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もう一度『ゆとり教育』を

「成長の果実を、しっかりと分配することで、初めて、次の成長が実現する。大切なのは、成長と分配の好循環」という謳い文句で周知されてきた岸田政権の看板政策『新しい資本主義』。わかりにくいと言われ続けてきたその実行計画案が固まりました。

https://news.yahoo.co.jp/articles/b17a8409b4c8121d3412cdac4f5d839538fcab81

その中には、貯蓄から株式や投資信託などの投資へと家計を導く『資産所得倍増プラン』を来年夏までに策定することが盛り込まれています。『少額投資非課税制度(NISA)』や『個人型確定拠出年金(iDeCo)』などの投資限度額や対象年齢の拡大なども実施されるようで、実際に『つみたてNISA』の昨年末時点の口座数は約1800万超と、特に若者世代への浸透が進んでいます。確かに周囲を見渡しても、株式等への投資に対する考え方がひと昔前に比べれば、ずいぶん変わったと実感しています。

政府はその動きを後押しする狙いもあり、学校教育に金融教育が盛り込まれるようになりました。小学校、中学校では既に新しい学習指導要領が導入され、高等学校では今年度から金融教育が必修になりました。

確かに、これだけ投資が一般的となり、株式や投資信託だけでなく、中には高リスクな投資対象も増えてきただけに、『生きる力』にも直結する生活設計や家計管理、金融トラブルの防止の観点からも、その必要性は十分に理解できます。

金融に限らず、ICTや英語、歴史など、それらの重要性が叫ばれるたび、必ずといっていいほど学校教育での導入が求められ、程度の違いこそあれ、何らかの形で導入されてきました。その都度、学校現場では対応に追われ、「ついていけない」と、定年を待たずに辞めていく先生も増えてきていると聞きます。現在は教員の志願者自体が減ってきており、経験豊富な先生方が現場を離れていくことで、教育の質の低下が重大な問題になっています。教育は『国家100年の計』とも称されますが、その根幹が崩れつつある深刻な状況です。

皆さんは『ゆとり教育』という言葉を覚えていらっしゃいますか? 暗記中心の詰め込み教育ではなく、体験重視や考える力を養おうと、2002年度から10年ほど導入されました。当時、我が子の時間割にも『ゆとりの時間』が週に2枠ほど設けられていました。その一方で、知識量を減らすことを目的に学習指導要領の見直しも行われ、例えば、懐かしい円周率は『3.14159……』を『3』とあらためられたりしました。その後、しばらくすると、世界の中で日本の教育レベルがどんどん下がっていることが問題視されるようになり、『ゆとり教育』がその元凶とされ、再び見直される中で『ゆとりの時間』は姿を消すことになりました。

変化の激しい時代だからこそ、あえてもう一度学校現場に『ゆとり』を取り戻すことを提案したいと思います。具体的には、クラスの定員を現行の35~40人から20人程度に減らす。教員の目の届きやすい環境を確保し、個に応じた丁寧で細やかな教育につなげることが目的であり、欧米諸国では当たり前です。また、校舎についても、できるだけ広々とした空間を、必要に応じて間仕切り等で区切るなどの柔軟性を確保し、密を避けるという意味においても空間的な『ゆとり』を学校現場に持たせる。対人関係でも空間でも、学校全体に『ゆとり』を与えることで、子どもたちの心の中にも『ゆとり』が生まれる。時代の変化に柔軟に対応しつつ、他者を思いやることのできる子どもたちを、家庭や地域と連携しながら育んでいくことが、今の学校には求められています。

金融もICTも英語も、時代の変化に対応するためには必要でしょう。歴史教育だって、戦争することが目的ではなく、外国との積極的な交流と相互理解を進める上では、まずは我がことを知ることが大事です。ただ、現状で、それらのことを進めようとしても、全てが中途半端になりかねず、授業についていけない子どもたちがますます増えることを危惧しています。

もう一度、『ゆとり教育』を目指してみませんか?
教育における『ゆとり』の意味を再考してみませんか?

あらためて問いかけたいと思います。

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