HAPPY ENDie 最後の主人公は誰なのか
THE GREAST SHOW-NEN(朝日放送テレビ)
Aぇ! groupが毎月新しい舞台に挑戦して1回きりの生の公演に挑む番組。
第10回公演は壱劇屋さんとコラボした「HAPPY ENDie」
パントマイムを取り入れたSFミステリー風の物語。これまでのどの公演よりも難解であったと思う。
視聴者も回を重ねるごとに一つー疑問が解決されるとその倍の謎が生み出される。
そんな複雑な物語は考察がTwitterに溢れ、毎週頭を使っては物語の芯を捉えようと試みた。
ここからは全話を通して分かったこととそれを踏まえた超個人的な考察(出すのが遅い)
相関図
第二週(1月29日)
ロングコートの男が紙と戯れるところから舞台は始まる。
ロングコートの男が登場人物たちを操るようなパントマイムでOPが進む。
登場人物が物語の舞台となるコンビニに置かれ、ロングコートの男が戯れていた紙をくしゃくしゃに丸めてゴミ箱に捨てる。
すると、犯人がモトムを人質に取り、脅している。
動機は「立ち読みを注意されたこと」らしい。
コンビニ店員のユウキは警官やジンタの静止を振り切り、犯人の前で土下座をして謝る。
犯人はそれをきっかけにユウキを刺し殺した。
犯人は「俺が殺したんじゃない」と繰り返し、親友を目の前で刺されたジンタは犯人を責める。
犯人を責めている間にジンタ、警官、救急車を呼んでいるモトムの動きは細切れに。
犯人のみが自由に動ける。
犯人は「まだ終わりたくない」と叫びながらコンビニの壁をすり抜け消える。
ジンタと警官は壁に隙間のようなものを見つけ、ジンタはユウキを救うために犯人を追うことに。それに着いていく警官。モトムは消える2人に戸惑う。
2人が抜けた先には白い枠のようなものが浮いており、その枠の向こうに殺されたはずのユウキが。
さらに、白い枠を通り抜けモトムが現れる。
モトムはユウキに喋りかけるがユウキの反応はない。
しかし、会話が続いているかのようにモトムは喋り続ける。
ここで、モトムはユウキの幼馴染だったことが判明するが、ジンタいわく、ユウキは幼な頃は転校が多く、幼馴染はいないはず。
さらに2人は犯人を見つける。
犯人は紙と封筒、ナイフを持たされ走り出す。
犯人を見つけたジンタと警官は確保しようとするが、何かに邪魔をされ取り逃がす。
その後シーンは二度目のコンビニに。
今度はモトムが雑誌の立ち読みをユウキに注意される。
そこに2人に追われた犯人が駆け込んでくる。
最初と同様、モトムを人質に取り、今度は身を挺してモトムを解放したユウキがまたも犯人に刺される。
そこでまた動きが細切れに。
犯人は「立ち読みくらいで注意してきたのがウザい」と言い、もう一度壁の向こう側に。
今度も救えなかったジンタは警官と犯人を追う。
第二週の疑問点
一度目と二度目で微妙に状況が違うのは何故か
犯人だけ細切れにならないのは何故か
ロングコートの男は何者か
ユウキとモトム、ジンタの関係性は?
