2023.08.05 花火

 今日は大きな花火大会が各地で開催されていることは知っていた。家から数駅の街でも催されるらしく、たまたま夕方前に妻とふたりでその駅に立ち寄ったときには、駅内はもちろん、近くの商業施設も厳戒態勢で数年ぶりの花火を楽しみにしている大勢の人たちを迎え撃とうとしていた。

そんな状況を尻目に家路についた。今日も蒸し暑い。汗が噴き出る。家に着くなり、シャワーを浴びた。夏のシャワー後は格別に気持ちがいいと、さっぱりした気持ちで床に寝転んだ。

・・・居眠りから、ふと目覚めるとすっかり暗くなっていた。カーテンは開いたままだった。妻もソファーで寝ていた。

少しぼーっとしているとドンッ、ドンッとかすかに聞こえた。どうやら花火大会が始まっているらしい。ベランダから見えるか?と何気なく窓を覗いてみると、2階建ての一戸建ての屋根の空の色がほわっ、ほわっとかすかに赤や緑に変わることに気がついた。ここからも見えるかも、妻を起こして、ふたりでベランダに出た。

しばらくかすかに色が変わる夜空と少し遅れてくる音だけを眺めていると、屋根から光が突き出してきて、パッと花開いた。「見えた!」と妻が言うと、ドンッと聞こえてきた。その後も窓の明かりがついている一戸建てと電線をメインに時折見える花火を眺めた。

数分立つと音が止んだ。夜空に雲のように白い煙が漂っている。このパートは終わりのようだ。ふと、妻が「近くの駅って、あっちの方向じゃない?こっちは海辺のほうだよ」。どうやら、海辺のほうの知らない花火がだったらしい。

一度、部屋に戻りゆっくりしていると再び音が聞こえ始めたのでベランダに出た。今日は風が強く、真夏の夜には珍しく夜風が気持ちがいい。

しばらく眺めていると、何発も連続で低い音が聞こえてきた。夜空の色もさっきより頻繁に切り替わる。どうやらフィナーレのようだ。最後は特大の花火が見られることを期待したが、電車が通り過ぎる音が聞こえてきた後は、いつもの夜になった。

さっきまで目の前の一軒家に隠れたはるか向こうの会場にいる大勢の人たちはもちろん、私たちのようにこそこそとしている人たちが同じ花火を見ていた。夜空の低くて大きな雲よりずっと上にはほとんど満月に近い月がいつものように輝いていた。

今日もベランダからは星がほとんど見えない。


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