晩馬(BANBA) 「雪に願うこと」馬が人を救う[13]
鳴海章の小説「晩馬」が原作です。物語は、東京で一度は成功を手にしたものの、経営していた貿易会社が倒産、妻にも友人たちにも去られてしまった矢崎学。彼はやむを得ず、兄・威夫を頼って故郷の北海道帯広へと戻ってきた。そして、威夫が運営する“ばんえい競馬”の厩舎で見習いとして働き始める学。彼はそこで、まるで自分と同じようにお払い箱になる寸前の馬、ウンリュウと出会うのだった…。そしてそれから.....
台本は仮題で晩馬だったが、そののち「雪に願うこと」に変わったようだ。
鳴海章の小説に「14歳、夏。」という作品がある。
1トン近くある巨大馬が自分と同じくらいの重さの橇を引いてアップダウンのあるコースで競うばん馬。馬は経済動物というらしい が完走できず砂の中に膝をついたまま動けなくなる馬もいるほど過酷な競馬だ。これは、ある一頭の馬と傷ついた心を抱える都会の少年との出会いと別れの物語。
いのちは、なぜ失われるんだろう…コロナ禍で慌ただしい医療現場で生と死の現実を見せつけられている研修医持田友親は、十数年前の夏、北海道で過ごした日々に思いを馳せる…。おまえ、十日間ほど帯広の祖父ちゃんの家に行きなさい。突然両親に言われて北海道帯広に来ることになったトモ。祖父ちゃんの家にはでっかい馬がいた!ばんえい競馬で活躍して種牡馬となっているタイコだった。馬は経済動物だからという祖父ちゃんの口癖の意味はよく分からなかったが、高齢だけど今度の草ばんばで若馬を蹴散らして勝つ!という同い年のいとこヤスとともに熱心に世話をする。するうちに、いつしかタイコと心が通い合ったような気になるトモ。なんだか両親が離婚するらしくて…と語りかけると、潤んだ大きな黒い瞳で見つめながら鼻を寄せてくるタイコ。その大きな顔の温かさでどれだけ心が癒されたことか。レース当日、メインレースに登場のタイコ。ライバルは現役のダイチと引退したばかりのキングジョー。三頭は白熱のレースを繰り広げるが…。祭りの後の突然の別れ。経済動物ってなんだよ!大切な命じゃないかよ!それでいいのかよ!あの夏の最後、トモは声が枯れるほど叫び、そして沈黙した。離婚した母に連れられ実家に帰ったトモは、医者になろうと決意した。いのちとは何かを見つめるために。一頭の馬との出会いと別れを経験した少年は、確実に大人への階段を昇ったのだ。この作品が輓馬の後に書かれた。ひたむきに生きる馬の姿と不要になって処分されてしまう経済動物としての馬が人に感動と癒しをもたらすという映画的証明が、映像に出てるといいのだが、人は人だけで生きるにあらず。ということか?
14才夏も映画されるといいな。