第三週(2月5日)
犯人を追って壁の向こう側に進んだ2人はユウキを発見。枠を乗り越えジンタはユウキにコンビニのバイトに行かないように説得。
ユウキはあまりにも真剣なジンタを見て仮病で休むことを決めるが、何故かコンビニに連れ戻されてしまう。
ユウキを説得した2人は犯人の元に。
何かに怯える犯人の元にモトムの姿が。
犯人の周りにナイフ、紙、封筒が置かれてるのを見届ける。
また、2人も犯人が封筒の中身と紙を確認。
犯人を付けている最中にバレてしまう。
犯人は2人に襲いかかってくる。
一方コンビニではごみの処理をしていたユウキ。そこにモトムがやってくる。
モトムはユウキとジンタとの会話を聞いていたかのように「休むんじゃなかったの」と声をかける。
しかし、ユウキはモトムのことが誰か分からない。
それを受けてモトムは「俺はそんな言葉が聞きたいんじゃなくて…」と返す。
そこに犯人を追った2人がやってくる。
今回は犯人はジンタを刺す。しかし、何故か刺されたのはジンタではなくユウキ。
また2人は壁の向こう側に逃げた犯人を追う。
枠を進んでいく中で、枠の中からコンビニで何度も刺されるユウキを目にする。
逃げる犯人の元に現れるモトム。
そんなモトムは枠の中から犯人に何度も刺されるユウキを見ている。
また救えなかった2人は今度も壁の中に入り、別行動を取る。
一方コンビニでは刺されて倒れているユウキに向かってモトムが「何故何度やっても君が死ぬんだ」と話しかける。
ジンタの元には犯人がやってきて、ジンタを刺そうとする。
そのジンタの元にはモトムが。
動かなくなった登場人物の元にロングコートの男がやってくる。
「何事にも終わりがあり 終わりからは逃れ得ないが
その隣にいた私の頭では 記憶の海で馬が暴れ出す
慎ましやかな日々 学舎での煌めき 共に休んだ休日
カフェテリアで飲んだコーヒー ささやかな贈り物
馬が暴れる度 私の脳の皮質は波を立てる
波に揉まれて終わりが続く 隣にいた私は喪失を抱え 終わり続けるんだ」
と言い去っていく。
犯人を追っているジンタはそのままコンビニに入る。そこでまたジンタが刺されるが、またもユウキが死んでしまう。
そこで壁の向こう側に逃げた犯人を待ち伏せしていた警官に捕まる。
犯人は署まで連行するという警官の言葉に「このまま刑務所で拘束してくれ」と頼む。
さらに「もうやりたくない」「何度も何度も最悪な感触を味わう」「気付けばコンビニにいる」「慣れるのが怖い。いつも立ち読みを注意されて殺す」
と警官に訴える。
そこで警官は犯人の矛盾に気付く。“毎回”立ち読みを注意されて殺すというのは、お金を渡され依頼されているところと矛盾している。
警官は「どっちが正しい動機なんだ」と犯人に聞くと
犯人は「依頼も立ち読みも両方存在している」と言う。
犯人に殺人を依頼していたのはモトムだった。
第三週の疑問点
どうしてユウキとジンタの会話を聞いていたような発言をモトムはできたのか
サボろうとしていたユウキがコンビニに連れ戻されたのは何故なのか
ロングコートの男のセリフの意図は?
立ち読みと依頼が両方動機として存在するのは何故か
第三週までで分かった点
ロングコートの男のセリフの意図
頭、記憶、海、馬から連想されるのは海馬。
海馬は脳の中の一部で馬の脳と呼ばれる大脳辺縁系にある部分である。
海馬は日常的な出来事や勉強して覚えた情報を一度整理整頓し、その後大脳
皮質に溜められていく。
また、本能的な行動や記憶に関与する。
慎ましやか〜ささやかな贈り物→モトム/ジンタとの学生生活の記憶
馬が荒れる度〜波を立てる→モトムとジンタのユウキの中での記憶がおかしくなっている?モトムもこの壁の向こう側の世界を知っており、自由に行き来できる。
第四週(2月12日)
ユウキとモトムが第二週と同じ会話をしている。
しかし、今回はモトムと会話が成立しており、ユウキはモトムを知り合いとして会話している。
ユウキはモトムに「急にいなくなったりするなよ」と言う。
そんなモトムは「ずっとそばにいるから」と返すが、後にすぐにそばにいられなくなり、嘘になるという。
モトムはユウキを覚えているがユウキはモトムを忘れてしまう。
ジンタはモトムに「お前、何者だ」と問う。
モトムはジンタに「俺はユウキの幼馴染で親友だ」と言う。
ジンタは俺が親友だと言い張る。
モトムはそれに対して「後半はな」と返す。
繰り返される世界の中で、今この先もモトムはユウキの幼馴染である。
