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#鹿児島和菓子旅【郷土菓子編】

鹿児島は何といっても蒸菓子が多いのを知ってますか。

私も実際住むまでは鹿児島銘菓といえば「かるかん」と思っていました。お土産やさんにもよく売っている白いふわふわしたあのお菓子です。鹿児島の郷土菓子といって思いつくのはこのくらい。九州の人は割と知っているんだけど、他の県の人は意外と知らなくてまずここで驚きました。

祖父が鹿児島出身だったこともあり、小さい頃から何度か訪れていたから鹿児島のことをちょっとは知った気になっていた私。だから、住んでめちゃくちゃ驚いたのです。郷土菓子の種類が多い!ありえないくらいとにかく多いのです!

かるかん、ふくれ菓子、高麗餅、あずきだんご、よもぎだんご、かからんだんご、けせんだんご、あずき羹、木目羹、いも餅、ぬくい餅…

と、種類が多いのはもちろん、想像もつかないようなものばかり。地元のお店には売っているのに観光客が訪れるような駅や空港では売っていないし、観光課のHPなどにもほとんど掲載されていません。

これではせっかく鹿児島に来た人がいても手付かずで帰ってしまう…。なぜここまで押すかってね、だっておいしの、ほんとに。こんなおいしいものを知らないので帰ってしまうのはもったいない。そんなわけで今回は1つずつ紹介しようと思います。

1.かるかん

鹿児島といえばかるかん、そんなイメージのかるかんはやっぱり鹿児島の和菓子屋さんのほとんどのお店に並んでいます。かるかんとは米粉と砂糖、そして山芋を混ぜた生地を蒸したふわふわ、もっちりした真っ白なお菓子。

かるかん粉とあんこがあればできるほんとに手軽なお菓子。お店によっては買うよりも近所のお母さんが作った方がおいしいことなんてよくあること。

鹿児島に住んで知ったのは、地元の人はあんこの入ったまんじゅうタイプではなく、あんなしタイプの方が人気ということ。あんなしタイプはそのまま食べるのはもちろん、バターで焼いて食べるのが通な食べ方なんです。鹿児島に行くときはぜひこのあんなしを買ってやってみてください。

この明石屋のあんなしタイプのかるかんは百貨店の全国銘菓で売られていることが多いので気になった方はチェックしてみてね。また、最近では季節のものを取り入れたかるかん(桜や栗、塩豆など)、生かるかんなんていうのも出ていて、鹿児島のかるかんは進化し続けています。

2.高麗餅(これもち)

こうらいもち、ではなくこれもち。高麗菓子(これがし)と呼ぶお店もあります。高麗餅は鹿児島の美山という地域に薩摩焼の文化と一緒に入ってきたと言われています。というのも、豊臣秀吉の朝鮮出兵に際し連れ帰った陶工たちに薩摩焼を作らせ、陶工たちは祖先をしのび、高麗餅を供えたんだそう。そのため一般的に高麗餅は法事菓子として使われることが多いです。

あずきと粗めの米粉を混ぜて蒸して作られるこのお菓子はなんとも表現しが難しい…!口に入れた瞬間ほこほこするかと思えば噛むと弾力があり、さらに噛むとあずきの旨味が広がるのです。

かといって硬いわけではなく、和菓子で例えるなら村雨が一番近いのだけど、でもやっぱり高麗餅は高麗餅。これはなかなかクセになるお菓子です。

ちなみに、大正時代以前には甘味としてさつま芋を用いていたとされ、この場合はさつまいもを千切りにして、米粉と混ぜ、蒸していたんだそう。今とはだいぶ印象が変わりそうなのでいつか作ってみたいなと思っています。

この高麗餅もかるかん同様、鹿児島のほとんどのお店で購入することができます。

3.あずき羹/木目羹(きもっかん)

あずき羹はあずき、砂糖、小麦粉(または葛粉)を混ぜ合わせ、蒸して作る蒸し羊羹。蒸して作るため、練ようかんとは違い口当たりがいいのが特徴です。小麦粉が多くなればモチっと弾力が生まれ、葛が多いとすぱっと歯切れの良い食感が生まれます。

上記あずき羹のアレンジ版として生まれたのがこの木目羹。きもっかんやきもくかんと呼びます。

この模様を初めてみた時、なんの模様!?!?!?と衝撃を受けたのが木目羹。小豆あんと白あんの生地を混ぜ重ね蒸しあげることでこの模様が生まれるます。室町時代、守護大名島津武久が京都から薩摩にもたらしたんだとか。

