誰へのアピール? ウラン濃縮施設
9月13日、北朝鮮の国営メディアは金正恩(キム・ジョンウン)総書記がウラン濃縮視察を視察したことを伝えました。言うまでもなく、濃縮ウランは核兵器の材料となるものです。彼がこの施設を訪れたと公表されたのは初めてのこと。裏にどういう計算があるのでしょうか。
ズラリと並んだ遠心分離機
公にされた写真には数多の遠心分離機が写っています。遠心分離機はウランを濃縮する装置です。惜しげもなく披露したのは、自分たちの核戦力は充実していると誇示したいのでしょう。
施設内を一通り視察した正恩氏、「見ているだけでも力が湧いてくる」と述べて満足そうであったとのこと。実際にそう述べたのかもしれませんが、「力が湧いてくる」という言い回しは、「核兵器こそ我が国がアメリカとも伍していく力の源泉」という考えを人民に改めて強調したかったようにも思えます。
これまでも、北朝鮮は核兵器が「体制を守る宝剣」といったフレーズを編み出しています。
一方、この施設が北朝鮮国内のどこに位置しているのか、視察がいつ実施されたのかは、明らかではありません。
米大統領選を意識?
何かを初めてする場合、そこには何かしら具体的な計算があるものです。ましてや世界中の原子力研究者らが公開された写真を隅々までチェックして北朝鮮の濃縮ウラン生産能力を分析することは目に見えています。
つまり、自分たちの「宝剣」がどれだけのものなのか、相手方に手の内をさらすリスクがあるわけです。
にもかかわらず、初めて「正恩氏@遠心分離機の密集地」という写真を出すことにしたのは、なぜか。
韓国から聞こえてくるのは、アメリカ大統領選挙を意識した行動だという見方。折しも、写真の公開は、世界が注目したハリス氏vsトランプ氏のテレビ討論が行われた直後のことです。
まるで、討論(ハリス氏の圧勝でしたね)の直後に自分はハリス氏に一票を投じることにしたと表明し、文章を「子供のいない猫好き女性」と締めくくることで共和党側副大統領候補バンス氏を強烈に皮肉った、テイラー・スウィフトさんを真似たかのように…
加えて、正恩氏は「最近のアメリカによる核の脅しは、越えてはならない一線を越えている」と非難しと伝えられています。米韓の合同軍事演習に対する苛立ちを示したのかもしれません。
ただ、大統領選挙が盛り上がるアメリカだけを意識してウラン濃縮施設を披露したのかというと、やや疑問です。米韓の演習に核兵器が持ち込まれたわけではありません。何より、ハリス・トランプの両陣営に遠心分離機を見てもらいたいのなら、それでどういう効果を期待しているのか分かりにくいです。率直にいうと、両陣営とも今は相手方をどう攻めるかで頭がいっぱいで、北朝鮮の核問題が遊説のメインテーマに浮上するとは考えられません。
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