【毎週ショートショートnote】「運試し擬人化」(410字)
正月に神社でおみくじを引いた。
凶だった。
その夜、家のチャイムが鳴った。
ドアを開けると髪の長い陰鬱そうな少女がいた。
「凶子です、どうぞよろしく」少女は家に入るなりそう言った。
凶子が言うには、神社の新サービスで出たくじを擬人化して送ってくれたのだという。
「私なんかがいたらご迷惑でしょうがどうぞよろしく」凶子は申し訳なさそうに言った。
凶子との生活が始まった。
就職に失敗し、付き合っていた彼女に振られ、金を貸した友人には逃げられた。
「私のせいで……」そうやって落ち込む凶子を、俺は「最初からそういう運命だったのさ」と慰めた。
そのように最悪だが悪くない一年が終わり、別れのときが訪れた。
十二月三十一日。
「私のせいで散々な年になってごめんなさい」凶子は玄関先で深々と頭を下げた。
「そんなことはない、おかげで楽しい一年だった」俺は引き留めるが、凶子は去っていった。
翌日、俺は神社でおみくじを引いた。
凶だった。
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