静かなる有事~日本の少子化対策
「子どもを産んだら1000万円支給します」
もしこんな制度があったらどうですか?
日本の2021年の出生率は1.30%(過去4番目の低さ)、出生数は約81万人(過去最少)。少子化に歯止めをかけようと、2007年には少子化担当大臣を設置し、結婚や出産を望む人々の希望がかなったときの出生率の水準である『希望出生率』1.80%を目標に、教育の無償化や待機児童解消などの対策が講じられてきましたが、肝心の数字は上向く気配はなく、予測通りに人口減少の一途を辿っています。
そんな状況を見たイーロン・マスク氏からは「日本はいずれ消滅する」と言及される始末。実際に出生数81万人に対する死亡数は143万人。年間62万人もの人口が減っていることになりますので、同氏に強く反論できない状況なのです。
少子化担当大臣を交えた少子化をテーマにした討論番組では、冒頭の提案を含めこんな提言がなされました。
「子どもが生まれることで見込まれる生涯収入数億円、そのうちの納税額は数千万円、かなり粗い数字ですが1000万円の投資も理に適っている」
「年間出生数約80万人全員に支給したとすれば総額約8兆円。その財源は『子ども国債』を発行すればよい」
「数十年間使用される橋や道路を造るためには『建設国債』が認められているのに、人への投資の国債が発行できないのはおかしいではないか」
子どもを産みたくても産めない理由の第一は経済的な理由。荒唐無稽のようで、一定の効果が見込まれ、実現可能のようにも思えました。
OECDが公表した2019年の家庭関係社会支出国際比較では、対GDP比で日本の1.6%。デンマークとスウェーデン3.4%、フランス2.9%、OECD平均でも2.1%。日本は子どもにお金をかけない国のようです。少子化はお金だけの問題ではないとはいえ、「やるか、やらないか。日本の少子化対策の本気度が問われている」と言っても過言ではないのでしょう。
ただ、同じ1000万円を使うのなら、出産の際にポンと渡すのではなく、例えば保育料や医療費、教育費、給食費、子育てにかかる経費等を、可能な限り無償にして成果を上げている兵庫県明石市のような使い方が効果的だと思います。熊本県内でも、保育料や子どもの医療費助成の手厚い自治体に子育て世帯が移り住む状況も生まれていますが、実際は県内移住がほとんどなので、全体としての少子化の歯止めにつながっているのかというと、限界があるのも現実です。
防衛費に関しては、一部の反対を押し切ってまでも、対GDP比2%を計画に盛り込んだわけですから、やはりやる気次第と言わざるを得ません。『静かなる有事』とも呼ばれる少子化問題、自治体だけでなく、国の本気度が問われています。
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