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「洗練された牽制」か「嘘を容認」か
5月26日、ソウルで日韓首脳会談が開かれました。
私が注目したのはただ一点、新たな火種となっているLINEヤフーに対する総務省の行政指導をめぐる問題です。
予想通り、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領はこの問題を取り上げましたが、それをどう理解すべきか、考えてみたいと思います。
タイトルに示したように、正反対に近い2つの見方が可能です。(写真は首相官邸HPより)
問題のおさらい
LINEヤフーに対する行政指導、このnoteにも記事を書きましたが、そのあと補足取材をして東洋経済オンラインにも寄稿しました。
もし、「この問題についてまだ詳しく知らない」という読者の方がいれば、まずはこの記事を読んでいただけたら幸いです。
「もう分かっている」という方は、スキップしてもらって大丈夫です。
尹大統領の「味わい深い」言及
さて、今回の日韓首脳会談で尹大統領はLINEヤフー問題を取り上げ、こう述べたと伝えらえれています。
「ネイバーの持ち分株の売却要求ではないと理解している」
「韓国政府は、外交とは別の事案と認識している。両国間の懸案にならないよう管理する必要がある」
一方、岸田首相はこう答えたということです。
「韓国企業を含め、外国企業の日本に対する投資を促進するという日本政府の立場に変わりはない。重大なセキュリティー事故に対してガバナンスの見直しを求めるものだ」
ポイントは尹大統領の切り出し方ですね。
「ネイバーの持ち株を売却しろという趣旨ではないと理解しています」という言葉は、①まかり間違ってもそのような不当な圧力をLINEヤフーやネイバー側にかけませんよね、という洗練された牽制か、あるいは②総務省がそうした立場を表明したので私たちもそれを信じます、という日本への全面的な信頼表明か。
この問題で日本への反発が韓国内で高まっているだけに、尹大統領としては今回の会談で「言うべきことは言った」と示す必要に迫られていました。そして、願わくば多くの国民に①と解釈してもらいたいところ。
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