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住んでみたい家 #4 ダイマクション・ハウス
ダイマクション・ハウスはバックミンスター・フラーによって1946年に考案されたモバイルハウスです。フラーは数多くの先見性のある思想を示しましたがダイマクション・ハウスもそんな先見性に満ちた試みの一つでした。モバイルハウスを想定して設計されておりプレハブ工法で輸送や設置が容易、従来の住宅よりも圧倒的に短い工期で価格も安く抑えられていました。今でこそ珍しくもない形式ですが1940年代からすると時代を先取りしたコンセプトです。
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また、ビジネスモデルはアレクサンダー・ベルの電話通信サービスを参考にしたと言われいます。ベルは電話機自体ではなく通信サービスを売っていた、住宅も家という建築物を売るのではなく住むこと自体の居住というサービスを売るべきであるとしたのです。これは現代の住居やオフィス、車、アプリケーションのシェアやサブスクリプションのサービス形態にも似たものがあり非常に先見性のある視点と思われます。
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中心の一本の柱で屋根を支持する構造で外壁はアルミ製。風圧から内部を守る構造の曲線的なシルエット。工業製品的な設計とデザインは住宅を「生活のための機械」と捉えたフラーの思想が伺えます。未来の人類のための理想的な住居を目指して構想されたダイマクション・ハウスでしたがスケジュールの遅れや経営の問題などからプロトタイプが一つ作られたのみでした。しかしキッチンやトイレ、シャワーなど住むための機能を備え、大量生産可能で輸送や建設が容易などの設計思想は後の住宅建築に大きな影響を与えていることは間違いありません。
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この記事を書くきっかけにもなった中銀カプセルタワービルや他の記事で紹介したFUTURO、TETRODONなどにもその影響がみられます。そういった意味では私の好きな家や建築の元祖的な存在です。ダイマクション・ハウスには私の好きな家の要素がまとまっているのかも知れません。
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私の好きな家の要素とはなにか?レトロなプレハブ住宅や個性的な外観を持った建築でしょうか?もっと大きな括りで見るならば何か思想があり設計や構造、外観デザインがその思想をよく表現していることではないかと考えました。ダイマクション・ハウスはより少ない資源で最大の効果を得る、より多くの人に快適な住居サービスを提供する、そうしたフラーの思想が材料であったり構造、設計に反映され見事に一つのデザインとして形になっています。思想、コンセプト、デザインにブレがない感じが良いのです。
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