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さっそくの「武嚇」

「台湾独立勢力の画策に対する力強い懲罰で、外部勢力への厳正な警告だ」

こう宣言して、中国人民解放軍(東部戦区)は中国海警局とともに5月23日から台湾を取り囲むようにして軍事演習を始めました。
日本でも大きく報じられていますが、実際のところ、どれほど緊張が高まる事態なのでしょうか。(写真は東部線区のSNSから)


「聯合利剣-2024A」

今回の演習は「聯合利剣-2024A」という名称です。「聯合利剣」は新しいわけではなく、2022年に米下院のペロシ議長が台湾を訪問したときや、23年4月に蔡英文総統(当時)が訪米した時にも実施しています。
つまり、習近平指導部が台湾をめぐって「看過できない出来事」があったときに対抗措置として行う訓練だといえます。

今回、「看過できない」とみなしたのは、もちろん、頼清徳新総統が20日の就任式で行った演説です。

私は、頼氏が過去にした発言に比べればそう刺激的でもない内容だと考えたのですが、中国はそうは評価しませんでした。
21日に国務院台湾弁公室が出した談話を読むと、とくに問題視したのは
中華民国台湾は主権独立国家」、「中華民国と中華人民共和国は互いに従属しない」、「(台湾は)我が国の名称」といった文言です。

実は中国メディアは頼総統の演説全文は伝えてなく、当局のフィルターを通じて「一つの中国」の原則とは相いれない部分だけが濃縮して人民に伝わっている状態です。

自分のことは棚に上げて8年前と比較する中国

中国としては、8年前に蔡英文氏が就任した際の演説と比較して、「やはり頼清徳は独立派だ」と興奮しているようです。というのも、2016年の就任演説で蔡総統は「一つの中国」の原則を中国と台湾の双方が確認したとされる「92年コンセンサス」に間接的ながらも触れました。
以下は、台湾総統府の和訳からです。

私が述べた既存の政治的基礎は、次の数点の重要な要素が含まれます。第1に、1992年の両岸両会会談の歴史的事実および求同存異の共通の認知は歴史的事実であること。第2に、中華民国の現行憲政体制。第3に、両岸の過去20数年間にわたる話し合いと交流の成果。第4に、台湾の民主主義の原則と普遍的な民意であります。

https://www.roc-taiwan.org/jp_ja/post/31943.html

しかし、頼総統の演説では、「92年コンセンサス」への言及は一言もなし。中国からすれば「大幅な後退」という評価なのでしょう。

ただ、8年前の蔡総統の演説に対しても、中国は「未完成の解答用紙だ」と酷評したのです。つまり、「『一つの中国』を受け入れます」と明言しない限り非難し、圧力を強化するわけです。ならば、92年コンセンサスに触れなくても同じでしょ、となります。

何よりも、中国指導部には、自分たちがこの8年間にどういう振舞いをしたのか、それを台湾の人々がどう受け止めたのか、という視点が完全に抜け落ちています。

とくに香港。

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