しかし、いつの間にかユウキはモトムの存在を忘れ、モトムはユウキにとって、たまたまコンビニにやってきた客Aに成り下がる。
ジンタはモトムに何故ユウキを殺す依頼をしたのかと訊ねるが、答えるのは犯人。
犯人は「この依頼のターゲットはお前だ」とジンタを指す。
モトムはいつの間にかジンタの親友として現れ、モトムの代わりに悲しみ怒るジンタに憎しみを抱いていた。
「お前がいなきゃ俺が後半もユウキの親友として悲しんでやれた」とジンタが死ねば
ユウキは生きられ、モトムはモトムとして生きられると犯人に殺人を依頼した。
しかし、何度試してもモトムは途中から存在を失い、ユウキは死んでしまう。
ユウキがごみの処理を始めれば時間になり、犯人は次元の壁を超えてコンビニに連れていかれる。
モトムは「枠を越えなきゃならない」とジンタと犯人を連れていく。
犯人はまた立ち読みを注意されユウキを刺す。
今回は誰も細切れにならずユウキはジンタの名前を呼ぶ。
モトムは「ユウキは別の人の名前を呼びながら死ぬ」と言う。
犯人はまた時空の壁の向こう側に行き、ジンタは今度は一緒に悲劇を終わらせようと言う。
そこで警官はユウキが処理していたゴミ箱から紙を拾い、壁の向こう側へ行き、枠を進みながら紙を読んでいく。
そこで、モトムとユウキの会話が紙に書かれている。
警官は紙にセリフが書かれていると言う。
ユウキが刺されるところで話は終わっている。
モトムはこの物語は途中から主人公がモトムからジンタに変わっていると言う。
登場人物たちの世界は作られた物語であったこと、その物語の矛盾がコンビニの壁にできた穴だと分かる。
ゴミ箱に捨てられていた原稿はどんどん遡っていることが分かり、今進めた物語が最も古いものであった。
登場人物たちはこの世界の矛盾を変えるために初稿を超えることを決意する。
第四週の疑問点
モトムからユウキが離れたのではなく、逆?
モトムはどこまでループのカラクリを知っているの
第四週までで分かった点
一度目と二度目のループで微妙に状況が違うのは何故か
これは完全な「繰り返し」ではなく、改稿された「やり直し」なので改稿の内容が少し変わっているためユウキとモトム、ジンタの関係性
本来の幼馴染であり親友はモトム。物語の何かのタイミングでジンタが突然現れ、モトムは主人公から客Aに成り下がった。サボろうとしていたユウキがコンビニに連れ戻されたのは何故か
物語であり、その設定、筋書きからは逃れられない。ロングコートの男のセリフの意図
馬が荒れる度〜波を立てる→モトムとジンタが主人公として変わっていっている混濁感を表している(個人的な考察)
隣にいた私〜終わり続けるんだ→何度繰り返しても目の前で別の誰かの呼びながら死んでいくユウキを見ているモトムのことではないか依頼と立ち読みが動機として両方存在しているのは何故か
立ち読み→物語の設定(犯人はユウキをコンビニの立ち読みを注意されたと
いう理由で刺し殺す)
依頼→ユウキを助けたいと思ったモトムがこの物語の穴の存在に気付き、犯
人にジンタの殺人を依頼した。モトムはどこまでループのカラクリを知ったのか
「今回“も”頼むよ」→何度もループして何度も殺人を依頼。
しかし、モトムは最初警官とジンタが穴の向こう側に進むときには「あり得
ないでしょ」と反論している。ジンタの殺害依頼がバレるとマズイと思った
のか?(個人的考察)
「ユウキがゴミの処理を始めた。もう時間なんだ」
→OPでロングコートの男が紙を捨てる=上手く書き上がらなかった原稿
→ユウキがゴミの処理を始めるのは恐らくロングコートの男が改稿を書き終
えたタイミング。そこまで物語を進めなければいけない。
「俺たちは枠を進まなきゃならない」
枠=原稿用紙のマス目=物語を進める
白いものが枠だと認識しており、それを物語の原稿だとは思っていない物語はユウキが刺されるところまでで終わっているが、物語の中にジンタは出てきていない。
物語の主人公はモトムからジンタに変わっていると言っているが、ジンタは出てこない。恐らくあのまま順当に物語が進んでいればモトムが主人公のまま
→モトムの「俺が後半もユウキの主人公で俺は俺でいられた」
=あの刺されたコンビニ中から突然ジンタが主人公として登場し、ユウキを救おうとする(劇中のセリフではコンビニ内での主人公のセリフや説明文はない)物語が終わるタイミングで登場人物たちは細切れになっていた
→登場人物たちが自由に動き回れるタイミング?犯人だけ細切れにならなかった理由は?
