IT業の税務。SESで準委任契約のエンジニアを拘束しすぎてない?
税理士の渋谷です。
外部の人間を指揮監督するのはNG
SESで派遣されるエンジニアとは雇用契約を締結していない企業も多いと思います。
この場合、外部の事業者(個人事業主のITエンジニア)に外注しているという形になりますが、ここには法務・労務・税務の3分野で論点がてんこ盛りです。
何でもかんでも業務委託(外注)をやたら勧めるような情報発信をしている税理士もいますが、私が観測する限り彼らは大体リスクについては触れていません。
外注するという選択肢を取った時点で、そのエンジニアに対して何か拘束したり監督したりするといったことは原則的にはNGです。
もし拘束や監督をしてしまっていてその問題が顕在化(給与認定)した場合には、法務(エンジニアと法的トラブル)・労務(本来納めるべきだった社会保険料等の追徴)・税務(消費税仕入税額控除否認と源泉所得税の徴収漏れ)の3分野においてトリプルパンチを食らうリスクがあります。
偽装フリーランス防止のために
要は「外注したエンジニアは独立した自営業なのだから自由に動ける状態になっていなければならず、エンジニア側も自営業なのだからSES企業におんぶにだっこではなく自身のリスクで事業活動をしなければならない」のようなイメージでいて頂ければと思います。
以下の資料は大変読みやすいものです。「偽装フリーランス」は聞きなれない言葉かもしれませんが、「実態としては雇用状態になっているにも関わらず、外注の形式を装っている」状態のことです。怖いのは事業者本人が自覚なくその状態になっていることもある、という点です。
発注者側(SES事業を運営している会社)は当然に知っていなければならないことが書かれているので必読ですが、受注者側(派遣されるITエンジニア)も自営業の一般常識として知っておくべきです。
一律ルールを設けることは難しい
この「給与か外注費か」問題は昭和の時代から存在する伝統的なテーマで、昔は1人親方(建設業)やホステスなど夜職の業界でよく出てきたテーマでしたが、最近は独立系コンサルタントやITエンジニアのような職業でも生じます。
昔からある伝統的なテーマであるにも関わらずいまだに問題になりうるということはそれだけ判断が難しいということです。
例えば、「仕事道具(PCなど)の貸与」については、セキュリティの問題から派遣先企業が指定したPCを使わなければならないなど合理的な理由が存在するときもあります。
「指揮監督」についても就業規則で拘束していたら一発アウトになる可能性大ですが、一体どこまでが「指揮監督されている」と言い得るのか、何か具体的なものさしがあるわけではありません。
つまり、一律に「これは黒、これは白」という決め方ができるわけではなく、実態に合わせてグラデーションで判断していかなければならない(しかも厄介なことにその答えを誰も持っていない)ということです。数年後に給与認定されたりしないように、「外注であること」を客観的に説明できるような事実を積み上げておくことが最重要です。