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【授業紹介】実習・掛軸編

こんにちは

初めまして。学部3年のナカモリと申します。
前任のタタミさんに変わって、今後はよろずさんと一緒にこちらの更新を担当させて頂きます!
どうぞよろしくお願いいたします。


本題の授業紹介に入る前に、簡単に自己紹介させていただきます。

私は高校1年の時、美術史の世界と学芸員という職業に出会いました。
その後、東洋・日本美術史研究室の存在を知り、オープンキャンパスで訪問しました。
その時に、先生や当時の院生の先輩とお話ししたことで、美術史の道に進もうと決め、昨年度から東日美に所属して勉強しています。

現在は特定の研究分野は定まっていませんが、先生方のご指導の下、絵画や彫刻のジャンルを問わず幅広く学び、興味を広げ、深めている最中です。


今回の話題

前置きが長くなりました……。ここからは「実習・掛軸編」と題して、東日美の授業風景をお伝えします!


東日美の特徴的な授業に、基礎実習/博物館実習があります。

美術作品を研究するにあたっては、実物に触れる機会が頻繁にあります。そして、研究に加えて作品を収集、保管、展示する立場の学芸員になれば、当然、作品を適切に取り扱えなければなりません。

ですから、美術史を学び、将来学芸員になることを目指している私たちにとって大切な、「作品の正しい取り扱い方法を習得する」というのが、この実習の目的です。

ひとくちに美術作品といっても、掛軸や屏風から刀剣まで、沢山の種類が存在し、ものによって取り扱い方も異なっています。
そのため、授業では、半年間(あるいは1年間)かけて、それぞれの性質に合った取り扱い方を網羅的に学んでいきます。

本格的な実習1回目の今回は、掛軸の取り扱いについての授業でした!



日本人と床の間

授業の前半では、そもそも掛軸とはどういうものか、昔の日本人は掛軸をどこに、そして何のために飾っていたのか、ということについて杉本から講義がありました。


以下、授業中の解説をまとめます。

まず、掛軸の性格について。
屏風が空間を仕切る役割を持つ調度品であるのに対し、掛軸は初めから飾る目的で作られた美術品です。

そして、掛軸を飾る場所が床の間です。杉本によれば、戦後しばらくは貸し家にも簡易的なものがあったほど、床の間は日本人にとって身近な存在だったといいます。

和室と床の間


家の中で、床の間は異質な空間と言えるでしょう。
台所や寝室のように、直接寝食に関わる機能を持ちませんから、生きていくのに絶対必要なものとも思えません。

しかし、少し考えてみると、食べる所に寝る所、仕事をする所、と機能性ばかりを追求した造りをしていたら、たとえ自分の家であってもリラックス出来ないのではないでしょうか。

そこで、家の中で気の休まる場所として考え出されたのが、床の間でした。

床の間に、季節に応じた草花を生け、掛軸を飾ることで、日常の忙しなさ
から離れ、自分が自然の中に生かされていることを実感できる。
床の間、そして掛軸を飾る行為には、そういった昔の日本人の精神性が反映されているのだそうです。



実際に扱ってみる

掛軸を飾る意味や、そこに表れる人々の考え方を理解した後は、いよいよ実践です。

はじめに、掛軸の各部分の名称・表具の違い・掛軸を入れる箱の違いなど、基礎的なことを学びました。

箱に入った状態の掛軸と軸鼻(手前のケースの中)。
掛軸下部の軸の先に付ける軸鼻は、素材も様々です。


つづいて、杉本による掛軸の飾り方・仕舞い方の実演を見てポイントを確認しました。

その後、二人一組で掛軸を出し、仕舞う練習をしました。

掛軸を巻いて仕舞っているところ。
端がズレていかないように巻くのが難しいです…….
紐を結んでいるところ
経験豊富な院生の先輩がアドバイスをしてくれます。


美術作品を取り扱う上で一番大切なのは、ものを傷つけないこと。作品に
折り目を付けてしまったり、壊してしまったりしては取り返しがつかないからです。

授業では、学芸員が普段やっている、一番安全な扱い方を教わりました。

掛軸を下ろす時、左手は順手で添えます。
万一紐が切れて、掛軸が落ちてきても絵を傷めないようにするためです。


ありがとうございました

今回は、東日美の学生が学ぶ実習の様子をお伝えしました。
いかがでしたでしょうか。

現代では床の間に掛軸を飾る家庭は少なくなってきています。
実際私も、実習の授業を受けるまでは掛軸に触った経験がありませんでした。他の受講生も、家に床の間があるという人は全体の三分の一ほどで、授業を通して実物に触れることは貴重な体験となっています。

また、先生の学芸員としての経験に基づいた、現場で役立つ技能を学べることや、
作品を目の前にして、そこに込められた人々の思いや背景を知れることも、この授業ならではの特徴だと思います。

(最後に個人的な余談ですが、掛軸を掛ける際に絵がだんだん明らかになる様子を見るのが、わくわくして好きです。笑)

それでは、今回はここまで。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

今後もこんな感じで東日美での授業の様子をお伝えしていく予定です!

【参考】

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YouTube:講義を期間限定で配信中!杉本の特別企画もあり、美術史についてより深く学ぶことができます。そして何より、ここで取り上げた講義を実際に聞くことができ、気軽に体験授業を受けることができます!
(新しい授業がアップされました!期間限定ですが、ぜひご覧ください。)

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