第五週(2月19日)
登場人物たちは矛盾の穴から物語を遡り、初稿を越えようとする。
しかし、最後にはジンタ以外の登場人物は止まってしまい、動けるのはジンタのみ。
ジンタが超えた先にはロングコートの男が。
ロングコートの男はジンタの「書いたのお前か」に対し
「よう、ニセ主人公」と答える。
物語を書き換えろというジンタにロングコートの男は「これは主人公モトムとユウキが引き裂かれるお話で変な書き換えは許されない」と言う。
そして「人は人は突然いなくなる」と告げる。
ジンタは作り物くらい幸せな世界にしろと詰め寄る。
ジンタは「俺はあの本に存在していないが、それが俺の存在意義だ」と主張する。
本当はユウキのことを助けたがっており、その矛盾こそがあの本の最大の矛盾であり
ジンタが生み落とされた理由である。
それでもロングコートの男は「物語は決定されている」と言う。
ジンタはロングコートの男のパソコンを奪い、「俺の物語だから」と最後の改稿をする。
物語の登場人物たちも動き出し、物語の中に帰る。
それを見ていたロングコートの男は
「役が勝手に幸せになってるんじゃないよ。俺を置いてさぁ。
こっちはこれからも続くっていうのに」と言って去る。
第五週の疑問点
なぜジンタ以外が初稿を超えられなかったのか
ロングコートの男とジンタの腕時計が同じ。関係性は?
物語を書き換えたジンタはどうなったのか、主人公はだれなのか
第五週までで分かった点
ロングコートの男は作家である。
なぜジンタ以外が初稿を超えられなかったのか
ジンタ以外は物語の中の登場人物であり、あくまでもその世界でしか生きら
られない。しかし、ジンタは物語の中の人物ではないため、外の世界に出る
ことができる。ロングコートの男とジンタの腕時計が同じ。関係性は?
ロングコートの男は物語に存在していないはずのジンタの存在を「ニセ主人
公」と認識している。
→ロングコートの男は自分の中に矛盾が存在していることに気付いており、
だからこそ、ユウキが死んだ瞬間から後を書き進めることができない。
物語を書こうとしているロングコートの男は自分が書き上げたい理想
の形から逸れてしまうことを認識しており、それが膨らんで遂にその
理想と対峙することになってしまった。
この物語はロングコートの男の実話であり(STAGE SQUAREより)、
「ノンフィクション」を書いている上で絶対に曲げてはならない事実を
「ユウキを助けたかった」という気持ちで曲げたい矛盾で生まれたのが
ジンタ。物語を書き換えたジンタはどうなったのか、主人公は誰なのか
物語を書き換えた後、最後にジンタも物語の中に戻ったので、恐らく自分も
書き加えている。
→ユウキとモトム、ジンタの関係性は?
ロングコートの男の実体験=主人公
本来の主人公=モトム
理想の主人公=ジンタ
どちらも主人公のまま?
ロングコートの男「こっちはこれからも続くっていうのに」
→「隣にいた私は喪失を抱え終わり続けるんだ」
ジンタはハッピーエンドにするために物語を書き換えているはずなので、
自分は悲しみを抱えていないはず。
ということは現実のロングコートの男とリンクしているのはモトム。
最後に物語の中に戻った時にセンターにいたのはジンタ。
さらにその隣にはユウキ。
そして、そのユウキの隣にいたのはモトム。
=「隣にいた私」
モトムはロングコートの男とリンクしている存在。
ジンタは主人公。
最後まで分からない箇所の考察
何故犯人だけ動きが細切れにならないのか
→犯人がユウキを刺すということは決まっており、そこはロングコートの男の
意志とは関係がない(ノンフィクションなので起こったことを書く)
あの場面で細切れになるのはロングコートの男がユウキを救いたいがために
実際とは異なる動きをさせようとしている人たちどうしてユウキとジンタの会話を聞いていたような発言をモトムができたのか
モトムは個人で何度もループしており、殺人のターゲットであるジンタを
何者なのか観察していたモトムからユウキが離れたのではなくてその逆?
