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VRで"体感する"物語

こんにちは。かわしぃです。今年はclusterの加速がすごすぎて、個人的にやりたいことがどんどんサービスのアップデートに上書きされて埋もれてしまった印象があります(汗)

しかし、諸々の販売機能が追加されたことでクリエイターとしてもやりがいがもりもりと大きくなっているのを感じています。clusterさん、いつもステキなサービスを提供していただき有難うございます。

今回は、今年から大きく私のワールドの作風が変わったのでそれについて綴っていこうと思います。

きっかけはお題企画

clusterで私がワールドを作り始めて2年と半年ちょっとになります。はじめは自分の住む地域活性化の一助になればと、地元の観光案内のようなワールドを作ることを目的にしていました。それはもちろん今もワールド制作の目的のひとつとして自分の中に存在しています。ですが、地域活性化をテーマにした作品アイディアが無尽蔵に湧いてくるかというとそうではありません。テーマを広げてもっと自由に作ってみるか~、と思ってもきっかけが掴めないこともざらにあるわけです。

そこできっかけを定期的にくれたのがハロクラでおなじみの #clusterお題企画 でした。テーマを供給してもらえたので作品の方向性と目標を定めやすくなり、作り始めるのに困ることはなくなりました

その中で「表現者」としての自分の手法として「ワールド」を作れるのではないかという感覚が湧いてきました。

目標を少しずつクリア

お題が出るたびに、自然とそのつど自分なりの目標を定めるようになりました。まだ使ったことのないUnityの機能を触ってみるとか、モデルの一部を自作してみるとかいった具合です。

具体的にはこんな感じです。

2021年6月のお題「水無月に降る」

梅雨の季節ということで、なにかが「降る」ワールドというテーマが出されました。この頃の自分はまだモデリングソフトによる造形スキルがなく、VRアートの経験ぐらいしかありませんでした。では出来る範囲内で工夫を、ということで


  1. TiltBrushを使う

  2. テーマに沿ってイメージを形にする

  3. VRワールドとしての体験の質(動作・歩きやすさ・面白さ等)を保つ


を目標に制作しました。この3つはすでに経験自体はありましたが、今までよりももう少し踏み込んだ規模で制作することを決めました。

TiltBrushアート制作アプリであるため、モデリングツールとは違います。各メタバースのワールドとして動作させるためにはある程度動作環境に合わせた造形が必要です。油断して描き込みすぎて、負荷が大きくなりすぎないように、そしてつまらなくならないようバランスを意識して作りました。

2021年10月のお題「異世界を歩く」

このときはとても体調が悪く、更にいつも使っているゲーミングPCが手元に無いという状況でした。なので、あまり大規模なワールドではなくコストを抑えてビジュアルを保つ方向性でワールドを設計しています。目標を整理すると、


  1. TiltBrush(OculusQuest版)を使い、(※)容量制限いっぱいで作る

  2. Animation、Timelineを使う(Unityの機能理解のため)

  3. それとなくワールド間に物語的つながりを持たせる


こんなところでしょうか。体に負担をかけず、欲張らずに自分を納得させるのをがんばったといった感じです。3についてはぜひワールドで体験し、考察してみてください。

(※)Quest版TiltBrushおよびOpenBrush等には容量制限があります。

2022年2月のお題「大にゃんこ祭」

かわしぃは特別ねこが好きというわけではないのですが…以前から物語表現のワールドを作ってみたい気持ちがあって、風呂に入っているときにそれとなくストーリーを思いついたので形にしてみました。物語を作りたいと思ったのは、9191さんが制作されてきたワールドに影響を受けたのもあります。
ですが、このときの私がUnityおよびCCKで出来たことといえば、単純なAnimationおよびTimelineアクティブ状態切り替え、簡単なライトのベイク。これぐらいでした。

この材料だけで、ストーリーを楽しむワールドにするにはどうしたらいいか…と考えたところ、出た答えはコレ。
「一本道を進むだけで場面が変わればわかりやすくラクチン!」
もちろん、遊ぶ側だけじゃなくて作り手としても基本的には一直線上にオブジェクトを並べていくだけなのでラクチン。と考えたわけです。(実際つくるほうは全然ラクじゃなかった)というわけでこのときの目標は


  1. ストーリー性を持たせる(シナリオ制作)

  2. 今できる技術で表現する(新しいことを覚えない)

  3. プレイヤーがストーリーを理解できるように導線をつくる(ストーリーテリング)


の3つでした。新しい技術を習得しない代わりに今までで得てきたことをもうちょっと使いこなして表現を深めようとした感があります。(といいつつPost-Processingの値をAnimationで動かすというやつを新たにやりました)

