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君に贈る火星の
まだ世界が若く、万物がはっきり定まっていなかった頃から私たち夫婦の仲はこじれていた。
無理もない、私の女性関係が次々に公になり妻の目に触れずにはいられないのだから。
不機嫌な妻の機嫌を取るため、私は妻にまだ名の付いていない星に名前を付けることを許した。
命名権という贈り物を受け入れた妻はうっすらと笑い言った。
「なら、あの赤い星を『マーズ』と名付けるわ」
その瞬間私は途轍もなく冷たく残酷な妻の復讐心に焼かれ、同時にどれほど妻を傷つけていたのかを知った。
とても耐えられない。
かの美しい女神ヴィーナスの愛人の座を射止めた我が息子が、永遠に私の目の前を、彼女との子を従え私よりもずっと彼女の近くで天を巡るなんて。
その星を見るたび私は嫉妬の炎に炙られ心をかきむしられる。
妻は美しく微笑んで言う。
「天を見ても地を見ても、世界はあなたの愛した女たちの名で満ちている。
エウロパ?レダ?
私はどこにも逃げ場がないほどよ。
だからあなたも、ね?」
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この企画に参加する作品です。
補足
星の名がギリシャ・ローマ神話にちなんでいることを下敷きにした話ですが、ジュノー(ヘラ)が火星に自分の息子・マーズの名を付けたという神話はありません。
神様の名前、ローマ神話よりギリシャ神話の名のほうがカッコいいと思っているのですが、文字数と一般的な浸透度でローマ神話の名前を使いました。
ジュピター:ゼウス
木星
ジュノー:ヘラ
太陽系の小惑星帯にある小惑星のひとつだとか。神々の女王なのにちょっと気の毒。
マーズ:アーレス
火星 ゼウスとヘラの息子。ヴィーナスとの間にフォボスとダイモスをもうける。
ヴィーナス:アプロディーテ
金星 美の女神 彼女の息子エロスはアーレスの子だとかゼウスの子だとか、他にも諸説あり。彼女自身ゼウスの子だとも別の出自だとも言われ、んまぁ!である。
ちなみに彼女の夫は、愛人アーレスの兄弟ヘパイストス んまぁ!
Wikipediaによると「美の女神アプロディーテーは人気の高い女神であったからか数多くの神話に登場し、多くの子どもを生んだが、その父親は子どもの数と同じくらい多かった」そうです。中でもアーレスはアプロディーテーの愛人の地位を確立している模様w
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字数制限のある文章を書くのに、新機能「ルビ」は強い味方ですね。ある意味おきて破りの作品も見かけるほどでしたw
ルビ機能を駆使すると相当遊べるのではないでしょうか。
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