地域のつむぎ手の家づくり|開いてつなぐ装置をみんなで。<vol.01/相羽建設:東京都東村山市>
【連載について】“地域のつむぎ手の家づくり”って、なに?
家づくりをおこなう住宅会社には、全国一律で同じ住宅を建てる大規模な会社や、各地方でその土地の気候に合った住宅を建てる小規模な会社など、さまざまな種類のつくり手がいます。その中でも、その地域ならではの特色や、そこで暮らすおもしろい人々のことを知り尽くし、家をつくるだけでなく「人々をつなぎ、暮らしごと地域を豊かにする」取り組みもおこなう住宅会社がたくさん存在します。
この連載では、住宅業界のプロ向けメディアである新建ハウジングだからこそ知る「地域のつむぎ手」を担う住宅会社をピックアップ。地域での暮らしづくりの様子をそっと覗かせてもらい、風景写真とともにお届けします。
今回の<地域のつむぎ手>は・・・
相羽建設(あいばけんせつ)は、建築家の永田昌民さんや伊礼智さん、家具デザイナーの小泉誠さんらといっしょにさまざまなことに挑戦してきた、地域の暮らしを豊かに彩る工務店です。
エコロジーな暮らしを街全体で計画し、価値観をともにする人たちが大きな家族のように集まって暮らす住宅街「ソーラータウン八国山」や、
住まい手の感性や嗜好の変化に合わせて空間をつくり変えられる「木造ドミノ住宅」など、
いつだって“いいな”と思える住まいやまちを独自に導き出して、形にしてきました。
「いまやろうとしているのは、私たち自身がもっと地域に開いて、地元の人や食、手しごとをつなぎ、豊かで魅力的なまちをつくること」
と話すのは、生まれ育った地元・東村山の暮らしを発信し続ける、相羽建設の広報を担当する吉川碧(よしかわ・みどり)さん。
その“渦”を起こそうと、西武新宿線・東村山駅から徒歩10分強の場所に《つむじ》と呼ぶ交流施設を、いまから5年前に開きました。
《つむじ》とは、モデルハウスとコミュニティスペースを兼ねた、「手仕事」と「食」をテーマに地域の人と文化が出会う場所。
地元の農産物や地域の作家さんの手づくり小物などが並ぶ月1回の「つむじ市」や、薬膳茶教室のようなイベントを、毎週1~2回開催しています。
さらに、住宅の一部や庭先、駐車スペースをまちに開く「住み開き(すみびらき)」の提案も始めているそうです。
小規模農家が点在する東村山市には、農産物の無人販売所が約120カ所もあ
るといいます。
それを「地元の大工が木を使ってつくることで、まちなみをよくできれば」という、相羽建設社長の相羽健太郎(あいば・けんたろう)さんのアイデアから、この《つむじ》の前にもある「無人販売所」は生まれました。
これと形が似ている「屋台」という装置もあります(デザイン:家具デザイナーの小泉誠さん)。
立川市にある自家焙煎珈琲豆店《一福》(いちふく)の小さな店舗も、東村山市で大正時代から代々続いてきた農園《菜園場》(さえんば)の無人販売所も、相羽建設が考える“住み開き装置”のひとつ。
吉川さんは「お気に入りの本を並べたり、手づくりのお菓子や雑貨を販売したり、使い方は自由です。この少しおしゃれな装置が街並みの風景をよくしてくれ、道ゆく人とのコミュニケーションのきっかけをつくり、地元で顔の見える関係が育ってくれたらうれしいです」と笑います。
でも、本業の住宅建築とは、ちょっとだけ離れているような。
「工務店の魅力って、関わる人の数と多様性、地域のニーズに合わせて自在につくるものを変えていける柔軟性にあると思うんです。私にとっては“みんなで何かを一緒につくる”のが、工務店。家だけでなく、多様なものやことをつくる未来があっても良いかもしれません」(吉川さん)
※本記事は、新建ハウジング/新建新聞社が発行した「jimosumu/vol.01」(発行:2018年8月30日)掲載記事を再編したものです。
ライター : 金井友子
編集 : 松本めぐみ(新建ハウジング・統括デスク)