巫女バイトの思い出
年末ですね。この時期になるとかつて巫女のバイトをしたことを思い出します。
女には巫女に憧れる者と憧れない者の2種類があり、私は後者でありました。
中学時代通っていた塾の友人が「正月に巫女のバイトをした」と話していて、そんなバイトがあるのか⁉︎と興味を持ったのがことの始まり。
彼女の話では、掲示板に募集の張り紙がしてあり応募したとのこと。それを聞いて以来、神社付近を通る際は気にかけておりましたが、残念ながらついぞそういった張り紙は見かけませんでした。
そして月日は流れ大学生になったある日、ふと思い出してとある神社のホームページを見たところ、サイトの一番下に「お正月の巫女バイト募集」のバナーが。
ホームページで、巫女バイトの募集。
なんだか妙に世俗的で驚きました。
確か夏の終わりのこと。お正月のことなんて何も考えていないような時期に募集がかけられていたとは。
その神社では25歳までという年齢制限があったので、迷っている暇はないと早速オタク友達を誘って応募。
面接が一度あり、最大限清楚に見えそうな服装で臨みました。なんの自意識だったんでしょう。
面接官はなんと巫女さん。眺めることはあってもお話しすることはまずない相手にかなり緊張しましたが、相手も面接など不慣れで緊張していて、お見合いのような雰囲気に。志望動機や来年の干支など当たり障りのない質問をたどたどしくされ、こちらもカチンコチンになりながら精一杯答えて無事採用されました。
なお、処女かどうかは一切問われませんでした。
日程調整の結果、私と友人は大晦日から元日にかけての夜勤と、お正月明けに数日バイトに入ることに。
事前に一度研修があり、巫女装束の着方やおみくじの縁起が良い順番、神社の由来などよくある問い合わせの説明が行われました。
面白かったのがロールプレイングで、我々バイトは主に授与所でお守り等のやりとりをするのだが、これらは売り物ではないので「〇〇円のお納めになります」という表現になる。
値段が決まってるのにおかしな気もするが、初穂料と引き換えに渡すのでこのようになるそうだ。「〇〇円のお納めになります」「〇〇円お納めいただきましたので、〇〇円のお返しになります」といった表現に慣れるためのロールプレイングだった。
商売ではないので間違えても「ありがとうございました」などと言わないように、という指導も面白かった。授与後の締めの言葉は「ようこそお参りくださいました」だ。
そんなこんなでワクワクでバイト当日を迎えたが、感想は寒い寒いひたすら寒いの一言だ。
巫女装束の上には何も羽織ることができない。
袖から見えても違和感のない肌色のものなら下に着込んでも良いということだったので、ヒートテックの上下を身につけたが、さすがに大晦日の深夜の気温には勝てない。
一旦門を閉じて参拝客を出し、新年を迎える準備をしている時に、神主さんが普通にダウンジャケットを着て走り回っているのを見てお前暖かそうだなおいいいいいいいいいいとキレたのを覚えている。
夜勤は大晦日の夜11時から元日の朝6時までで、日が昇るまでは案外お客さんも少なく忙しくはなかった。
ただ、ひたすらに寒かった。
そして腕時計をすることも許されていなかったので、年を越した瞬間がわからずいまいちすっきりしなかった。
遠くから聞こえる鐘の音に、もしかして年を越したのかな?とはっきりしないままバイト仲間と新年の挨拶を交わしたりしたのを覚えている。
私の仕事はお守り等の授与だったが、交代で絵馬に紐をつける仕事もしていた。こちらは後ろでこっそり座って行えるので、立ちっぱなしは辛いだろうとの配慮だったが、夜勤は眠く、正直立っている方が楽だった。
ちなみに授与所以外のバイトでは、祈祷を申し込んだ参拝客の誘導、祈祷の補助(祈祷後に授与品を渡す)等があった。
そんな寒い寒いバイトだったが、お弁当がやたら豪華だったのも印象に残っている。お正月だからだろうか。食べきるのが大変だった。そして、日によってお弁当が違うのも嬉しかった。
バイトに来ているのは大体大学生で、つかの間の連帯感でお喋りするのも楽しかった。
うろ覚えだけれど、バイト代は日当7000円、夜勤は1,2000円、勤務時間は7時間(うち休憩1時間)だったと思う。
憧れの巫女装束を着て、神社で働くことができたけれども本当にクソ寒かったのでもう二度とやらないと心に決めた。
でも面白い体験だった。それで何となく愛着が湧いてしまって、その神社にはその後も初詣に訪れたりしている。
これは全て約10年前の話だけれど、今でも都内の大きな神社であればバイトを募集しているようです。
興味のある方は応募してみてください。
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