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詩 その7 (16編)


 
虹を見せてあげるよと
長女が霧吹きをもってくる
どこかできっと
友達に
教えて貰ったのだろうな
親の知らないことばかり
覚えて子供は成長してゆく
僕が覚えた全部が全部
子供たちに伝えたいけれど
子供たちの覚えたいことの
半分も僕は知らないんだろな
父や母が僕たちに
教えたかったことの何パーセント
僕らは覚えてきたんだろう
両親が覚えてきたことの
ほんの僅かしか
子供たちに教えられないよ
だからせめて
同じ時間を
できるだけ共有していきたいね
同じ音を聴きながら
同じ景色をみて歩きたいね
霧吹きで作った
小さな虹じゃなくて
本物の大きな虹を
みんなでいっしょに
見に行こうよ
 
 
 
 
7月3日
 
僕のした下手くそなパンク修理でも
家内が精一杯にほめてくれるけど
水道屋さんは泥水の中に平然と手を突っ込んで
朽ち果てたパイプを取り替えて
当たり前のように神業をみせて
十年前の仕事のわびを入れて帰られる
ガス屋さんは、突然のムリな願いも聞いてくれて
丁寧にしっかりとコンロを直してくれ
遅れたことを詫びながら帰られる
叱られたりムリなお願いを言われたりするのは
無いと誰かが困る仕事だから
責任のある大切な仕事だから
賞賛を浴びるどんな有名人よりも
誰かのために頑張る人を尊敬している
誰かに褒めて貰いたいと
子供のように願うけれど
叱られたり無理を言われたり
そんな人がすばらしい
だから
歴史上のどんな英雄よりも
誰かをかばおうとして消えていった
武器を持たぬ大勢の人々の命が愛おしく思えるのです

昭和20年の7月3日から4日にかけて
姫路の街は大空襲にみまわれました
父や祖父母、曾祖父母たちの住む教会も
消失してしばらく大教会にお世話になりました
街のあちらこちらで亡くなられた方々の多くは
大切な何かや誰を守ろうとした人だそうです

だから
僕は今日
姫路に帰り
手柄山に登りたいと
願うのです
刀を地中に突き刺したような塔の前で
日本地図の石版の前で
空襲でなくなられた
人々のために祈りたいと願うのです
 
 
 
拡声器
 
我が家には幾つもの
拡声器があるみたい
昨夜
酔っぱらった私が
ズボンを脱ぎ散らかして眠ってしまい
家内に叱られたことも
いつの間にか
いろんな人が
知っていたりする
娘は小学校や幼稚園の先生に喋り
家内は近所の奥様方にしゃべってく
家内に言わせれば
あることないこと
ブログに書きまくる
私が一番の拡声器らしい
でも
あちらこちらに
鍵をかけて
音も空気も遮断したような
部屋の中にある
幸せって
僕には想像できないんだよね
偽りや見栄や遠慮で
心の窓という窓に
鍵をかけたら
息苦しくなって
幸せを見失わないか
守るべきものを
間違えてしまったら
僕たちは
誰かを傷つけるだけで
終わってしまう
だいたい
自分が正しいっていう奴くらい
はた迷惑なものはないんだから
心の窓を全開にして
街のあちらこちら
いろんな所に拡声器つけて
思いっきり
毎日をすごせたら
気持ちいいだろうな
 
 
 
 
 
地中人
 
草むしりをしていたら
地中にぽっかりと
穴が空いて
吸い込まれた
地中人に出会った

神様から
地球の管理を任されているという
彼は
只一人の暗闇の中で
退屈になると
こうやって
誰かを招待するらしい
水槽の中に泳ぐ
魚の群れみたいな
地上の虫や獣や人間たちを
見守りながら
神様の言いつけ通りに
地球を守っているそうだ
地球の傾きを調節し
公転や自転の速度を見守って
重力や反重力を制御して
忙しい毎日を過ごしているとのことだった
欲望も夢も感情も
性別も仲間も
与えられないで
 
