白鳥ラナエル (CV.絢瀬絵里 (南條愛乃))「斯くも憂美な日となりて」~狂気のキャラソン×北欧メタル

「斯くも憂美な日となりて」白鳥ラナエル (CV.絢瀬絵里 (南條愛乃))

数年前、どこかで見つけたこの楽曲にノックアウトされてしまった。

何度聴いても、完璧なまでに北欧メタルなのだ。fripSideのボーカルとしても活躍する声優・南條愛乃さんのキャラソンであり、「ラブライブ!」のμ'sメンバー、絢瀬絵里が「神様と運命革命のパラドクス」という作品の白鳥ラナエルを演じて歌唱する、という二重構造のキャラソン楽曲。
わからない。どうして急にここまで良質な北欧メタルがキャラソンから出てくるのか、ほんとうにわからない。
可能な限り分析してみるが、最終的にこれは主観になっちゃうんだろうなあ。

北欧 of 北欧~「っぽさ」まみれ

イントロのチェンバロ(ハープシコード)がすでに反則。反則だが、ここまでクラシック「っぽい」かつ北欧メタル「っぽい」演奏を頭から繰り出してくるバンドを、私は聴いたことがない。
この「っぽい」が非常に重要なのだ。なぜなら、北欧メタル感とはクラシックのルーツが必須というわけではなく、「クラシックっぽい」を積み重ねることによって醸成されるものだから。そもそも「北欧メタル」という分け方は日本人の主観でしかない。それにしても、10秒近くのイントロで雰囲気を作るだけでも奇跡。

この雰囲気に一番近いのは、フィンランドのメタルバンドStratovariusの「Black Diamond」。しかし、イェンス・ヨハンソンの演奏をもってしてもかなわない。

さらにそこから繰り出されるリフが強烈すぎる。これは、スウェーデンのネオクラシカルメタル、Yngwie Malmsteen「Motherless Child」から取っていると思う。

この楽曲はキーが高すぎてヴォーカルのヨラン・エドマンが歌えず、キーを下げてテープ早回しで収録したといわれているいわくつきの楽曲でイングヴェイの北欧的哀愁力が全開に溢れた名曲。1:57-のギターソロがメチャクチャなことになっているのでも定評がある。あんなフレーズ、人間が弾けるのか?

歌が入るとさらに北欧みが上がる。イントロのメタル感が一気に晴れて、南條愛乃さんのアイス・ブルーな歌声とチェンバロがやってくる。この空気はマジで北欧。そこでしっとり落ち着いたかと思えば、Angraのアキレス・プリースターを思わせる異様に鋭い連打を決めるバスドラと、ツボを押さえたエレキギターが、レールガンのように北欧世界を疾走させてゆく。打ち込みだからといってなんでも屋っていいというものではない、マジで。こんなの演奏できないでしょ。BABYMETALより理不尽みが強い。

サビもまた綺麗に流れるんだが、存分に北欧メタル。これもまたメロディラインがどことなくStratovariusっぽくて頭を抱える。ズバリな曲が出てこないけど、絶対このメロディ歌ってるよ、ティモ・コティペルト!!

爆裂する間奏~単調なペダル奏法の魔力

間奏がまた恐ろしいのだ。
シンセフレーズが全部、同じ音をベースとして残しながら展開する、ペダル奏法で演奏されている。これはもう、意図的にクラシックを、否、北欧メタルをやっているとしか思えない。まさに先述の「Black Diamond」がペダル奏法のリフを入れているが、ここまで執拗に弾き続けるソロは稀だ。キャラソンの無法地帯感が存分に発揮されている、凄まじい間奏だ。

それと同時に、展開としては非常に単調、16小節の同じフレーズを二往復するだけで幅が狭いことにも注目したい。ペダル奏法はもともと単調になってしまうものだが、普通のバンドなら二周目に上ハモを入れたり、同じフレーズでも楽器を変えてバトルさせたりするだろう。ところがこの曲は、二周目のバスドラが後拍から毎拍になっているだけで、ほぼ変わらない。並みのメタルバンドだったら、きっとこんなコテコテなソロを演奏する気は起きないだろう
逆にこんなソロを演奏できるのは、イタリアのメタルじゃないかな。C級メタルバンド(褒め言葉)のKaledonが、ギターとキーボードのユニゾンでそれっぽいフレーズを弾いている(3:20-)。

ニコニコ動画だと「教則本のレッスン」なんて突っ込まれてるフレーズで、実際非常に味気ないソロパートといっていい。
Stratovariusだとインスト曲「Stratosphere」がそれっぽいが、やはりここまでのクサさは出ない。

「斯くも憂美な日となりて」は、わかっていてその上を行く。メタルらしさを捨ててもクサさを取るのだ。それを考えると、この楽曲のソロは、北欧よりメタル、イタリアよりメタルというわけで、もう世界最強レベルのメタルとは言えないか?

結論

いろいろ挙げたが、全体としてStratovariusの創始者・ティモ・トルキの魂しか感じない楽曲だった。これをラブライブ!楽曲ではなくラブライブ!登場人物名義で別作品で歌うキャラソンにぶちこんだランティスは狂っている

作曲者は、Arte refactの原田篤さん。いったいなんてことをしてくれたんですか(褒め言葉)