2022年7月のお題「プリミティブ・ワールド」

Unityのプリミティブモデル(Unityに標準で入っているCubeやSphereなどの基本的な形状のモデルのこと)だけでワールドをつくるというもの。モデリング要らずでたすかる!と思っていましたがそんなことはありませんでした。

2月のお題企画でストーリーのあるワールドをどうにか作ることができたので、次はもう少し表現にパワーを割いてみようと考えて作りました。前回は「ねこ」というテーマがあったのでそれを軸に考えればよかったのですが、このときはストーリーの軸を自分で考える必要がありました。

軸が無かったため、まずは先に以下の目標を立てました。


  1. (前回より)もう少し深みのあるシナリオを作る

  2. ロジックを使ってみる(CCKの機能理解のため)

  3. プレイヤーを迷わせずストーリーを理解させる

  4. ゲームっぽくするために、アクションごとに効果音を鳴らす


ということで、まずは2のロジックをどう使うか考えたときに自分はCCKの「SetGameobjectActiveGimmick」ぐらいしか、表現の上で自由に使えなかったのでそれをロジックで管理してみるか…という流れに。

3をクリアするためには再び一本道の構成に。そしてロジックを活かすために、「クリックすると続きのメッセージが表示され、ストーリーが進む」という挙動をさせることに決定。4でゲームらしさと状況のわかりやすさを追加するために、キーオブジェクトに近づくと効果音を鳴らす。そうして1がクリアされる…であろう…。

ここまでシステム的な部分を考えたことで、ストーリーが浮かび始めました。表現するのは昨今のメタバースを含む情勢と、ひょっとしたらありえるかもしれない未来。いまわたしたちに足りない意識はなにか。フルダイブ型仮想空間が実現された時代のIFからそれを感じ取ってほしいという願いを込めています。

という経緯でこのワールドは生まれました。

ちなみにプリミティブをどのように活用したかというのはこちらの解説ワールドで説明していますのでよろしければご覧ください。
【プリミティブワールド徹底解説ミュージアム】
https://cluster.mu/w/acd9f060-662f-4517-8dbd-9c6d099b829c

2022年8月のお題「いつかの夏の記憶」

おそらく今年いちばん力を注いだと思われるワールド。目標はこう。


  • 今までに実践して身につけてきたことをすべて動員する


使えるものは全部使う。そして表現したいものはすぐに明確に決まったような記憶があります。clusterを日常的に使っていて思うこと。マナーのこと、メタバースのこと、クリエイターのこと。少しでも楽しい時間を守るために、何を大切にして、何に気をつけるべきか

それらを改めて考える気持ちを持つために。もしもの未来の世界を描きました。それをよりリアルに伝えるため、clusterに馴染みのある場所を舞台として、最後の行き先を現代のclusterロビーにするというのは最初に決めていました。未体験の方はぜひハロクラを見た直後に訪れてみてください。

【刻の邂逅】
https://cluster.mu/w/dfd355f4-9909-4a12-bb47-9c0cadb52a42

本来やりたいことに帰ってきた

上記のワールド「刻の邂逅」を作り終えて、ようやく「作りたいもの」にたいして「ツールの理解」が追いついてきたという実感がありました。

物語は2D世界を覗き見て味わう機会が多いですが、こうしてVRワールドとして作ることで「体感する」物語として成立します。そういったものは大きなテーマパークにでも行かないと味わえないものでしたが、VRヘッドセットがあれば家の中でもそれに匹敵する体験が得られるのだと思います。

私は日々エモーションを食って生きている、という実感があるので…それを生み出せるクリエイターでいたいなと思います。そのエモーションを伝えるために、私たちがコミュニケーションで最もよく使うのが「言葉」だと思いますが…なにかを「伝える」方法は必ずしも「言葉」とは限りません。

特に人間は文字を読むモチベーションが低い生き物です。メッセージを強く伝えるには…文字よりも画像画像よりも動画、それらよりも「実体験」。VRはその実体験に限りなく近いものが表現できると私は感じていて、このような作品を作るに至りました。そして人間はなにかを無くすことでその価値を知ります。しかしながら、無くしてから後悔しても遅いのです。この作品では多くの人にとって大切なものが無くなってしまった、もしもの世界を描きました。

リアルであろうと仮想世界であろうと、なくなるものはなくなります。本当に大切なものはなにか。気づいてもらえますように。

物語はいいぞ

物語を作り始めると、それに対して必要な演出や技術が明確になり、スキルアップがはかどるぞ!みんな、さあやってみよう!

ただし、物語を作っていると…心が破壊されて涙が止まらなくなる場合があります。今年もお世話になりました。来年も宜しくお願い致します~~
良いお年を。


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