約90万人が未修了~日本の義務教育
「最終学歴『小学校卒』80万人」
朝刊の見出しを驚きをもって受けとめました。
2020年の国勢調査の結果、2020年10月時点で804,293人。今回初めてこの数字が明らかになりました。80万人といえば、私の住む熊本市の人口を上回ります。それ以外に、小中学校に在籍したことがない人や小学校を退学した人といった『未就学者』は94,455人。先の数字と合わせると、約90万人が義務教育を修了していないことになります。
年代別に見ると80代以上が約9割。理由としては戦前の教育制度が今とは異なり、中学校は義務教育ではなかったことと、戦中戦後の混乱期に教育を受けられなかった人が多数いたことが挙げられています。私は戦後世代ですが、当時の状況を祖母や両親から見聞きしてきて、ある程度は理解できます。
一方、義務教育制度は1947年に制定され、戦後の混乱期も落ち着いた頃に生まれた私と同世代の50代以下を見てみると、小学校卒と回答した人は19,857人、未就学者の33,767人と合わせると約5万3千人が義務教育を修了していないことになります。
義務教育制度では「すべての国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負う。義務教育は、これを無償とする」とあり、義務教育を受けさせなかった場合は、保護者に10万円の罰金が科せられることが法律で定められてもいます。また、半数超が外国人、日本人も半数近くにのぼる中、外国人の保護者に就学は義務付けられていないものの、国際人権規約に基づき、外国の方子どもたちも義務教育を受ける権利は認められています。これらの権利や義務を超えた、これまであまり知られることのなかった実態が、あらためて浮き彫りにされた格好です。
そんな中、義務教育を受けられなかった人たちの『学び直し』の場として、夜間中学校の設置が進んでいます。2022年度4月時点で設置済みは15都道府県の40校。今回の合併調査結果を受けて、ようやく文部科学省も全都道府県・指定都市に設置すべく動き始め、熊本県でも2024年4月開校に向けて準備が始まりました。夜間中学校の設置で全ての問題が解決されるわけではないのでしょうが、少なくとも、なんらかの理由で受けたくても受けることのできなかった人、あらためて学び直しをしたいと考えた人、そうした人たちを受け入れる場の整備は急ぐべきです。
さらに言えば、先ほどの数字の中には、いじめや不登校、引きこもり、親のネグレクトなどでほとんど学校に通えなかったものの『形式的に卒業』した人は含まれません。子どもたちの声なき声をすくい上げるためには、もっとやるべきことがたくさんあるようです。
ちなみに今日で300日連続での投稿になりました。いつもご愛読いただき心から感謝申し上げます。拙い文章ではありますが、もうしばらく続けるつもりですので、引き続きよろしくお願いいたします。