沼[インスタントフィクションその11]

朝起きる。呼吸が重い。絡みつく何かを書き分けながら洗面所へ向かう。蛇口からです水はまるでスライムのようにゆっくりと垂れ落ちてくる。両の手で包み込むと、それはまるで水のように指の隙間からこぼれ落ちていく。たしかに掬い、顔を洗う。ゲル状の何かを塗りたくっているような不快感を堪えつつ、洗顔をすまし、長く垂れる水をまとった歯ブラシで持って歯を磨く。朝のエチケットをすまし、リビングへ向かおうとした時ふと、身に纏う目に見えない何かがあることを思い出す。脱ぎ捨てられたらどんなにいいか。きっと羽ばたけるような軽さを感じるに違いない。あるいは遮るものなど何もないかのように素早く動けるに違いない。夢ような世界であることは間違い無いだろう。その身がどうなるかも知らずに、、、

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