金正恩総書記の「長男」は存在せずか
21世紀も四分の一近くが過ぎようとしている現在でも、地球上には極端な秘密主義の国家はあります。
とりわけ独裁体制における最高権力者の身辺情報は、他国の情報機関の精鋭たちをもってしても正確に把握するのは困難だと、改めて実感する話題があります。
北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記の娘、キム・ジュエ(とされる少女)氏は、父と一緒に公に登場することが増えるにつれて後継者として有力視されるようになってきました。ただ、「いやいや、やっぱり違うだろう」と留保する専門家らもいるのは、金正恩氏にはジュエ氏の兄、つまり長男がいるという前提があるためです。
男尊女卑の風潮が強い北朝鮮のこと、いずれは長男が後継者としてデビューするだろう、と。
ところが、最近、韓国ではこの前提が間違っていたようだという分析が広がっています。実は、金正恩氏の長男は存在していなかった、と…
「長男」の根拠は男の子用おむつの調達?
キム・ジュエ氏に「(とされる少女)」と但し書きをつけたのは、北朝鮮の国営メディアで一度も彼女の名前がつけられたことはない上に、韓国内では「本当はウンジュだ」という異論もあるためです。
そのあたり、以前の記事でお伝えしたので、そちらもご参考になれば。
「ジュエ」という名前を世界に伝えたのはNBAの元スター選手だったデニス・ロッドマン氏だったわけですが、彼は朝鮮語は解さないため、聞き間違えた可能性はあります。
一方で、彼は北朝鮮に滞在して金正恩氏、妻の李雪主(リ・ソルジュ)氏、そしてまだ赤ちゃんだった娘らと一緒に何日間か過ごしました。娘も抱いたそうです。しかし、彼は息子を見たとは一度も言っていないのです。
ん??
そうなると、そもそも「長男がいる」という話はどこから出たのでしょうか。出所は韓国の国家情報院です。かつてのKCIA(中央情報部)。軍事政権下では泣く子も黙る「南山」…
ですが、その国家情報院をもってしても、北朝鮮のロイヤルファミリーの壁は厚いようです。
以前、韓国における核保有論に関して書いた記事でも紹介した世宗研究所の鄭成長(チョン・ソンジャン)韓半島戦略センター長によりますと、どうやら一つの大きな根拠は、金正恩氏に関連する書記室の特殊要員たちが、外国から北朝鮮に男の子用のおむつとオモチャを送ったことが確認されたことだったそうです。
金正恩氏に直結する部門の、特殊要員(どういう人物たちなのかは不明)が海外で男の子用のおむつなどを調達した→金正恩氏の息子のためでしかありえない、となった模様です。
国家情報院の名誉のために付記しますと、彼らは「長男がいる可能性があるとみて継続的に分析している」というのが公式な立場だったのに、メディアが断定調に伝えるようになってしまった、と主張しているとか。
前大統領の自伝に思わぬ手がかり
実際には長男の存在が明確に確認されたわけではなかったものの、儒教の影響が強い北朝鮮のこと、後継者は息子のはずだ、という先入観が広がっていたのかもしれません。
そうした先入観を否定し、そもそも息子は存在していなかったと考えらえれる有力な手がかりが、最近、世に出ました。
それは、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)前大統領の自伝「運命」。
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