今更、「十二国記」を初めて読んでいます
「十二国記」。
その名前は存じており、とても人気があることも、アニメ化されたことも知っておりましたが、実はこれまで触れずにきました。
たまたま、これまで縁が無かったものと思われます。
それが数年前、新刊が出るとお祭り騒ぎになった際、「実は読んだことないんだよね」と気軽に言ったら、「なんですって!?読むべきよ!!」と友人が『魔性の子』『月の影 影の海』をプレゼントしてくれまして。
そこからはや数年。
子育てに追われなかなか手に取れなかったのですが、ふと、読んでみようという気になり、今更ながら読み始めました。
まーーーーーーーーーーあ面白い。
なにこれ読むの止まらない。
◾️『魔性の子』
まず素直に、発行順で『魔性の子』から読み始めました。
そうしたら友人が「『魔性の子』から読み始めたの!?私ったらなんでそこからプレゼントしたんだろう!」と言い出したのでかなり戸惑いましたが、個人的には、『魔性の子』から読んで良かった気がします。
もうね、びっくりするほど、人が死ぬんですよね。
案外人が死ぬ話だな。
うわ、どんどん死ぬな。
ねぇ、ちょっとほいほい殺しすぎでは!?
と容赦ない殺しっぷりに慄きました。
しかも、子を産んでから子ども・若者の死に弱くなったのに、若人がばんばん死ぬ。
それでも物語全体を貫く「魔性の子=高里は祟る」という謎が気になりすぎて、読む手が止まりませんでした。
十二国記といえば異世界ファンタジーというイメージでしたが、『魔性の子』は現代が舞台の、ローファンタジー。
イメージとは違うな、外伝的な話らしいからかな、と思っていたら「十二の国に、十二の王」と突然出てきてぞわっとしました。
これは確かに十二国記だ。
むしろ、ファンタジーが苦手でホラーが好きな方には良いのでは。
こんな面白い物語があったというのか。
そりゃ人気作にもなるわ。
「ここは自分の居場所ではない気がする」という感覚を高里に重ねていた広瀬の最後の叫びが切なくて良かったです。
◾️『月の影 影の海 』(上、下巻)
「ねずみが出るまで頑張って」というよく聞く謎のアドバイスを胸に読み始めた本書。
上巻終わってもねずみが出て来なくてびっくりしました。
こちらが「十二国記」シリーズの第1作に当たりますが、昔の異世界ものは、容赦がない。
訳がわからないまま異世界に連れてこられて、文化も何をすればいいかも、ここがどこかもわからないまま、何とか生き延びねばならない。
無知ゆえに騙されたり、つけ込まれたり、奪われたりし、夜は妖魔にまで襲われる日々。
夜は命からがら戦い、昼間は剣を抱いて眠るというベルセルクのガッツみたいな生活をしていてびっくりしました。
女子高生が、ですよ。ズタボロ命がけ野宿だよ。
主人公に困難を与えるのは、物語に起伏を与え牽引力を持たせるためにも大事ですが、それにしたって……過酷です。
早く誰か助けてよ!?陽子死んじゃうよ!????
と切に願いました。
もし自分が書き手だったら女の子主人公をここまで過酷な目に遭わせられるだろうか……とつい考えてしまいます。
けれども、その過酷な日々のなかで内省する姿や、「また騙されるのではないか」と疑心暗鬼になりながらも決断し成長していく姿はとても良いです。
こちらも何も信じられなくなって警戒しながら読む羽目になりますが………。
幸い『魔性の子』を先に読んでいたので多少十二国記世界の仕組みをわかっていましたが、友人は「何も知らないで本作から読んだので本当にしんどかった」と言っていて面白かったです。さもありなん。
噂のねずみがこんな良いやつだとは思わなかったよね……楽俊大好きです。
苦難の中で陽子が、「いい子を演じているほうが、自己を探して他と鎬を削るより楽だった」「卑怯で怠惰な生き方をした」と思い至るのは本当にすごいと思います。
謙虚さ、内省、静かな生命力と克己心、そして善良さが陽子の王たる素質かなと感じております。
王になっても大変そうだけど、なるべく幸せになって欲しい主人公です。
◾️『風の海 迷宮の岸』
今、3作目を読んでいるところです。
本作は『魔性の子』の主人公が1年間、神隠しに遭っていた(=十二国の世界へ行っていた)間の物語。
幼い主人公がかわいくてかわいくてたまらない。
愛されて、可愛がられて、守られて、平穏に過ごして欲しい。
でもこれは十二国記。
そうは問屋がおろさないのだろうなと、ドキドキしながら読んでいます。
健気で可愛い主人公にほこほこしながらも、『魔性の子』を思い出しては「でも将来ああなるのか」と切なくなり、この母がああなるのか、と思うと苦しくなり、更に最新刊まで読んでる友人が意味深な反応をするので彼の苦難はいかほどかとヒリヒリします。
でもやっぱり面白いです。
最新刊まで読み通すつもりでいます。
◾️名作を、あとどれだけ読めるだろう
名作と呼ばれる作品は、やっぱりべらぼうに面白い。
というのが、ここ数年での気づきです。
と同時に、世の中にある大量の名作を読み終わる前に、私の寿命が尽きてしまうのでは?
生きてるうちに全部読み切るのは無理なのでは?
ということも感じ始めました。
なんと寂しいことでしょう。
けれども嘆いている暇はありません。
生活にも色々時間をとられるので人生の全ての時間を読書に充てるわけにはいきませんが、世の中にある名作を、楽しく、愉快に、時に切なく、出来うる限り手に取って、読書を楽しんでいきたいと考えています。
十二国記シリーズでいえば、主人公の境遇に「なんてことだ!」とどんどん心動かされ、ストーリー展開に「どうなるの!?」と惹きつけられます。
もう本当に読んでいて楽しいです。
綺麗に感情をコントロールされている。
それはそれで、心地良くて。
普段の生活も刺激的ではあるのですが、物語を通して心や感情を動かすのは「快」ですね。
名作は、読むと確実に自分の中に物語が「残る」感覚があります。
出会えて良かった。読めて良かった。
まだまだ読む本がある幸せよ。
最近読んだ本ではアガサ・クリスティーの『春にして君を離れ』も面白かったです。こちらはしばらく引きずりました。
殺人事件は起きないのに怖くてたまらなかったな……。
面白い本が、素晴らしい物語が、この世にまだまだ沢山あると思うと、わくわくしますね。
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