 
 
 
行ったり来たり
 
ぶらんこブラリ
いったりきたり
我が子の背中を押している

大きくなったこいつらが
立ち止まったとき
背中を押してやれるだろうか

百数えても
交代しても
次から次へと
せがんでく

飲んで消したい
記憶の一片
帰途の半ばで吹き出してしまう
一瞬の光景

背中を押してる
我が道も
ゆらりゆらりと
いったりきたり

きっと
彼らの行く道も
道に迷って
いったりきたり

大きくなったこいつらの
誰が背中を押すのだろう
 
 
 
 
秒針
 
時計の針を
見つめながら
遊ぶこどもたちは
きっと
つまらないね

時計の針を
見つめながら
僕は
時を
過ごしていないか

夢中になることを忘れて
いつも
待ちわびていないか

時計の針を
気にしながら
誰かの話を
聞いていないか

時計の針を
気にするあまり
必要な言葉を
削っていないか

大切の時は
いつだって
知らず知らずにしか
過ぎてゆかないのに

時計の針
気にするあまり
無駄な時間に
かえていないか
 
 
 
 
核兵器
 
人間たちは
どうして
殺人の記録を
歴史と呼んだのか
核兵器のない
世の中に
どうしたら
なるんだろう
識者たちは
そんなこと
不可能だというけれど
僕は
そうは
思わない
だって
核兵器よりも
有効な
兵器が開発されたなら
核兵器は
淘汰されるはず
でも
やはり
意味がない

テロリストが
核兵器を
破壊すれは
大事故に!!
核兵器に攻撃されるリスクよりも
核兵器を維持するリスクが圧倒的に高くなれば
誰ももたなくなるかもね

それでも
やはり
意味がない
膨大な軍事費を
世界中のあちらこちら
貧困や医療が教育や
災害救助に使ったならば
防衛力は
どれほど
減るのか
増えるのか
 
 
 
 
この指の上
 
 バスケットボールみたいな
星一つ
この指の上
クルクルリ
「はあ~」とゆっくり
あたたかな息
真っ白な雲を
作ろうか
「ヒュー」と勢いよく吹いて
冷たい息で
嵐を起こせ
小さな光
大きな光
暗闇のそらを
照らしていこう
 
 
 

初めての冒険
 
初めての冒険は
たしか
お祖母ちゃんの家だった
一人で
電車やバスを乗り継いで
何度も
地図を確かめた

初めて
見知らぬ国へ
行ったのとき
あの頃のように
ときめいていた

悪いことを
何もしていないのに
税関を通るとき
脂汗をかいたのは
どうしてだろう

家内ができて
子供ができて
今の暮らしに
喜びを見いだしている

だけど
どこか見知らぬ街に
ふらりと一人
尋ねたいとおもう夜

僕は
焼酎に氷をいれて
行ったことのない
街並みを
羨ましそうに
テレビの前で
眺めている

そうして
子供たちに
どうな初めての冒険を
させようかと

にやにやしながら
考えているのだ
 
 
 
 
 
 
杜撰
 
いつも杜撰な文章を
書いていると

いろんな人が
間違い探しをしてくれる

ら抜き言葉が行けないだとか
この慣用句の使い方は、とか
言葉遣いが
どうのこうの
って……
頭の悪い私には
そんなに大切だと思えない

だって
日本語を無理矢理に
曲げてきたのは
テレビや雑誌

誰かがちょっと
変な言葉遣いを
したからって
そんなに
影響力が
あるとも
思えない

そんなことより
大切なのは

言いたいことを
しっかりと
相手に伝えようとすること

そうして
聞いたり読んだりする
相手のことを
しっかりと
考えようとすること

だけど
思いこみや勘違いが多くて
ちゃんと
人の話を
聞いていない私は

いつも
失敗をして
いろんな方々に
迷惑をかけている
 
 
 
 
 