会話ではユウキがモトムに「離れたりするなよ」と言っているが、忘れたの
はユウキの方。冒頭にジンタが言っていた「転校が多くて幼馴染はいない」
は本当なのか?
モトム目線からの「ずっとそばにいるから」が嘘になり、「そばにいられな
くなった」と言っているため、離れてしまったのはモトムの方だと分かる。
ならば、「転校した」というのはモトムの方?海馬=本能的な行動や記憶に関与する
最後にジンタが虚構を越えられたのはロングコートの男の本能の部分で
ユウキを助けたいという想いがあったため。
ロングコートの男の語りの部分は彼自身の葛藤を表していて、彼自身が
当時殺された友人との思い出が忘れられたことによって曖昧になって
いるのではないか
自分なりの解釈を入れまくった全体像
ロングコートの男は幼少期に親しくしていた友人がおり、離れないことを誓ったが、親の転勤でその約束を嘘にしてしまうこととなる。
大学生になった頃、あるコンビニでバイトしている友人と再会する。
しかし、「忘れない」と誓った彼は自分の存在を忘れてしまっており、その事実に
ロングコートの男は絶望する。
そこに、彼が立ち読みを注意した客が逆上し、ロングコートの男を人質にする。
コンビニ店員の彼は人質を解放するように近隣の交番の警官と頼むが、聞き入れられない。
男を救おうとした彼は犯人に刺されて死んでしまう。
目の前で自分を忘れた親友が殺されたのを見てしまった彼は、後に作家になった。
売れない作家になった男はあのときの事が忘れられない。
なんとかして昇華したい男はノンフィクションとして小説にし、売れる作品にしようとする。
しかし、どうしても彼が死んでしまうところで筆が止まる。
どれだけ改稿しても進まない。
どうしても彼を助けたい想いが溢れ出てきてしまう。
しかし、これはノンフィクション。筋書きを変えるわけにはいかない。
改稿を重ねるうちに彼を助けたい男の別の自我が出てきてしまった。
改稿を重ねるごとにそれは増していき、無視できないほどになった。
本来の主人公はかつての救えなかった自分のはずなのに。
もう一度彼に名前を呼ばれ、親友としてそばにいたい。いや、それ以上の想いがあったのかもしれない。
彼を救いたい想いは留まることを知らず、最後には本を書き上げられず、
存在しないはずの“ニセ主人公“に物語を乗っ取られる。
彼らはハッピーエンドになったかもしれないが、売れない作家である男の人生は続く。
かつての友人を救うことができた少しの救済と、失ったままである喪失感を抱えたまま。
最後の主人公は誰なのか
恐らく、最後まで報われなかったモトム。現実のみのロングコートの男としかリンクせず、その闇のみを引きずったまま。
途中から現れたポッと出のジンタにユウキの親友(恋人)ポジションを奪われた挙句、主人公まで奪われ、恐らく書き換えられた後の物語でも彼だけはハッピーエンドではないだろう。
彼もまた、ロングコートの男と同じように「喪失感を抱えたまま終わり続け」なければいけない。
ジンタは図々しい。だからこそ主人公なのだろう。
ロングコートの男の理想が前面に出て、ユウキを救い自分のためにジンタを殺そうとした自分に「1人で救おうとしてくれてありがとう」などと言ってのける。
多分私がモトムだったらブチギレてる。
でもその図々しさこそ、書き換えたハッピーエンドに勝手に自分を足せるほどの希望こそが彼が主人公に成り代わった理由だと考える。
最後に
こんなに考察しがいのある、めちゃめちゃ深い作品を作ってくださった大熊さん始めとする壱劇屋さん、毎月コラボしてくださる劇団さん方、そして毎月舞台を披露するというめちゃめちゃハードなものを、それでいて最高なものをお届けしてくれるAぇ! group、スタッフの皆さん、本当にありがとうございます。
おかげで寝れずにこれ書き上げました。
こんなに素敵な番組があること、何より舞台の面白さに気付けたこと、本当に良かったなと思います。コロナだけが憎い…
いつかいっぱいのお客さんの前で披露できる日が来ますように。
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