【授業紹介】実習・刀装具編
こんにちは
皆さまこんにちは。ナカモリです。
仙台ではセミが本格的に鳴き始め、いよいよ夏到来といった様子です!
一方、今年は梅雨が明けた後も全国各地で大雨が続いていますね。皆さまも急な天候の変化にはくれぐれもお気をつけください。
今回の話題
さて、今回は、刀装具について取り上げた実習の様子をお伝えします!
刀装具というと真っ先に鐔(つば)が思い浮かびますが、その他にも縁頭(ふちがしら)・目貫・笄(こうがい)小柄など様々存在し、これら4つをまとめて四所物(よところもの)と呼びます。
授業の前半では、刀装具の基礎について講義がありました。以下、授業中の説明をまとめます。
工芸品の位置づけ
刀装具は工芸品に分類されます。小さく、日常遣いされていた刀装具は重要視されてきませんでした。その一因には、刀装具が西洋の価値基準から外れていたことが挙げられます。
明治以降、西洋の美術への考え方を取り入れたことで、日本でも絵画と彫刻が美術の中心と考えられるようになり、工芸品は格下に見られてしまったのだそうです。しかし、刀装具を始めとした日本の工芸品には技術の粋がつまっており、これから地位が高まっていくはずだといいます。
加えて、杉本によれば、刀装具は画家のデザインを元に金工師によって製作されたため、デザインした画家の流派が現れており、刀装具と絵画は関わりが深いのだそうです。
刀装具の美意識
続いては、刀装具に現れる当時の日本人の美意識について。授業では、西田直養の『筱舎漫筆』より「刀剣夜話」が紹介され、その記述から当時の価値観を学びました。
刀装具には秋草や花鳥、吉祥文様がデザインされた物が多いです。
上に引用した記述は、その理由を「堅い物に堅い模様を合わせると見所が少なくなる」からだと説明しています。
刀剣という「武の象徴」には、合戦の場面をデザインした刀装具よりも、花鳥などの優美なものを合わせた方が趣深いと考えられていた事が読み取れますね。
また、鐔や四所物がセットになっているのは無粋であり、バラバラのデザインの方が面白いと捉えられていたようです。
杉本によれば、このように日常的に身につける刀装具を秋草や花鳥の文様で彩ることは、「女性のかんざしや櫛のように目立つ物ではないけれど、身だしなみを整える道具に意匠を凝らしておしゃれを楽しむ」
という、当時の男性たちの美意識が込められていたのだといいます。
(刀装具についてもっと詳しく知りたい方はこちら。杉本が担当する「日本近世美術史」の授業から、刀装具を取り上げた回をご覧いただけます ↓ )
刀装具を鑑賞する
刀装具の性格について学んだ後は、実際に刀装具やその他の工芸品を実際に見ました。
小さい作品を展示する際には、ただケースに並べるだけだと単調な見た目になってしまい、お客さんの目に止まりにくいという問題があります。ですから、作品の下にフェルトや色紙を敷いたり、置き方や高さに変化を加えたりと、視覚的に訴えかける展示をすると注目されやすいのだそうです。
乾拓をとる
授業の後半では、鐔の拓本を取る実習を行いました。
拓本とは、石碑や金属製品の模様を、墨を使って写し取ることをいいます。
今回扱った鐔は、水に濡れると錆びてしまうため、作品の上に紙をのせ、さらにその紙の上から固形の墨を当てて擦り、模様を写すという、乾拓の手法を用いました。
ありがとうございました
今回は、刀装具について学んだ実習の様子をご紹介しました。いかがでしたでしょうか。
刀という堅く強いものに対して、山水や花鳥といった優しいデザインを刀装具にあしらうという考え方は、当時の武士の生き方をも反映しているように感じ、とても印象的でした。
それでは、今回はここまで。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!
【参考】
展覧会特設サイト:杉本監修の展覧会「東北の画人たちⅠ~秋田・山形・福島編~」についてはこちらからどうぞ!
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