このお菓子の由来はこの模様が木目に見えることから、木目(年輪)の成長のように子どもの健やかな成長を願い、この名がつけられたという素敵なストーリーがあります。

白い部分には基本的には白あんが使われるんだけれども、山芋を入れるお店もあり、小豆と山芋の風味を楽しむことができます。どちらも主として3月の桃の節句の祝い菓子として用いられてきたおめでたい和菓子。節句時期は予約も多くなる郷土菓子です。

4.いこもち

鹿児島の郷土菓子の中で特に惚れ込んだのがこのいこもち。煎った餅米の粉で作るから煎粉餅。かなりシンプルな名前も魅力の一つ。

いこもちには白と黒の2種類があります。これは使う砂糖によって色が変わるのですが、白砂糖であれば白いいこもち、黒砂糖を使えば黒(正確には茶色)のいこもちが出来上がります。

江戸初期からある祝菓子で、上記の高麗餅や木目羹とセットにして贈り物として使われ、鹿児島の祝い事には欠かせない和菓子。1549年に鹿児島に上陸したフランシスコザビエルが平戸から京都へ行く途中襲われ、その時に連れていた鹿児島の青年が持っていた粉でいこもちを作り、飢えをしのいだという逸話も残されています。

鹿児島にはいこもち粉というものがスーパーに売られていて、この粉とお湯を混ぜるだけでいこもちが出来上がるという優れもの。穀物を煎った粉は虫がつかずに保存がきき、便利なことから携行食としても重宝されてきました。

私も一時期いこもちにはまってしまい、いこもちを見つけるたびに買って食べてました、いやほんとにおいしんですよ、いこもち。しっかりと硬めのものからふわふわの柔らかいもの、小さいものやよもぎが練り込んである緑のいこもちなどバリエーションが豊富だから全然飽きない。

かるかんや木目羹に比べて取り扱っているお店が少なく、見つけた時の喜びはそりゃあもうたまりません。

5.ふくれ菓子

続いてふくれ菓子。かるかんの兄弟といっても過言ではないふわふわとした見た目が特徴です。ふくれは小麦粉、卵、黒砂糖、重曹を混ぜた生地を蒸して作ります。名前の理由は実に簡単、「膨れるから」。どの郷土菓子も見た目や材料の名前がそのまま反映されていて実にわかりやすいですよね。

ふくれをイメージしてもらうには、蒸しパン、といったらイメージがわかりやすいのですが、蒸しパンよりもずっしりと重みがあり、もっちりとしています。

実際に地元のおばあちゃんたちと作ったんだけど、蒸し器がなんと大きいこと…!50cm×50cmというとんでもなく大きな蒸し器に生地を流し込むんです。当然出来上がりも想像の域をはるかに超える巨大ふくれが出来上がります。

こんなに大量に作ってどうするんだろう…なんて思っていたんだけど、「今日は量が少なかったからすぐ終わったね〜!」とおばあちゃん。事あるごとにふくれやあくまきを作って地域の人たちに配る文化らしい。鹿児島の文化には驚かされることばかりです。

まとめ

鹿児島はお茶の産地であることもあり、上記で紹介したような種類豊富な郷土菓子が各家庭で作るという文化が根付いています。

だから、県内に上生菓子を売っているお店はほとんどないし、価格帯もかなり低め。お菓子の文化が根付いているからこそ、お菓子は作るものであって買うものではないようです。高級な和菓子、上生菓子はなかなか浸透しにくい地域。

最近は作る人は減ったというもののやはりお菓子の消費率は高く、スーパーの和菓子コーナーもかなり充実している印象です。 郷土菓子だけで和菓子屋が成り立つほど栄えたこの郷土菓子文化はこれからもつないでいってほしいと願うばかりです。そのために、ぜひ鹿児島へ旅行で訪れた際はこれらの郷土菓子も頭の片隅に入れて、楽しんでみていただけたらなと思います。

参考文献
高麗餅(鹿児島) 朝鮮に縁、藩主も堪能/日経新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO25748700W8A110C1962M00/
鹿児島の銘菓/鹿児島菓子工業組合
http://kagosimakasi.web.fc2.com/contents2.html
薩摩五羹/竜乃屋
https://ta2noya.jp/products/satsuma5kan
蒸気屋虎の巻






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