母について②
私が子供の頃、母は近くの時計屋さんで働いていました。帳簿のような物をつけたり、店頭に出たり。昔の個人店によくあるような、従業員も家族、的な扱いで昼ごはんは賄いがあり、お茶の時間もあり、何だかのんびりと働いている感じに見えました。子供の私もよく学校帰りに遊びに行って 母と一緒に帰る、というような日々でした。時計屋さんは私にも とてもよくしてくれました。一緒にお茶を飲んだり、社員旅行的なモノにも一緒に連れて行ってくれました。
母と一緒に家に帰るのも私にとっては楽しいひとときでした。小学生だったので母と手をつないで帰っていました。帰りに通る道に犬が飼われていました。母はいつも その子に声をかけていました。道端には野良犬がいる時代。家にも猫がいました。母は生き物が好きでした。 家までの10分たらずの道のりが、母と手をつなぐその時間が、 私は たぶんとても好きだったんだと思います。
その頃の家は明治生まれの祖父母が幅を利かせる典型的な昭和の家庭でした。母は長男の嫁として祖父母と同居し 大変な日々を送っていたのだろうな、と思います。時計屋さんからの私との帰り道が 母にとっても癒しのひとときであったなら うれしいな、と大人になった今 とても思います。