大佐に手紙は来ない / G・ガルシア・マルケス 感想
『ママ・グランデの葬儀(集英社文庫)』に収録の中編「大佐に手紙は来ない」の感想を簡単に書きたいと思う。
文庫本裏表紙にこの作品の紹介として、「喘息病みの老妻と恩給のくるのを待ち続ける老大佐の日々を偏執的とも言える簡潔な文体で描いた」とあるが、まさにこの簡潔な文体によって、恩給や軍鶏といった寄る辺ないものにすがる大佐とそれに長年付き合っている妻との鬱屈とした貧しい生活が、レンガがひとつひとつ積みあがっていくように立ち現れてくる。百年の孤独のような即物的かつ超現実的な表現はない