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美しい“ふじのくに”まち・ひと・しごと創生県民会議東部地域会議

美しい“ふじのくに”まち・ひと・しごと創生県民会議とは

 令和5年1月13日にみしまプラザホテルにて、美しい“ふじのくに”まち・ひと・しごと創生県民会議東部地域会議を開催しました。
 本会議は、喫緊の課題にもなっている人口減少対策として、静岡県が策定した「美しい“ふじのくに”まち・ひと・しごと創生総合戦略」について、産業界・行政機関・学術機関・金融機関・労働団体・報道機関等の多方面にわたる代表者から、御意見・御提言を頂戴し、今後の県施策に反映させていくことを目的として例年開催しています。
 今年度は、「子育て・福祉・産業・教育分野の現場から見た地方創生」をテーマに据えて、5団体の構成員の方から取組発表をしていただき、各分野の実情に応じた地方創生施策について御意見をいただきました。
今回は、その発表内容の概要を御紹介します。

らしく 楽しく つないでく ~子育て支援からうみだす社会デザイン実践報告~

NPO法人母力向上委員会 代表理事 塩川 祐子 氏

 コロナ禍において、子育て支援が継続はしているものの非対面化が進むことで、実態としては縮小してしまっており、母親の孤立化が進んでいる。少子化もさらに加速化している中で、子育て世代に対する対面とオンラインの両方のハイブリッドな支援が必要。社会全体で子育て支援をしていくという雰囲気や取組が不可欠となっている。また、男性の育児休暇についても、職場と家庭との間に様々な課題があり、マタニティ講座や男性の家事育児参加促進の企業研修等を通じ、当事者をとりまく環境、特にこれからの子育て世代に子育ての現状を伝えていくことも大切。
 点だけでなく面で支えていくことにより、子育ての土台を安定させ、様々な世代が活躍する地域を作り上げていくことに繋がると考えている。県や市町においては、それぞれの施策に丁寧に取り組んでいただいているが、その施策の継ぎ目を大事に考えて欲しい。例えば、子育てしながら就労するにあたり、企業側が受け皿を用意できるための支援があるかなど、子育て世代の目線で各部署間で連携してチェックを行って欲しい。

インクルーシブ保育の現場について

社会福祉法人富岳会 理事長 山内 剛 氏

 インクルーシブ保育(※)により、子どもたちは人にはそれぞれ違いがあることを知ることができ、年中、年長にもなると、周囲を見る目が育ち、協力や助け合いなどの人との関わり方を自然と身につけることができる。これが、性別や年齢、国籍、障害の有無などの違いを受け入れることにつながり、人を差別しないことにつながる。
 今の日本の教育制度では、特別支援学校が隔離された場所にあることによって、障害のある子どもたちとあまり接すること無く、義務教育や高等教育を終えてしまう。幼い頃から障害のある子や外国の子などと接することで、偏見や差別がなくなり、いじめの無い社会へつながっていく。また、障害のある子や外国の子も、ほかの子どもたちとの違いから様々な刺激を受けて、成長につなげることができる。これこそが、赤ちゃんからお年寄り、障がい者に至るまでみんなが笑顔で幸せに暮らせる地域社会の構築だと考えている。

