「顔」坂本順治 藤山直美
喜劇界を代表する女優、藤山直美主演、「どついたるねん」の阪本順治監督による人間ドラマ。殺人を犯した女性の逃避行を、人間味とユーモアを織り交ぜて描く快作。「友達っておらなあかんの?」と言い放つ藤山直美が最高に人間クサイ。
妹を殺し逃亡を重ねていくヒロインがどんどん活力に満ちていく姿に、ゲラゲラ笑いながらいつの間にかホロリと泣けてくる。
ストーリー
35歳の正子は内向的で、家に閉じこもりがちな独身女性。ある日、不仲の妹をはずみで殺してしまった彼女は大震災に乗じて逃走。名を変えてホステスとなった彼女は逃亡生活の中で、生きる活力に目覚めてゆく。映画と事件の直接の関係はないが、ヒントぐらいにはなっているかもしれない。
その事件とは福田和子の事件である。「時効まであと21日というときに捕まった殺人犯である。顔変えて時効直前まで逃げた。逮捕は、TV放送による、電話の生声とグラスの指紋が決め手となつた。「7つの顔を持つ女」と呼ばれ、逮捕された。福田和子・元受刑者。約15年にわたり逃亡し、警察を翻弄しつづけた。昭和57年8月19日に事件は起こった。
「松山刑務所事件」というものがある福田和子はこの事件で、強姦被害者となった。さらに移監された(高松刑務所でも同様の被害に遭っている)が、いずれも被害届を出すことが認められなかったため、公訴時効により事件の責任追及は行われなかった。控訴時効で犯罪が無かったことになるという強い思いがあったことは否めない
松山刑務所事件とは、(1964年-1966年、福田和子は、被害にあった。当時まだ18歳の少女だった福田和子は、松山刑務所内の拘置監(刑の確定していない拘禁者を入れる施設)に収容されていたが手記「涙の谷」によると、看守の手引で、メガネの男と子分に強姦された。当時、国会に取り上げられる大スキャンダルとなり、暴行ができるように関与した看守は自殺している。また、被害者である福田和子の著書では、告訴を取り下げるよう強要され、公訴時効成立によって事件の存在自体が無かった事にされた経緯が明かされいる。福田和子は1982年(昭和57年)8月19日に発生した松山ホステス殺害事件の犯人である。犯行後、時効直前の1997年(平成9年)7月29日に逮捕されるまで14年と11ヵ月10日にわたり逃亡した。時効成立まであと21日だった。福田和子は2005年2月、収監先の和歌山刑務所で倒れ、和歌山市内の病院に搬送され緊急手術を受けたが、意識は戻らず、3月10日に脳梗塞(のうこうそく)で死亡したという。57歳だった。日本の犯罪捜査において初めて懸賞金(愛媛県警察協会等)を設け、逃亡劇がドラマの題材になるなど世間の大きな関心を集めた事件であったが、福田和子の数奇な人生を知るものは少ない。
私達は、今は、鏡におぼろに映ったものを見ている。だがそのときには、顔と顔とを合わせて見ることになる。わたしは、今は一部しか知らなくとも、そのときにははっきり知ることになる。ノスタルジーかおる風景が、顔に焼き付いている。思い出の顔は微笑んでいるか。ベランダのカーテンに朝の太陽がさす時、思い出の顔が、微笑むことは誰にでもあることだ顔は不思議なものである。
顔を持つ他者とは、殺したいという誘惑に駆られる唯一の存在者である。この殺害への誘惑と殺害することの不可能性が顔のヴィジョンそのものを構成している。『顔』を見るとは、すでに汝殺す勿れといわれてることである。この世の別れが永遠の別れでないことを覚えさせ、裁きの日において再び顔と顔を合わせる日を望ませてくださいと望むのである。そのとき顔がなかったら、あなたはどうすればいいのかわからない。死んで魂になったとき顔はどうなるのであろうか。どんな顔をしてこの困難な時代を乗り越えていけるというのか。
控訴時効については、殺人罪や強盗殺人罪など,「人を死亡させた罪」のうち,法定刑の上限が死刑であるものについては,公訴時効は廃止されました。 これにより,犯罪行為の時からどれだけ時間が経過しても,逮捕して犯人を処罰することができるようになった。
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