強権体制における最高機密
煽り気味のタイトルをつけましたが、結論からいきましょう。中国、ソ連/ロシア、北朝鮮など、強権体制の国家における最高機密は、最高指導者の健康状態だといえます。
日本なら岸田首相が健康診断を受けたことまで日々の動静として報じられますし、アメリカならバイデン大統領が新型コロナウイルスの検査で陽性と診断されたことも伝えられます。しかし、中国の国家主席が風邪で寝込んだことがニュースになることは、まあ考えられません。そうした情報は徹底的に伏せられるためです。
ただ、情報統制で体調不良が完全に隠せるかというと、微妙です。なぜなら、国営メディアで動静が伝えられなくなり、おのずとウォッチャーたちが「空白」の理由に注目して各種の推測をするためです。
今回は習近平氏をめぐる、ある推測についてです。
20日間も空白
習近平氏は7月29日に北京でイタリアのメローニ首相らと会談したのを最後に、プッツリと動静報道が途絶えました。8月上旬には毎年「北戴河会議」が開かれるので、この時期、習氏はじめ共産党最高指導部の面々の動静は伝えられなくなります。
ちなみに、この「北戴河会議」、実は近年は会議の形式がとられてなく、単に避暑地での夏休みになっている、という見方もあります。それは習氏への権力集中が進み過ぎて、会議を開く意義が薄くなったためとも…
本当のところは分からないのですが、話を習氏の動静空白に戻します。
「北戴河会議」が終わったとみられた8月半ばを過ぎても、習氏は表舞台に戻ってきません。「いくら何でも空白期間が長すぎないか?」というざわつきが台湾はじめ世界各地の中国ウォッチャーたちの間で広がりました。なにしろ、過去には10日間動静が伝えられなかっただけで「クーデター説」が拡散したほどです。
そうこうするうちに、8月19日、習氏は北京でベトナムの最高指導者であるトー・ラム共産党書記長との会談に現れ、空白期間は20日間で終わりました。
えらく長い夏休みだったか…で終わるかと思いきや、そうはなりませんでした。
不自然な報道ぶり
この習氏とラム書記長の会談をめぐって、中国国営メディアの伝え方が、かなり不自然だったのです。当初に公開された習氏の写真や映像は、遠方から撮影されたものばかりでした。つまり、アップで撮影した姿が出なかったのです。
例えば、こちらの動画。首脳会談で習氏が挨拶文を読み上げた様子ですが…3分半ほどの映像中、画面はものすごく長いテーブルの端からのアングルでほぼ固定されたまま。習氏を正面から撮ったカットは一つもありません。このため、習氏がどこに座っているのかすら、よく分からないのです。
さすがに「これはおかしい」と台湾メディアなどはざわつき、一つの推測が広がりました。
「習氏は健康状態に問題があるためにアップでの撮影はNGとなったのではないか?」
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