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習作1(その21):スタートアップ

短文を書きました。小説の一項になるにはどうすればよいかアドバイスをください。

スタートアップ

まったく、猫も杓子もスタートアップだ。
国はスタートアップの5か年計画というのを立てているらしい。
私のように、すべてを失うこともあるのに。
壇上では小太りの元起業家が、話をしている。今は、実業家と紹介されている。
つまらない。
頭にはサンタの帽子をかぶっている。
なんでも、12月にクリスマス・キャロルというミュージカルに出るのだそうだ。だから、自分は発声がいいと言っている。
20年前とは大きく変わったそうだ。
20年前、彼は、球団の買収で大きく名をはせた。その後、会社上場に絡む不正があばかれうまくいかなくなったが、その後も宇宙事業などで耳目を集めている。
演出家に厳しく指導されてうまくなったという。
稽古して腕を上げたことは立派なことだ。
歯に衣着せぬ発言が売りと思っていたが今日は話がつまらない。

何を間違ったか、海沿いの展示場にスタートアップのイベントを見に来てしまった。
そういう界隈にいた時のことが懐かしく思えてしまった。
元気をもらえるかと思ってしまった。
そんなことはなかった。
ステージはどれもつまらない。
展示ブースは、売り込みばかり。
息をのむ技術を伝えようと躍起になっているわけではない。
スタートアップに、自分の商品を売り込んでいる。
スタートアップのイベントなのだから、自分がスタートアップのサービスを買ってやるのが筋だろう。

何年前になるだろうか。
テキサスで見たスタートアップのイベントは、ガラクタのような試作品がずらっと並んでいて、とても楽しかった。
会場では飲み物、食べ物が、無料でふるまわれ、音楽もにぎやかだった。
今いる展示会場は、ネクタイをしたサラリーマン風の人がたくさん歩いている。テキサスにはそんな人は一人もいなかった。
国を挙げて、スタートアップを推しているが、何か違うのではないか。
いや、ここには来ていないだけで、自分の思いを形にしようと寝食を忘れて試作を続けているスタートアップはきっといる。

そんなことは、自分には、もう関係ない。


読んでいただけると嬉しいです。日本が元気になる記事を書いていきます。