※インクルーシブ保育とは・・・子どもの国籍、年齢、発達段階、障害の有無などの違いにかかわらず、どのような背景を持った子どもも包括的に受け入れる保育のこと。

静岡県東部の鮭鱒養殖業の現状と展望、政策評価について

富士養鱒漁業協同組合 代表理事組合長 平林 馨 氏

 水産養殖業が抱える地域社会課題の一つに、養殖経営を改善させる人材の不足があげられる。静岡県には、水産高校や漁業高等学園が存在するものの、卒業後にすぐ即戦力とはいかなく、就職後に3~5年勉強やOJTが必要になり、就職のミスマッチが発生する場合もある。これを解決するには、養殖も経営も分かる人材や専門業界以外も調べればどのような形態となっているのかなどが理解できる高度な人材が必要になり、教育機関としても、高校や大学でより実践的なカリキュラムを提供していく必要がある。業界と教育機関が協働して人材を育てていくことをしなければ、高度な人材を獲得するために、就職後から3~5年必要となってしまい、地域の中小企業等の経営体力が奪われることとなってしまう。
 水産養殖業は世界的に成長性のある産業だと言われており、鮭鱒養殖についても、国内サーモン需要を海外産から国内産に転換できる兆しが見えているが、この需要を獲得すべくまっさきに動いているのは、外資系企業というのが現状。静岡県としても、もっと水産養殖業にフィーチャーして世界に誇れる鮭鱒養殖業、ひいては水産養殖業を作り上げていくべきだと思う。そういった活動が、地域活性化につながっていき、ローカル産業にも波及効果が広がっていくものだと考える。

東部地域に適した主伐・再造林方法の模索

株式会社森ラボ 代表取締役 鈴木 礼 氏

 静岡県東部地域における林業の現状として、「主伐・再造林(※)」とい う作業が進んでいないという事実がある。原因としては、一つに主伐・再造林を行っても森林所有者自身が儲らないのではないかという不安を抱えていることがあげられる。これに対しては、国や県において、様々な施策や補助金等で支援をいただいており、その不安は徐々に解消しつつある。
 もう一つの大きな原因としては、担い手不足があげられる。林業の中でもこの造林作業は、儲らない上に最も過酷な作業のため、わざわざ参入しようという人が出てこない。また、東部地域ではこれまで間伐中心で進めており、間伐に必要な立木伐採や丸太搬出する木材生産機械に投資をしているため、その機械を止めてまで儲らない造林作業をしたくないという林業事業体の判断も仕方ないと感じている。
 一方で、主伐・再造林は林業を営んでいく中で必要な作業のため、ドローンの活用や苗木の開発などの新しい技術を生かした「三島モデル」というものを現在構想しており、実証実験もスタートさせている。この三島モデルが確立できれば、東部地域どこでも概ね活用できると考えているため、このような技術を県としても発展、確立させていき、森林所有者に間伐という選択肢だけではなく、主伐・再造林という選択肢も提示できるように支援していただきたい。

※主伐とは・・・樹木の一部を伐採し、森林の本数密度を調整する間伐と異なり、木材としての利用を目的に木を収穫、伐採すること。
※再造林とは・・・主伐をした後に、残った枝葉などを整理し植栽を行うこと。

「ふじのくに」地域づくりと国際バカロレア

加藤学園暁秀中学校・高等学校 バイリンガルコースディレクター ウェンドフェルト 延子 氏

 本校では、「国際バカロレア(※)」という制度を取り入れており、全世界に通じる高度な教育をプログラムとして実施している。国際バカロレアでは、アカデミックな高度教育に加えて、全人教育が必要となってくるため、学習したことを社会に生かす地域貢献の活動にも力を入れている。環境問題や地域学習、商店街の活性化といった生徒たちが興味を持ったことに対して、地域の方たちとつながって活動をしている。このような活動をすることが、地元への愛着やシビックプライドにつながり、地元を離れた学生がまた地元に戻ってくる動きにもつながると思う。
 現時点でも、様々な形で地域活動を行っているが、より地域や社会に出て、様々な方たちと色々な形でつながっていきたいという想いがある。しかし、学校内だけで地域にどのような課題や問題があるのかを知ることには限界があるため、ぜひ皆様の御協力をお願いしたい。

※国際バカロレアとは・・・国際バカロレア機構が提供する国際的な教育プログラムのこと。世界の複雑さを理解して、そのことに対処できる生徒を育成し、生徒に対して、未来へ責任ある行動を取るための態度とスキルを身につけさせるとともに、国際的に通用する大学入学資格を与え、大学進学へのルートを確保することを目的とする。


静岡県では、いただいた御意見・御提言をもとに県政への反映を目指していきます。