 
欲望の渋滞
 
ふるさとへ向かう高速道路
渋滞は二十数キロメートル
右足が痙りそうになるよ

私の懐は
こんなにもガラガラなのに

きっと誰かの欲望が
金銭の流れを
留めているだろうな

僕の欲望は
きっと全身の血流を渋滞させて
口に入った食べ物までも
胃腸の中に渋滞させる

欲望の渋滞は
あちらこちらに
飛び回って……

街では
病院が渋滞して
社会では
刑務所が渋滞して
世界では
貧困が渋滞して
各国では
軍事費が渋滞してる

だから
地球まで怒っちゃって
大陸移動まで渋滞し
大地震を引き起こしてしまう
 
 
 
 
 
ご褒美
 
子供へのご褒美
いったい何を
手渡そう

僕の好きな服やゲームを
あげようか

それとも

今子供が好きな
チョコレートやプリン

子供たちのために
物語を書いて
絵本をつくってあげようか

楽しくお勉強ができるような
教材をつくってあげようか

漫画を買ってあげようか

楽しい本を買ってあげようか

子供たちが幸せになるような
ご褒美って
いったいなんだろうな

楽しい思い出も
ガマンする心も
兄弟が仲よく扶け合う責任感も
父や母から受け継いだ
いろんな
いろんな
たからものも

いろんな
ご褒美がいただきたくて

私は
今日も
こうやって
神様に祈りを捧げています
 
 
 
 
 
 
ささやかれるとき
 
周りの人間たちに
「あいつは何をやっているんだ」と
蔭口をささやかれるとき

きっと
あいつの心が
一番頑張っているとき

倒れそうな気持ちを
必死で支えて
動きたくない気持ちを
必死で引っ張ってゆく
頭の中で
言い訳を
フル回転で
考えて

誰に言うこともなく
ただ
じっと
周りの言葉を
気にしてる

何でも
口にして
行動に表して
前を向いて歩いた方が
どんなに
心が幸せか

分からないまま
黙っている
 
 
 
 
 
 
幸せの種
 
悪いことをした
友達を
先生からかばうようにして
僕らは
誰かを傷つけてきた

目に映る
僅かな世界の中で
答えをだそうと決めつけるから
見知らぬ誰かを
傷つけている

世界中の誰の心にも
神様は幸せの種を植えている

幸せになりたいという
願いが
誰の心にも秘められている

神道の神様も仏様も
キリスト教やイスラム教の神様も

きっと
信仰者の心に秘められた
良心の姿に
限りなく近いてゆく

なのに
どうしてだろう

傷ついた
見知らぬ誰かの
悔しい胸の内を

ほんの
少しも
想像することもなく

悪いことをした友達を
先生からかばうように

僕は
傷つけてきた

それでも
僕は
毎日のように
神様が植えてくださった

幸せの種が
芽生えてくることを
願っている
 
 
 
 
 
たらい回し
 
たらい回し
たらい回し

責任も
仕事も
人も

たらい回し

あいつが悪いと
怒鳴りつけ
正義の言葉で
たらい回し

丁寧に丁寧に
綺麗な嘘で
たらい回し

あちらもこちらも

私のことだと
考えないから
たらい回し

地球のように
グルグルと

政府も社会も病院も
施設も町も家族さえも

今日も明日も
たらい回し

昨日のことも
明日のことも

どんなささいな
できごとも

グルリグルリと
たらい回し

手を挙げて
地球を止めるほどの勇気はなくとも

せめて
傷ついている人と
間近で接したらならば

違う言葉や行動を
選ぶだろうに
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
恐ろしいこと
 
三人の娘でさえも
言うことを聞いてくれないのに
私はあいつが耳を傾けないと怒っている

ほんの一瞬
神経や脳みそを刺激するだけなのに
美味しいものを食べたいと願っている

一瞬の感情で
誰かを一生
傷つけているかもしれない

ほんの一行の言葉で
一生恨まれて
生きているかもしれない

つかの間の大義名分で
戦争をしかける国家のように

つかの間の利権で
大勢の人を傷つけるように

僕は
誰かを
傷つけていないか

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