資料館ホームページ
沼津市
沼津城内では、御殿、蔵など全半壊し、城下の旅籠屋町では、まれに残った家も傾いていました。また、道路に地割れが生じ、領分村方で4,939戸の潰家が出ました。大岡村では水が4~5尺噴上げたそうです。
津波被害では、内浦湾の湾奥の重須・長浜・三津・多比・江ノ浦などの集落で70~80%の家が流されました。江梨から我入道までの集落全体で総戸数1,074戸のうち485戸が流失しました。また、5人と数人の死者も発生しました。戸田では総戸数593戸のところ、流失24戸、潰家81戸、大破33戸の被害を受け、そのため30人の水死が出ました。古記録によると大浦での津波の到達時間は地震発生後5分以内でした。
文章参考:静岡県「静岡県地震災害史」(1988年)
伊豆市
土肥の津波被害は92戸のうち46戸浸水、流失2戸、水死13人が生じました。八木沢では10戸流失し、水死1人の記録があります。
文章参考:静岡県「静岡県地震災害史」(1988年)
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裾野市
茶畑村の被害は居宅全壊82戸(60.3%)、半壊4戸(2.9%)、隠宅全壊4軒、土蔵大廊5軒、小家104軒でした。
文章参考:静岡県「静岡県地震災害史」(1988年)
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富士市
中ノ郷村、岩渕村の家屋被害は大きく、特に富士川の河流は、この大地震の前までは、蒲原宿地先の枡形付近を流れていましたが、大地震の時岩渕村下で地殻が激しく変動し、富士川の本流は東に方向を変え、中ノ郷村の前は、それまで富士川の水が来ていたのがすっかり干上がって白き河原になってしまったといいます。東に方向を変えた富士川の本流は、加島平野の開発によって成立した新しい村である森下、宮下、五貫島、三軒屋(正確には三四軒屋か)河成島の方向に向かって流れることになったため、これらの村々では以後大変な苦渋を味わうことになったそうです。
文章参考:静岡県「静岡県史 別編2 自然災害誌」(1996年)
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津波が発生する原理
地震から命を守るために
安政東海地震は南海トラフ巨大地震の想定震源域内で起こった地震です。南海トラフ地震臨時情報や静岡県の施策について、詳細を下記のリンクから御覧ください。
南海トラフ地震臨時情報について
静岡県の施策
身近な備え
地域で起きた地震を知り、防災に興味を持ち、命を守るための備えをするきっかけとなれば幸いです。