日朝接触か 「有力な家門」出身者?
先日、日本と北朝鮮がモンゴルで秘密裏に接触したと韓国の有力紙・中央日報が伝えました。日本政府は確認を避け、続報もないので、真相はなんとも言えないのですが…双方の代表団を構成したとされる面々が通常ではないので、そこに絞って深掘りしてみます。
(写真はモンゴルの首都・ウランバートルのチンギス・ハーン広場にある政府宮殿)
偵察総局
外交関係がなく、拉致問題を抱える日本と北朝鮮なだけに、交渉はおのずと水面下のものが多く、確認作業は困難です。今回の話は、中央日報の報道(6月13日付け)が概ね正確、という前提に立っていますが、現時点で確認はできていないことはご了承ください。
中央日報は、▼日朝双方の代表団が5月中旬にウランバートルの近くで秘密裏に会った、▼北朝鮮側は偵察総局の人員や「外貨稼ぎ関係者」ら3人、日本側には「有力な家門出身の政治家がいた」と伝えています。
既にこの時点で、何やら尋常ではありません。双方の外務省による接触ではなかったというのですから。
偵察総局という部署は、軍の傘下にある工作機関です。かつて複数の情報機関・工作機関を統合して発足しました。
2010年の韓国海軍哨戒艦「天安」号撃沈事件や、金正恩(キム・ジョンウン)総書記の異母兄・金正男(キム・ジョンナム)が2017年にクアラルンプールの空港で暗殺された事件に関与したとみられていますが、実態は不明な点が多いす。
そんな工作機関と話をしても埒が明かないのではないか、という気もしますが、そんな機関なだけに金正恩氏にダイレクトで報告できる可能性が高いという側面があります。
2002年に小泉首相が電撃的に訪朝して金正日(キム・ジョンイル)総書記と初めての日朝首脳会談を実現させた秘密交渉で、北朝鮮側を代表していた「ミスターX」も、外交官ではなく、秘密警察にあたる国家安全保衛部の幹部であったとされています。かの国との交渉では、政府機関の役割(一義的には外務省が担当すべき)よりも「最高指導者とダイレクトに話ができるか」のほうが重要なことは証明されています。
ただ、北朝鮮が頑なに拉致を認めていなかった2002年以前とは違い、拉致はすでに公の事実となって久しいので、またここで工作機関が交渉を仕切ろうとすることには違和感があります。
宮塚コリア研究所の新井田実志専門研究員は、「接触相手が偵察総局というのは、実に筋が悪いように思える。首相官邸は北朝鮮と接触できるならルートは問わないというスタンスなのであろう。金与正(キム・ヨジョン)氏にあれだけ言われたあとでも、筋はともかく、北朝鮮とのパイプを維持できていたとすれば、それは表には出しがたい何らかの妥協を官邸がしているのではないかという懸念がある」と分析しています。
「金与正氏にあれだけ言われた」に関しては、以前の記事 ↓ もご参照ください。
どこもかしこも外貨稼ぎ
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