黄色い花の咲く前に
ミモザの世話をすることになった。
言われた通り、毎日12Lの水をたっぷり。
本当は、12Lなんて多すぎるからちょっと嘘だと思ってた。
手元にじょうろもなかったので、バケツや小さなジョウロで
チョロチョロ水をあげるようにしていた。
本当は、時々面倒臭いので水をあげていないのを知らないふりをしていた。
台風の日は、心配なので室内に置いたままにした。
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ある時から、ものすごく葉が落ちるようになった。
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水をあげるのが大変なので、中にしまわなくなった。
雨の日は、ラッキーだなと思った。
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雪のように葉を落とした次の日、
急に葉が茶色くなった。
怖かった。
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こんなに簡単に枯れるなんて思ってなかった。
本当に枯れるから、扱いに気をつけてねと一声かけてもらっていたら
心底大切に、面倒なんて思わずに毎日水やりをしてたと思う。
意外と大丈夫でしょう。
なんだかんだ、また、すぐ生えてくるでしょう。
そんなふうに思っていた。
当たり前すぎて、生き物ということを忘れていた。
*
こんなにあっさり枯れてしまうのか、と思う。
この大きさまで大きくなった時間に想いを馳せ
いろんなものに申し訳なく思う。
そうして、私のこの責任感のない適当な構え方を呪った。
どうして、
どうしてこんなにいい加減なことしかできないんだろう。
私は、いつからこんな私になったのだろう。
*
この木はなんの木?
と聞かれるたびに、まだ見たことのない黄色い姿を想像しながら
少し自慢げに、ミモザって言って、1月には黄色い花を咲かせるの
と説明していた。
きちんと世話もできない私には、
黄色い花を見る資格がなかった。
悲しい。
この悲しさをどうしていいかわからない。
見ることのなかった黄色い花を、そっと燃やして、煙を見たような気がして、供養なんてできるのだろうか。